【お医者さん監修】「ビールで太る」は誤解ってほんと?糖質が高いのに太りにくい理由をビールメーカーが解説
こんにちは! 「よなよなエール」のメーカー・ヤッホーブルーイングのまりもです。
私は前から不思議に思っていることがありました。
「ビールは太るから最初の1杯だけ」「ビールは糖質が高いから、ダイエットのためにハイボールにしている」そんな話を各所で耳にします。でも、周りを見渡してみると、ビールが大好きな友人や職場のスタッフでも、健康体の人が多い気がする……
「ビールで太る」って実際本当なの?
長年の疑問を解消するべく、著書(『朝のコーヒー、夜のビールがよい仕事をつくる』)で「ビールはダイエット・ドリンク」と語るマブチメディカルクリニック院長の馬渕知子先生に直接お話をうかがいました。
実はビールは太らない? エールビールは食べ過ぎ防止になる? 「インドの青鬼」は胃腸の活性化に効きやすい?……など、興味深い情報満載です。
話を聞いた人:マブチメディカルクリニック院長/学校法人食糧学院学院長 馬渕知子先生
馬渕知子先生
東京医科大学医学部医学科卒業後、同病院に勤務。その後
マブチメディカルクリニック
を開設(院長)。食品が身体に及ぼす影響についても独自に研究。学校法人食糧学院学院長を務める。著書に『朝のコーヒー、夜のビールがよい仕事をつくる』、『「デキる人」ほどなぜ人間ドックに行くのか?』など。
「ビールで太る」は誤解だった!?
まりも:馬渕先生、「ビールを飲んだから太るわけじゃない」って本当ですか?
馬渕先生:本当です! 飲み会の席で「ビールは太るから・痛風になるから飲まない」という方がいますよね。私はビールが大好きなので、その誤解のせいでビールが飲まれないことを以前からとても残念に思っていました。
まりも:そうなんですね! ぜひ詳しく教えてください。
「ビールは太る」が誤解な理由①:糖質は高いがGI値が低い!
まりも:「ビールは糖質が高いから太る」とよく言われますが……
馬渕先生:たしかにビールの糖質は高いです。市販のハイボール缶350mlあたりの糖質は0~1gに対し、ビールは350mlあたり10g以上。でも実は、糖質が高い=太りやすいわけではありません。
まりも:そうなんですか?
馬渕先生:まりもさん、「GI値」ってご存じですか?
まりも:「低GI」と書いてある製品はたまに目にしますが、そういえばどんな意味なのだろう……?
馬渕先生:GI値はGlycemic Index(グライセミック・インデックス)の略。簡単にいうと「食品を摂取した時の血糖値の上がり方の平均値」のことです。
馬渕先生:食品を摂取し血糖値(血液中の糖分)が上がると、膵臓がインスリンという物質を分泌し、糖分は血液中から体内の細胞に送られエネルギーとして利用されます。
このとき、GI値が高い食品を摂取すると一気に血糖値が上昇するのでインスリンが過剰に分泌されてしまい、糖分が運び込まれるだけではなく、「脂肪を作ろう・脂肪の分解を抑制しよう」という働きが強まってしまうのです。
まりも:「脂肪を作ろう・脂肪の分解を抑制しよう」……つまり、太りやすくなると。
馬渕先生:そうです。太りたくない人は、GI値も意識したほうがよいです。
まりも:ビールは糖質が高いので、GI値も高そうですが?
馬渕先生:ビールの糖分は加糖しているわけではなく、製法のなかで生まれてきたものなので血糖値が上がりにくいんです。ビールのGI値はおよそ35。ダイエットに向いているのはGI値60以下の食品といわれています。
まりも:馬渕先生が「ビールはダイエット・ドリンク」と表現していたのはそういうことだったんですね!
GI値が高い食品はどんなものがあるのでしょう?
馬渕先生:お酒の中で一番GI値が高いのはシャンパン! シャンパンは熟成中に量が減っていくので、ドサージュといってシロップを足して加糖しているものが多いためです。
ちなみに、「黒いもの」より「白いもの」の方がGI値が高い傾向にあります。例えば玄米より白米、そばよりうどん、黒糖より上白糖の方が太りやすいです。
「ビールは太る」が誤解な理由②:ビールのカロリーは燃焼されやすい!
まりも:ビールはカロリーが高い印象があります。
馬渕先生:ビールのカロリーの大半はアルコールに由来するもの。アルコール由来のカロリーは体内でエネルギーとして燃焼されるため、蓄積されにくいといわれています。
まりも:エネルギーとして燃焼される?
馬渕先生:まりもさん、ビールを飲むと顔が赤くなったりしませんか?
まりも:はい! 私はすぐ顔が赤くなってしまうので、飲み会の席ではいつもちょっと恥ずかしいのですが……
馬渕先生:お酒を飲むと、身体が熱くなりますよね。これは、アルコールを摂取して血流がよくなり代謝が上がっているから。顔が赤くなるということは、顔の皮膚の近くの血流もよくなっている証拠なんです。
まりも:なるほど! ラーメンを食べても顔が赤くなることはないですもんね。アルコールのカロリーは代謝につかわれているのか~。
馬渕先生:ただし、燃焼されやすいだけで、摂取カロリーがゼロになるわけではありませんよ。たまに「お酒はエンプティカロリーだから太らない」と耳にしますが、それは間違いです。
まりも:当然ながら飲み過ぎたら太るということですね。
「ビールは太る」が誤解な理由③:炭酸×ホップが消化促進!
まりも:痩せるために炭酸を飲んでいる人を見かけますが、ビールの炭酸もダイエット効果があるのでしょうか?
馬渕先生:ビールの炭酸も、炭酸水と同様の効果がありますよ。炭酸は胃に流れ込むと、胃腸の運動を促します。また、二酸化炭素には血流を促進する働きもあるので、消化・吸収効果も高まるんです。
まりも:食べ物の消化吸収を促してくれるんですね!
馬渕先生:さらに、ビールには炭酸よりも優れた点があります。それは、ホップの苦み成分! 苦みを感じると胃腸の消化酵素の分泌が活性化されるんですよ。苦ければ苦いほどその効果が期待できます。
まりも:苦ければ苦いほど! では、私たちの製品のなかでも特に苦い「インドの青鬼」は胃腸の活性化に効きやすい……?
馬渕先生:まさにそうですね!
ちなみに、炭酸には「満腹感を得られるため食べ過ぎ防止になる」という利点がありますが、ビールの場合、炭酸ガス・ホップの苦みが胃腸を活性化させることで食欲が増進されてしまうので、おつまみを食べ過ぎないよう注意が必要です!
「ビールを飲むと痛風になる」も誤解だった!?
まりも:そういえば、先ほど「ビールを飲むと痛風になる」は誤解だとおっしゃっていましたが、こちらも本当ですか?
馬渕先生:本当です。
痛風は、血液中の尿酸濃度が高くなり、それが結晶化することで関節が腫れて痛くなる病気。
ビールを飲むと尿酸の材料となるプリン体を摂取してしまうため、尿酸濃度が上がり痛風になると言われていますが、実はビールに含まれるプリン体はそこまで多くありません。血液中の尿酸値は飲食からの影響を3割程度しか受けないと言うデータもあります。
まりも:ええっ、そうなんですか!
馬渕先生:痛風の原因はビールそのものではなくその「飲み方」。
尿酸は作られた分、尿などから排泄されることで均衡を保っているので、しっかりお水を飲んで尿を出せば排出されていきます。でも、飲み会の席では水を飲む人が少ないですよね。
まりも:たしかに。一杯目を最高の状態で飲むために、あえて喉がカラカラな状態で飲み会に参加することもあります……!
馬渕先生:あーっ、それは絶対NG! 痛風リスクを高める危険行為です! 水分が失われた状態だと血液が凝縮されているので、尿酸は結晶化しやすくなってしまいます。その状態でプリン体を摂取するのは危ない。
まりも:ひえええ! 今後は水分補給を心がけるようにします……
馬渕先生:ビールはお酒の中でも特に利尿作用があり、脱水になりやすい反面、尿も出やすくなるので、水分摂取もしっかりしながら尿酸排泄に上手く活用するのもコツですよ。
【ダイエッター耳より情報】太りにくいビールの飲み方
まりも:「ビール=太る」は誤解であることがよく分かりました。でも、世の中でそういった印象を持たれているのはなぜでしょう?
馬渕先生:理由は大きくふたつあると考えています。ひとつは、ビールを飲むと食欲が増進され、味の濃いハイカロリーなおつまみを選んでしまいがちなこと。
まりも:たしかに居酒屋さんの定番おつまみって、からあげやポテトなど、揚げ物ばっかりですよね。
馬渕先生:大事なのはおつまみ選び。「太りにくい食べもの・食べる順番」をお伝えしますね!
太りにくい食べもの・食べる順番
馬渕先生:飲み会のスタートは、血糖値を上げにくくすることが重要。
ビールはGI値が低いので最初の一杯に最適です。食べ物は、食物繊維が含まれるものや、高たんぱくなものがおすすめ。枝豆やお豆腐はもちろん、お刺身やお肉でもいいですよ。
まりも:居酒屋さんで昔からあるお通しの枝豆や冷ややっこ、「とりあえずビール」は理にかなっていたというわけですね。
でも、最初からお肉を食べていいというのは意外でした。
馬渕先生:アルコールを分解するにはたんぱく質が重要なので、お肉もOK! 特に赤身や鴨肉、ジビエ、馬肉がおすすめです。でも、揚げ物だけは注意してくださいね。
まりも:これが太る原因!
馬渕先生:そうなんです。揚げ物が食べたくなったら、刺激的な味わいのメニューを頼むのがおすすめです。エスニックやアジア料理などスパイシーな味付けは満足感が得られやすいので食べ過ぎを予防でき、代謝も促進されやすいメリットも。
まりも:飲み会といえば、〆のラーメンも魅力的ですが……
馬渕先生:ラーメン、食べたくなりますよね。アルコールを分解するときに糖質が必要になるため、お酒を飲むと自然と体が糖質を欲しがるんです。でも、ラーメンは一番危険! ぐっとこらえて、〆には雑炊やリゾットなどを選ぶようにしてください。
飲みすぎ防止に「エールビール」?
まりも:ビールが太りやすいと言われてしまう理由のふたつめはなんでしょう。
馬渕先生:ビールはアルコール度数が低いので、ついつい飲み過ぎてしまうことです。
まりも:飲み過ぎを防止するコツはあるのでしょうか?
馬渕先生:エールビールを注文するのがおすすめですよ。
まりも:えっ! なぜですか?
馬渕先生:同じビールをおかわりし続けるよりも、エールビールのように味わいの違うビールをじっくり飲み進める方が満足度が高まりやすいんです。
エールビールは温度がぬるくなるにつれて味わいもポジティブに変わっていき、急いで飲み干す必要がないので、飲みすぎ防止にもつながります。
まりも:たしかに思い返すと、居酒屋さんで飲むときよりもクラフトビアバーで飲むときのほうが飲酒量が少ないかも。
クラフトビールに合う、太りにくいおつまみレシピ7選
私たちヤッホーブルーイングが考案したクラフトビールに合うおつまみの中から、馬渕先生に教えてもらった「太りにくいポイント」をおさえたレシピをご紹介します。
太りにくいポイント:揚げ物は控え、食物繊維が含まれる食品、高たんぱくな食品を選ぶ。満足感を得やすいスパイシーな味付けがおすすめ。
韓国のお刺身料理「真鯛ときゅうり・大葉のフェ」
生ハムとアボカドのユッケ
エスニック風 えび串焼き
麻辣塩サバ
豆腐ピザ
豆腐の甘味噌漬け
枝豆アレンジ3選
この記事のまとめ
- ビールは低GIで、代謝アップや消化吸収効果促進の効果もあることから、「ビールを飲む=太る」わけではない
- 太る原因は、ビールは低アルコールで食欲増進効果もあるため、飲みすぎ・食べ過ぎてしまうから
- お酒の席での太りにくい方法は、①最初の一杯はGI値が低い飲み物(例:ビール)を選ぶ ②おつまみは、揚げ物を避け、食物繊維が含まれるものや高たんぱくなもの、スパイシーな味付けのものがおすすめ ③味わいのバリエーションがあるエールビールを飲むことで満足感を高め、飲みすぎを防止する
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