【ホップとは?】ビールメーカーが解説する「ホップの基礎知識」
ホップ(HOP)とは、ビールに香りや苦味をつける植物のこと。
ビールづくりにおいて重要な役割を担う原材料です。クラフトビールの特徴であるバラエティ豊かな香りや味わいは、ホップの組み合わせによってつくりだされます。
この記事では、ホップはどういう植物なのか、ビールづくりにおけるホップの役割、ホップにはどんな種類があるのかを、クラフトビールメーカーが詳しく解説します!
ホップとは?ビールの苦みと香りをつける大事な原料
ホップは、ビールに苦味と香りをつけてくれる植物。
ビールの大事な原材料として使われています。アサ科のつる性の植物で、雌しべは松かさに似た花のような形をしています。
ビールづくりに用いられるのは、雌しべの「毬花(まりはな)」という部分です。ビール特有の「苦味」「香り」を付けるだけでなく、泡持ちをよくしたり、殺菌効果を高めたりという働きもあります。
毬花の中にある「ルプリン」という黄色い球体が、ビールづくりに欠かせない「4つの役割」を果たしています。詳しくご説明しましょう。
苦味と香りだけじゃない!ホップがビールづくりで果たす4つの役割
1.ビールに「苦味」を付ける
ビール特有の「苦味」は、ホップによるもの。
(苦味をつけるのが得意なホップは「ビタリングホップ」と呼ばれています)
ビールの元となる麦汁(ばくじゅう)に、ホップを投入してぐつぐつ煮沸することで、ホップの苦味成分(イソアルファ酸)が麦汁に移るのです。
2.ビールに「香り」を付ける
ホップはビールに苦味を付けるだけでなく「香り」も付けてくれるんです!
ビールに香りをつけるのが得意なホップは「アロマホップ」と呼ばれます。
なお、ビールの香りは、酵母が織り成す「エステル香」・ホップ由来の「ホップ香」・モルト由来の「モルト香」の3つの組み合わせでできています。
「ホップ香」は、ホップの種類によって異なりますが、シトラシー(柑橘のような香り)、フローラル(花のような香り)、スパイシー(香辛料のような香り)、グラッシー(青草のような香り)などと表現されることが多いです。
3.ビールの「泡持ち」を良くする
ビールにとって大切な「泡」。
味わいを落とさないため、炭酸ガスを逃がさないため、苦味成分をやわらげるために重要な役割を果たしています。ホップをたくさん使用したビールほど、ビールの泡持ちが良くなると言われています。
4.ビールの「殺菌効果」を高める
ホップにはビールの腐敗を防ぐ「殺菌効果」を高める力もあります。
殺菌技術が発展するまでは、この効果がとても重要視されていました。
たとえば、
IPA(インディア・ペールエール)というビアスタイル
は、18世紀末にイギリスで生まれました。当時植民地だったインドへの輸送に耐えられるよう、アルコール度数を高め、殺菌効果のあるホップを大量に入れたのが始まりだと言われています。
今や200種以上!ホップの品種
ホップは北半球の涼しい地域で栽培されることが多く、最も多く栽培されているのはドイツ、次いでアメリカです。ホップの品種はゆうに100を超えており、こうしている間にも新たな品種改良がおこなわれています。
本記事では、そのなかでも有名な品種をご紹介します。
苦みをつける「ビタリング(ビター)ホップ」
マグナム(Magnum)
「ビタリングホップ」の代表格。1980年にドイツでリリースされて以降、アロマを邪魔しないクリーンで美しい苦味が評判となり、世界中で広く使われるようになった。その安定感のある苦味から、IPAやアメリカンエールに使われることが多い。また、アロマホップに少し入れると香りにメリハリがつき、バシッと味、ならぬ香りを決めてくれる存在。(画像出典:Yakima Chief Hops)
豊かな香りをつける「アロマホップ」
カスケード(Cascade)
アロマホップの代表。1972年にアメリカでリリースされ、それまでのホップとは一線を画した華やかな香りは「アメリカンホップ=華やかな香り」というイメージを創りあげた。70年代以降のアメリカのクラフトビール創成期に発売されたビールの多くにカスケードが使われている。(画像出典:Yakima Chief Hops)
シトラ(Citra)
世界中のクラフトブルワリーで使われているアロマホップ。グレープフルーツやライムのような柑橘(シトラス)香、パッションフルーツやベリーのような鮮やかなフルーティさが特徴。ドイツやイギリスなど様々なホップの交雑の末、キャッチ―で複雑なアロマが作り出された。(画像出典:Yakima Chief Hops)
モザイク(Mosaic)
2012年にリリースされた比較的新しいホップにもかかわらず、その複雑で奥深い香りと使いやすさから、世界でもっとも使われているホップのひとつ。マンゴーやパパイヤを思わせる、トロピカルフルーツのようなすこし甘味のあるフルーティーさが特徴。アロマホップとしてもビタリングホップとしても幅広く顔を効かせている。(画像出典:Yakima Chief Hops)
シムコー(Simcoe)
2000年にアメリカでリリースされたホップ。長年ビタリングホップとして使用されていたが、ユニークかつフルーティな香りから、現在はアロマホップの主軸として使用されることも多い。グレープフルーツを思わせるフレッシュな柑橘香のほか、土や草のようなアースィーな香りが特徴。アメリカンスタイルのIPAをつくるときに世界中で重宝されている。(画像出典:Yakima Chief Hops)
ホップでクラフトビールの個性が決まる
いろんな香りや苦みの特徴をもった個性豊かなホップ。200種類以上のホップを組み合わせることで、どんどん新しい香りや味わいのビールが生まれています。
使うホップの種類だけでなく、製造工程でどれくらいの量を、どのタイミングで投入するかによって、まったく異なるビールができあがります。ホップはビールの奥深さをつくっていると言っても過言ではない、大切な存在なんです。
「軽井沢産ホップ」すくすく成長中!
昨今では、岩手県の遠野地方をはじめとして、日本各地でもホップの栽培が行われています。私たちヤッホーブルーイングも、地元軽井沢にクラフトビール文化を根付かせたい!という思いから、2016年に軽井沢産ホップ栽培を始めました。品種はアロマホップの代表格「カスケード」です。
毎年8月に収穫して、収穫したばかりの軽井沢産ホップを使用してつくる「軽井沢ビール クラフトザウルス フレッシュホップエール」をリリースしています。
ホップについてもっと詳しく知りたい方へ
よなよなの里(ヤッホーブルーイング)では、ホップにまつわるよみものを更新しています。もっと詳しくホップのことを知りたい方は、併せて読んでみてくださいね。
▼ホップ収穫レポート
【醸造所日誌】第5回:ホップ収穫祭(前編)
【醸造所日誌】第6回:ホップ収穫祭(後編)
▼ホップの香りをさらに引き出す「ドライホップ」について
【醸造所日誌】第12回:ドライホップ
(おわり)