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ビールの原料|4つの原材料の組み合わせで味わいが変わる!クラフトビールメーカーが解説

ビールの原料|4つの原材料の組み合わせで味わいが変わる!クラフトビールメーカーが解説

みなさん、「ビール」はご存じですよね。
では、「ビールが何からできているか」はご存じですか?

ビールの原料について、クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」の醸造責任者が解説します。

解説する人:クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」 ビール醸造部門責任者

クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」 ビール醸造 部門責任者の森田 正文が、醸造所を背景に、ビールが入ったグラスを持って笑っている様子

製造部門責任者・ブルワー(醸造士) 森田 正文
茨城大学大学院農学研究科で二条オオムギ(ビール麦)の研究で修士号取得。ヤッホーブルーイングで製造スタッフとして醸造業務、新製品開発、設備投資などを担当後、製造部門の責任者に就任。

ビールの原料は「麦芽・ホップ・酵母・水」のたった4つ!

ビールづくりに必要な原材料「麦芽(モルト)」「ホップ」「酵母」「水」がそれぞれ入ったグラスが横に並んでいる様子

ビールづくりに必要な原材料は、「麦芽(モルト)」「ホップ」「酵母」「水」のたった4種類。

ビールの原材料1:麦芽(モルト)

たくさんの麦を両手ですくっている様子

「麦芽(ばくが)」とは、その名の通り「発芽した麦」のこと。「モルト」とも呼ばれます。厳密には、発芽した大麦の芽と根っこを取ってから乾燥させ、さらに熱風にあてながら「焙燥(ばいそう)」したものを指します。

大麦には二条大麦と六条大麦がありますが、ビールづくりに用いられるのは二条大麦(別名ビール大麦)という品種です。小麦やライ麦、オーツ麦が使われるビールもあります。

ビール造りで麦芽が果たす役割とは?

それはそうと、なぜ麦をわざわざ発芽させる必要があるのでしょう? 

麦や米などの穀物には、発酵に必要な糖分が十分には含まれていません。麦を発芽させることで種子中の糖化酵素(アミラーゼ)が活性化し、麦芽に含まれるデンプンを糖に変えることができるのです。
その糖分を酵母が食べる(=発酵)ことで、「アルコール」とシュワシュワの「炭酸ガス」を吐き出してくれる……つまり、ビールになるというわけ。麦芽のおかげでおいしいビールができあがるのです。

4種のビールが入ったグラス・麦が入ったグラスが1セットずつ・計4セット8脚並んでいる。左から右の順に、ビールの液色とその原材料である麦芽の色が、濃くなっていく。

焙燥する際、低温でじっくり乾燥させたり、高温で焦がしながら乾燥させたりすることで、多彩な表情の麦芽をつくることができます。

ビールづくりに使用する麦芽は一種類だけではありません。いろんな麦芽を組み合わせることによって、ビールの色(淡色ビールや濃色ビールなど)や味わい、コクを創り上げていくのです。

麦芽のつくり方や麦芽の種類について更に詳しく知りたい方は、こちらの記事で。
麦芽とは?ビールメーカーが解説する「麦芽(モルト、 malt)の基礎知識」

ビールの原料2:ホップ

生えているホップの雌しべ「毬花(まりはな)」を手で触っている様子

よくCMやポスターで「○○ホップ使用!」という宣伝文句を見かけますが、実際に「ホップ」の正体を知っている人は意外と少ないのでは?

ホップは、ビールに苦味と香りをつけてくれる植物。つる性の植物で、雌しべは松ぼっくりに似た花のような形をしています。ビールづくりに用いられるのは、雌しべの「毬花(まりはな)」という部分です。

ビール造りでホップが果たす4つの役割とは?

①ビールに「苦味」を付ける
ビールの元となる麦汁(ばくじゅう)に、ホップを投入してぐつぐつ煮沸することで、ホップの苦味成分(イソアルファ酸)が麦汁に移り苦くなります。

②ビールに「香り」を付ける
ホップの種類によって異なりますが、シトラシー(柑橘のような香り)、フローラル(花のような香り)、スパイシー(香辛料のような香り)、グラッシー(青草のような香り)などと表現されることが多いです。

③ビールの「泡持ち」を良くする
ホップをたくさん使用したビールほど、ビールの泡持ちが良くなると言われています。

④ビールの「殺菌効果」を高める
ホップにはビールの腐敗を防ぐ「殺菌効果」を高める力もあります。

ホップの毬花がたくさん並んでいる様子

ホップの品質改良は世界中でおこなわれており、その数なんと100以上! 華やかな香りのもの、苦みが強いものなど、個性的な品種がどんどん登場しています。ホップは北半球の涼しい地域で栽培されることが多く、最も多く栽培されているのはドイツ、次いでアメリカです。

左が手のひらの上に乗ったリーフ上のホップ、右が手のひらの上に乗ったペレットホップ

形状は、ホップを葉のまま乾燥させたリーフ状のものや、粉状に砕いたホップを圧縮した「ペレットホップ」などがあります。

ホップの役割や種類など、更に詳しく知りたい方はこちらの記事で。
【ホップとは?】ビールメーカーが解説する「ホップの基礎知識」

ビールの原料3:酵母

カップに入った酵母を手で持っている様子

「酵母」は、発酵をおこなう微生物。ビールの素である「麦汁」を「ビール」にするという、超重要任務を担っている生物なのです。

ビール造りでビール酵母が果たす2つの役割とは?

①麦汁に含まれる糖分を、「アルコール」と「炭酸ガス」に分解する
②発酵の副産物として「エステル」という香り成分を生み出す

豆知識:「ビール」と「クラフトビール」の違いは酵母にあり!?

様々なグラスに入ったビールの画像やイラストを並べてビアスタイルを表現している様子

実は150種類以上ある「ビアスタイル(ビールの種類)」ですが、大きく「ラガー」と「エール」の2つに分類されます。日本で一般的なビールは「ラガービール」で、スッキリ、ゴクゴク飲むビール。一方の「エールビール」は、色や香り、味わいをゆったりと楽しみながら飲むビールです。

世間では、大手メーカーがつくる一般的なビール(ラガー)を「ビール」、それ以外のビール(エール)を「クラフトビール」と呼ぶことが多いですね。
※私たちは、クラフトビールを「小規模な醸造所がつくる、多様で個性的なビール」と定義しています

ビールジョッキに注がれたビール

この2つを分類しているのは、「酵母の種類」。原材料や製造工程も基本的には同じですが、エールビールは「エール酵母(上面発酵酵母)」、ラガービールは「ラガー酵母(下面発酵酵母)」を使うという大きな違いがあります。

つまり、かなり平たく言ってしまうと、ビールとクラフトビールの違いは「酵母」の違いとも言えます。

ビアスタイル(ビールの種類)によって酵母を使い分けることも。使用する酵母の種類によって、ビールの味わいは全く異なるのです。

酵母の働きや種類について、更に詳しく知りたい方はこちらの記事で。
ビールづくりでよく聞く「酵母」って何?

ビールの原材料4:水

水を写真で表現した様子

ビールの約90%を占めているのが「水」です。一般的に、ラガービールには「軟水」(ミネラル量が少ない水)、エールビールには「硬水」(ミネラル量が多い水)が向いていると言われています。

エールビール発祥の地イギリスのバートン・オン・トレントの水は「超硬水」と呼ばれ、ミネラル分を豊富に含んでいます。また、日本でラガービールが主流となったのは、日本の水が軟水であることも関係しているとか。このように、水なら何でも同じ……というわけではなく、その土地の水もビールの味わいづくりに影響しています。

個性的なクラフトビールをつくる「副原料」って?

左からかつお節・ごま・黒糖・ゆず・塩。それぞれの原材料の後ろには、「好みなんて聞いてないぜSORRY」のビールの缶が置かれている
ビールに使われる様々な副原料の例。左からかつお節・ごま・黒糖・ゆず・塩


ビールの基本的な原材料は4種類ですが、「副原料」をつかった革新的でユニークなクラフトビールもたくさん世に出ています。

日本ではビールづくりに使っていい副原料が法律で定められています。例えば私たちヤッホーブルーイングの国産クラフトビール「前略うまみIPA(略称。上記写真左)」は、「かつお節」を副原料につかっています。かつお節は法律でも使用が認められているので、ビールと名乗れます。そのほか、フルーツ(フルーツビール)やハーブ、香辛料やコーヒーも、法律で認められた副原料です。

※法律で認められていない原料を使うことはNGではありません。使うと「ビール」という表示ではなくなるだけです

コーヒー豆が手のひらの上に乗ている様子

豆知識:原料が関係してる!ビールと発泡酒の違い

ここで豆知識! みなさん、「ビール」と「発泡酒」の違いはご存じですか?

「発泡酒」と聞くと「ああ、安いビールね」なんて思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそんなこともないのです。

日本の酒税法において、ビールと発泡酒の違いは「麦芽使用比率」と「副原料の内容と使用比率」で決まります。

麦芽使用比率とは、水やホップ、酵母を除いた原材料の中で、麦芽がどの程度の割合を占めているかを表した数値です。麦芽比率が「50%以上」のものを「ビール」、麦芽比率が「50%未満」のものを「発泡酒」と表記する決まりがあります。

そしてさらに、ビールづくりに使っていい副原料も法律で定められています。さらに、その副原料の使用比率は「5%未満」でないと「ビール」と名乗ることができません。

「水曜日のネコ」のビールの缶と、その原材料であるオレンジピール・コリアンダーシードが並んでいる様子

ちょっとややこしいですよね。
例えば私たちがつくっている「水曜日のネコ」というクラフトビールは、法律上は「発泡酒」。発泡酒ですが、麦芽の使用比率は50%以上で、この点は普通のクラフトビールと変わりません。また、副原料は法律で定められた「オレンジピール」と「コリアンダーシード(パクチーの種)」をつかっています。でも表示が「発泡酒」なのは、これらの副原料を「5%以上」つかっているから!

つまり国内醸造のものに関しては、ひとくちに「発泡酒」といっても、「ビール」と同じ製法・原料でつくっているものもあるということです。(むしろちょっとリッチにつくっていることも!)

ビールと発泡酒の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事で。
ビールと発泡酒の違いってなに?クラフトビールメーカーが解説します

ビールの味をつくっているのは、「原材料の組み合わせ」

濃淡の違う色の麦3種とホップ、ビールがそれぞれグラスに注がれていて、その周りに原材料と「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」が散らばっておかれている様子

ビールの色や香り、味わいを決めるのは原材料。とはいえ、麦芽もホップも酵母も数多くの種類が存在するため、その組み合わせ次第で、できあがるビールの個性は大きく変化します。原材料を使うタイミングや温度、量を少し変えるだけでも異なる香味に仕上がります。

女性がグラスに注がれたビールの香りを嗅いでいる様子

・エステル香:エール酵母がつくる果物のような甘い香り
・ホップ香:ホップ由来の香り。フルーティ、フローラル、スパイシーな香りなど
・モルト香:麦芽由来の香り

これら3つが合わさることで複雑なアロマがうみだされます。それぞれの香りをうまく引き出しつつ、いかにしてバランスよくまとめるかが醸造家の腕の見せどころ。

おいしいビールは、原材料の特徴を知り、それを適切に組み合わせ、酵母が快適にビールをつくれる環境を整えたときに初めてできるのです。

【まとめ】クラフトビールの原料

こちらの記事では、クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」の醸造責任者が、ビールの原料について解説しました。

・ビールの原料は「麦芽・ホップ・酵母・水」のたった4つ!
・4つの原料にはそれぞれ多様な種類があり、その組み合わせによってビールの味わいが大きく変わる!
・4つの原料のほか、個性的な「副原料」をつかったユニークなクラフトビールもたくさんある!
・原料の使用比率や内容によって、「発泡酒」と定義されるビールもある!

クラフトビールの原材料について、醸造家(ブルワー)の私「もーりー」がこちらの動画でも詳しく解説しています。

原料に詳しくなったみなさんは、きっとビールのつくり方にも興味が湧いたはず! こちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧になってみてくださいね。
ビールのつくり方を分かりやすく解説!原材料から工程、豆知識まで!

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