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麦芽とは?ビールメーカーが解説する「麦芽(モルト、 malt)の基礎知識」

麦芽とは?ビールメーカーが解説する「麦芽(モルト、 malt)の基礎知識」

麦芽(モルト、malt)は、ビールづくりには欠かせない原材料。
この記事では、ビールづくりにおける麦芽の役割は何か、麦芽はどのようにつくるのか、麦芽にはどんな種類があるのかを、クラフトビールメーカーが詳しく解説します!

麦芽とは

手にいっぱいの麦芽を持つ

麦芽(モルト、malt)は、その名の通り「発芽した麦」です。

厳密には、発芽した大麦の「芽」と「根っこ」を取ってから乾燥させ、さらに熱風にあてながら「焙燥(ばいそう)」したものを指します。大麦には二条大麦と六条大麦がありますが、ビールづくりに用いられるのは二条大麦という品種です。

ではなぜ、二条大麦をわざわざ発芽させる必要があるのでしょう?

なぜ大麦を発芽させるの?

それは、発芽させることで、酵母のエサになる「糖」が生まれるからです。

ビールに「アルコール」とシュワシュワの「炭酸ガス」を付けてくれるのは、酵母。
酵母は「糖」を食べることで、代わりに「アルコール」と「炭酸ガス」を吐き出してくれます。つまり、ビールが発酵するためには「糖」が欠かせないのです。

でも、二条大麦は穀類なので、主成分はデンプン。「糖」になるものは持っていません。
なぜ発芽させると「糖」が生まれるのでしょうか?

いろんな種類の麦芽とホップ

ここで思い出してほしいのが白米です。

白米も主成分はデンプン。もちろん糖は含まれていません。……でも白米って、噛めば噛むほど甘くなりませんか? 白米が噛めば噛むほど甘くなるのは、わたしたちの唾液に含まれているアミラーゼが働いて、デンプンを「糖」に分解しているからです。

実は、大麦を発芽させると、大麦が持っているアミラーゼが活性化するようになります。
この状態でお湯で煮込むと、アミラーゼがデンプンを糖に分解してくれる、というわけですね。

二条大麦ズームアップ

酵母が麦芽由来の「糖」を食べながら活動しなければ、ビールをつくることはできません。
大麦を発芽させるのは、ビールづくりに必要な「糖」をつくるためなのです。

ビールの起源は紀元前4000年以上前。 放置してあった麦のおかゆに酵母が入り込み、自然に発酵したのが起源だと言われています。麦のおかゆの糖分を、酵母がこっそり食べたのが、ビールの始まりだったんですね……。

麦芽の作り方

では、実際に麦芽がつくられている様子を見ていきましょう。

まずは「浸麦(しんばく)」
大麦の種を水に浸します。こうすることで、寝ていた大麦が起きて、発芽を始めます。

発芽を促進している麦芽

その後、一定温度の湿った風を送りながら混ぜ、発芽を促進します。

緑麦芽

もやしみたい!
発芽したての大麦は「緑麦芽」と呼びます。

焙そうされている麦芽

いよいよ「焙燥(ばいそう)」。
80℃程度の熱風を送り込み、発芽を止めて乾燥させます。このとき、焙燥の温度や時間を調整することで、さまざまなキャラクターの麦芽を生み出すことができます。

麦芽、完成!

焙燥が終わったら、渋味や雑味の原因になる「根っこ」を取って、完成!
焙燥工程でしっかり乾燥させると雑菌が繁殖しなくなるので、長期保管も可能になります。

麦芽にはどんな種類があるの?

いろんな種類の麦芽たち

麦芽の製造工程において、焙燥の温度や時間を調整すると、さまざまなキャラクターの麦芽を生み出すことができます。

ビールづくりに使用する麦芽は、1種類だけではありません。いろんな麦芽を組み合わせることによって、ビールの色や味わい、コクを創り上げていくのです。たとえば、クラフトビールの王道をゆく 「よなよなエール」 は、3種類の麦芽を使用しています。

麦芽は、焙燥温度の違いによって、おおきく2つに分類できます。

ベースモルト

ベースモルト

ひとつめが、低温(80℃)で時間をかけながらじっくりと焙燥してつくる「ベースモルト」

その名の通りビールの基本となる麦芽で、アルコールの素になります。通常、ビールに使う麦芽の80~90%はベースモルトで占められています。

低温で時間をかけながらじっくりと焙燥しているので、淡色をしています。ビールに色を付けるのはあまり得意ではありません。ベースモルトとなるのは、大麦の他にも、小麦やライ麦などがあります。

スペシャルモルト

スペシャルモルト

ふたつめは、高温(100℃~)で焙燥してつくる「スペシャルモルト」

麦芽を高温で焙燥させることで糖がカラメル化しており、麦芽に色と風味を加えます。焙燥度合によって、色とカラメル感はさまざま。ビールの色合いを変化させたり、ビールにコクや甘味・フレーバーをつけてくれます。

「カラメルモルト」や「チョコレートモルト」「ブラックモルト」など、ネーミングから麦芽の色味を想像できるものも。全体の10%~20%ほどしか入れなくても、しっかりと仕事してくれるんですよ。

ビールにおける麦芽比率って?

よなよなエールをノニックグラスに注ぐ様子

2018年4月1日、日本における「ビール」と「発泡酒」の定義が変更になりました。
海外で売っている「ビール」が、日本においては「発泡酒」扱いになることもしばしばあります。各国によって、ビールの定義は違うものなんですよ。

日本の酒税法における「ビール」の定義は、以下の通りです。

「ビール」の定義
・麦芽比率50%以上であること。
・副原料(※使用してもよいもの)の重量の合計が、使用麦芽の重量の5%の範囲内であること。


麦芽比率は、「ビール」か「発泡酒」かを決める、非常に重要な役割を担っています。
このことからも「ビール造りには麦芽が欠かせない」ということをお分かりいただけるでしょうか?

おつまみにもできる!すごいぞ麦芽

ビールの原料である麦芽を食べる様子

ビールづくりに欠かせない麦芽は、ちょっとした「おつまみ」としても楽しめます。
麦芽ごとに香ばしさや甘味がまったく異なっているので、もし出会ったら、ポリポリ食べてみてくださいね。

なお、ヤッホーブルーイングが夏季限定でおこなっている 「大人の醸造所見学ツアー」 では、実際に数種類の麦芽を「見て」「割って」「食べる」ことができます。

麦芽のことをもっと知りたい方は、ぜひお越しください!

(おわり)

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