ビールと発泡酒の違いってなに?クラフトビールメーカーが解説します
(この記事は2021年1月20日に更新されました)
「ビールと発泡酒って、何が違うの?」
お客様からよくこんな質問をいただきます。
よなよなの里ではクラフト”ビール”を販売していますが、ものによっては缶に「発泡酒」と表記されているものも。
……?? 難しいですよね。
この記事では「ビールと発泡酒の違い」について、よなよなスタッフが、可能な限り分かりやすく解説します。
ビールと発泡酒の定義は?
ビールと発泡酒の違い、その決め手になるものは大きく2つあります。
「麦芽使用比率」と「副原料の内容と使用比率」です。それぞれの意味について、早速解説していきます。
「麦芽使用比率」について
「麦芽使用比率」とは、水やホップ、酵母を除いた原材料の中で、麦芽がどの程度の割合を占めているか、を表した数値です。
いくつか例を出して説明しますね。
原材料内訳(水・ホップ・酵母除く) | 麦芽使用比率は? |
麦芽のみ | 麦芽使用比率100% |
麦芽80%・その他副原料20% | 麦芽使用比率80% |
麦芽50%・その他副原料50% | 麦芽使用比率50% |
麦芽40%・その他副原料60% | 麦芽使用比率40% |
この麦芽使用比率が「50%以上」のものを「ビール」、麦芽使用比率が「50%未満」のものを「発泡酒」と表記する決まりが日本にはあります。
参考:国税庁ホームページ「お酒に関する情報-ビール・発泡酒に関するもの」
表記に関しても表にすると以下のようになります。
原材料内訳(水・ホップ・酵母除く) | 麦芽使用比率は? | 表記は? |
麦芽のみ | 麦芽使用比率100% | ビール |
麦芽80%・その他副原料20% | 麦芽使用比率80% | ビール |
麦芽50%・その他副原料50% | 麦芽使用比率50% | ビール |
麦芽40%・その他副原料60% | 麦芽使用比率40% | 発泡酒 |
まずはこの「麦芽使用比率」が、ビールとして表記されるか、発泡酒として表記されるかの大きなポイントになってきます。
ポイント①
日本では、ビールになるか発泡酒になるかは「麦芽使用比率」がポイントになる!
「副原料の内容と使用比率」について
また、日本では「ビール」づくりに使っていい副原料が法律で定められています。さらに、その副原料の使用比率は「5%未満」でないと「ビール」と名乗ることが出来ません。
「ビール」づくりに使用出来る原材料の例
①麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉、糖類または一定の苦味料もしくは着色料
②果実(果実を乾燥させたもの・煮つめたもの・濃縮果汁なども含む)
③コリアンダー または その種
④ビールに香りや味を付けるために使用するもの
・香辛料(こしょう、シナモン、クローブ、山椒など)
・ハーブ(カモミール、セージ、バジル、レモングラスなど)
・野菜(かんしょ・かぼちゃなど)
・そば、ごま
・蜂蜜その他の含糖質物、食塩、みそ
・花
・茶
・コーヒー、ココア もしくはこれらの調製品
・かき、こんぶ、わかめ、かつお節
詳しくはこちらをご参照下さい。
平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A
※これら以外の副原料を使用する場合は「発泡酒」という表記にする必要があります。
ポイント②
日本では、「ビール」づくりに使用できる副原料が決まっている!
それ以外の副原料を使うと「発泡酒」という表記になる。
副原料の使用は麦芽の重量比5%まで!
また、これらの副原料を使用して「ビール」をつくるためは、副原料の使用量を、麦芽の重量の5%にしないといけない、というルールもあります。
これも表にして比較してみます。
麦芽の他に「りんご」を使用した、という想定で表にすると…
使った原材料 | 副原料の使用比率(麦芽重量比) | 表記は? |
麦芽100kg+りんご5kg | 5% | ビール |
麦芽100kg+りんご10kg | 10% | 発泡酒 |
麦芽100kg+りんご50kg | 50% | 発泡酒 |
このようになります。
副原料を使ってフルーツやスパイスの香りや風味をビールに加える手法は、世界中のブルワリー(ビール醸造所)で行われている一般的な手法ですが、その比率によっては日本だと「発泡酒」として販売されることがある、ということなのです(ややこしいですね……)。
ポイント③
日本の法律では、副原料の使用比率によっては「発泡酒」と表記しなければいけない!
ビールと発泡酒の定義についておさらい
以上がビールと発泡酒の表示の定義です。まとめるとこんな感じ。
ポイント | 表示 |
麦芽使用比率 | 50%以上なら「ビール」 50%未満なら「発泡酒」 |
使用する副原料 | 日本の法律上認められているものであれば「ビール」 そうでないものを使うと「発泡酒」 |
副原料の使用比率 | 5%以内なら「ビール」 それ以上なら「発泡酒」 |
缶や瓶のラベルに「ビール」か「発泡酒」、どちらで表示されるかは、以上3つのポイントが関係していたんです!お分かりいただけたでしょうか。
発泡酒なのに値段が高いものがあるのはなぜ?
さて「ビール」と「発泡酒」の表記の違いについてお分かりいただけたと思いますので、最後にビールと発泡酒の「値段」について、少し解説致します。
お客様から寄せられる質問の中には「このビール、発泡酒なのに高い…?」というものも多いのですが、それには「酒税」が影響しているんです。
酒税とは、お酒のメーカーがお酒を作る際に国に納める税金のこと。これが高ければ高いほど、商品の値段も上がってくる傾向があるわけですが……
その酒税の金額が何によって決まるか……それは「ビール」なのか「発泡酒」なのか、で決まるわけではないのです。ビール類の酒税は「麦芽使用比率」をもとに定められています。
簡単にいうと「麦芽を沢山使っていればいるほど、酒税は高い」のです。こちらも表にして見比べてみましょう。
麦芽使用比率 | 酒税 |
麦芽使用比率100%(ビール) | 70円 |
麦芽使用比率50%以上(発泡酒) | 70円 |
麦芽使用比率25%以上50%未満(発泡酒) | 58円 |
麦芽使用比率25%未満(発泡酒) | 47円 |
※その他の発泡性種類(いわゆる第3のビール) | 38円 |
350ml缶1缶辺りの酒税で比較。参考: 酒税率一覧表-国税局 (一部データは割愛しています)
これが発泡酒の中にも高いものと安いものがある理由です。
発泡酒の中でも、店頭価格を安くするために、麦芽使用比率を低くして税金を抑えたものがあるため、「発泡酒=安い」というイメージがあるのだと思います。
よなよなの里のビールや、海外産のビールの中にも「発泡酒」という表記で販売されているビールはありますが、日本の法律の表記上の理由でそうなっているんだなあ……と思っていただけますと幸いです。
「ビール」と「発泡酒」正しく理解してよりよいビールライフを!
さて、今回の記事では「ビール」と「発泡酒」の違いについて解説しました。
この記事を読んで下さった方が、それぞれの違いを正しく理解して、より楽しいビールライフを送ってくれましたら幸いです。
それではまた!
(おわり)