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ビールの味のつくり方とは?苦味の正体から味わいについて解説

ビールの味のつくり方とは?苦味の正体から味わいについて解説

いきなりですが、みなさんが普段飲んでいるビールの味はどんな味でしょうか?
「苦味」を感じますか? それとも「旨味」、または「酸味」を感じるでしょうか。
実は、ビールといっても色々な種類があり、その種類によって味に違いがあるんです。

「よなよなエール」のメーカーの醸造責任者「もーりー」が解説します。

解説する人:クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」 ビール醸造部門責任者

ヤッホーブルーイングのブルワーもーりー

製造部門責任者・ブルワー(醸造士) 森田 正文:もーりー
日本クラフトビール業界団体連絡協議会事務局長
国税庁ビール発泡酒醸造技術研修 講師(令和5年)

茨城大学大学院農学研究科で二条オオムギ(ビール麦)の研究で修士号取得。ヤッホーブルーイングで製造スタッフとして醸造業務、新製品開発、設備投資などを担当後、製造部門の責任者に就任。
世界最大のビール審査会ワールドビアカップ(WBC)やヨーロピアンビアスター(EBS)全国地ビール品質審査会など数々の審査会で審査員を務める。審査員歴は13年以上

ビールの味の正体を徹底解説!

ビールの原材料は、水、モルト(麦芽)、ホップ、酵母など。主に4つの原材料からビールがつくられています。

ビールの原材料4つ
ビールの主な原材料(左から水、モルト、ホップ)


一般的にビールは全体の成分の約9割を水が占めていますが、モルトやホップの種類によって味は大きく変わります。ビール特有のあの味は、原材料のモルトやホップなどから移った成分や、酵母によって発酵し生成された成分によるものなんです。

ビールの原材料について詳しくはこちら
ビールの原料|4つの原材料の組み合わせで味わいが変わる!クラフトビールメーカーが解説
麦芽とは?ビールメーカーが解説する「麦芽(モルト、 malt)の基礎知識」

ビールのコク・キレの正体はモルト

ビールの味わいについて「コク」や「キレ」という表現を耳にしませんか? 実はこのコクやキレにはビールの中のいろいろな成分が関わっています。

ビールの原材料モルト
ビールの原材料のひとつのモルト(麦芽)


「キレ」とは、簡単に言うと、“後味が早く消える”ということ。
ビールの製造工程「発酵」の過程で十分に発酵させると、モルトに含まれるエキス分が少なくなるので、炭酸ガス(二酸化炭素)やアルコールが多くなります。その分、刺激が強くなりキレを感じやすいビールになります。

色々な色のビール


つぎに「コク」。コクとは、「味の濃さ」「深さ」「豊かさ」のこと。コクは、モルトに含まれるエキス(糖分・アミノ酸)やホップ、アルコールの量などできまります。
ビールの製造工程の「仕込み」の過程で、モルトに含まれるデンプンを糖分に変え、その糖分を酵母の作用で発酵させることで、アルコールと炭酸ガスをつくります。この過程で全てがアルコールに変わるわけではなく、一部は糖分などのまま残り、それがコクとして感じられます
そのため、発酵をどこまで進めるかによってもコクの程度が変わってきます。

ビールの苦みの正体はホップ

みなさんはビールを初めて飲んだ時の事を覚えていますか?
おそらく、多くの人が「苦い」と感じたのではないでしょうか。

ビールの独特な苦味は、ホップからくるもの。ホップとは、アサ科カラハナソウというツル性の多年生植物で、雌しべは松かさに似た花のような形をしています。

ビールの原材料ホップ
ビールの原材料のひとつのホップ


ビールづくりに用いられるのは、雌しべの「毬花(まりはな)」という部分。このホップの毬花を縦に裂くと中に黄色い粒が入っています。この黄色い粒こそまさにビールの苦味と香りの元である“ルプリン”なんです。

ホップの毬花のなかにあるルプリンの様子
ホップの雌しべ「毬花」。真ん中の黄色い部分が“ルプリン”


このルプリンに含まれる精油や樹脂成分は、ビール特有の「苦味」「香り」を付けるだけでなく、泡持ちをよくしたり、殺菌効果を高めたりという働きもあります

ホップについて詳しくはこちら
【ホップとは?】ビールメーカーが解説する「ホップの基礎知識」 | よなよなエール公式ウェブサイト「よなよなの里」

ビールは酵母の種類で味が変わる

コクとキレの説明で“発酵”というワードが出てきましたが、発酵に重要なのが「ビール酵母」です。酵母は微生物の一種。ビールの素である「麦汁」を「ビール」にするという、超重要任務を担っている生物です。

ビールの原材料酵母
ビールの原材料のひとつの酵母

酵母の役割は大きく分けて2つ。

(1)麦汁に含まれる糖分を、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解する
(2)発酵の副産物として「エステル」という香り成分を生み出す

酵母の違いによる発酵

原材料は同じでもビール酵母が違えば、味が変わります。

ビール酵母は、大きく3つに分類できます。ラガービールで使用される「ラガー酵母」、エールビールで使用される「エール酵母」、ランビック・ビールで使用される「野生酵母」の3種類です。

エール酵母を使い発酵をさせる上面発酵は、フルーティで香り豊かな味わいが特徴のビールに。ラガー酵母を使い発酵させる下面発酵は、スッキリゴクゴクと飲める味わいが特徴のビールになります。

エールビールとラガービールの違い

酵母/発酵方法について詳しくはこちら
ビールづくりでよく聞く「酵母」って何? | よなよなエール公式ウェブサイト「よなよなの里」
クラフトビールの種類・一覧表!初心者におすすめな人気ビアスタイルを解説

発酵方法①上面発酵(エール酵母)

  • 酵母:エール酵母
  • つくられるビール:エールビール
  • 発酵温度:16~24℃
  • 発酵期間:短い(主に3~6日)
  • 特徴:フルーティーな香り、エステル香が華やかで奥深い味わい。
  • エールビール例:よなよなエール

ヤッホーブルーイングのエールビールよなよなエール
クラフトビールの王道の味わいを追求した、アメリカンペールエール。アロマホップ「カスケード」の柑橘類を思わせるフレッシュな香りと、やさしいモルトの甘みが特徴。
画像引用元: よなよなエール公式サイト

発酵方法②下面発酵(ラガー酵母)

  • 酵母:ラガー酵母
  • つくられるビール:ラガービール
  • 発酵温度:4~10℃
  • 発酵期間:長い(主に6~10日)
  • 特徴:きりっとしたシャープな飲み口。スッキリとした味わい。
  • ラガービール例:バドワイザー

ラガービールの代表例バドワイザー
苦味も甘みも控えめな、バランスのよいライトな味わい。すっきりと飲みやすく、のどごしが非常によいラガービール。
画像引用元: バドワイザー

発酵方法③:自然発酵(野生酵母)

  • 酵母:空気中に浮遊している野生酵母
  • つくられるビール:ランビック・ビール
  • 発酵温度:醸造所によってさまざま
  • 発酵期間:主に2~3年
  • 特徴:綺麗な黄金色。強い酸味、独特の香り
  • ランビック・ビール例:ブーン・グース

ランビック・ビールの代表例ブーン・グース
甘みは程よく苦味をほぼ感じない、酸味がメインの味わい。ハーブやシトラスのようなフルーティーな香りを感じる事ができる爽やかなランビック。
画像引用元: Oude Geuze Boon

ビールをもっと楽しもう!おいしく飲める味わい方

ビールの味の由来は一体なんなのかが分かったら、もう、飲むだけ!……なんですが、ビールをもっと美味しく飲める味わい方があるんです。今回はもっと楽しむために3つの方法をご紹介します。

方法①ビールと料理のペアリング

「ペアリング」とは、ビールと料理の相性のこと。ビールにはそれぞれの「ビアスタイル(ビールの種類)」ごとに合う料理があります。

よなよなエールのペアリング料理

例えば、ビールと食事を同じ「香り」と「味」で合わせると、ビールと食事が持っている要素がお互いに似ていた時、お互いの特徴が調和してより「香り」や「味」が強く感じられます。
ペアリング方法は、まだまだたくさんあるのでぜひお試しあれ!

ペアリングについて詳しくはこちら
ビールに合う料理って?「ペアリング」のコツ、ブルワー(ビール醸造家)が伝授します!
【実食実食実食】無印良品のカレー41種類の中から最強のおつまみカレーをさがせ!
最強の「おつまみポテチ」をビールメーカーが独断と偏見でセレクトしてみた!

方法②ビールのグラス

ビールと料理の相性も大事ですが、実はグラスも大切。
グラスは泡だけでなく、形状によって香りの広がり方や、グラスの重さによって一度に口に流れ込む液量に大きく影響します
グラスもおいしくビールを飲む上では欠かせないアイテムなんです!

チューリップグラス
チューリップグラス


飲み口が広いグラス(ヴァイツェングラス等)は炭酸ガスや香りが広がりやすく、飲み口のカーブが丸いグラス(チューリップグラス等)は、炭酸ガスや香りをビール内にとどめる事ができます。
さらに、ビアスタイル(ビールの種類)に適したグラスを選ぶことで、味や香りを最大限引き立たせることができます。

ノニックグラス
ノニックグラス


初めて買う方におすすめなのは、この写真のグラスのように膨らみのあるノニックグラス
写真のようにグラスの上部にふくらみがあるのが特徴で、持ちやすく洗いやすいため気軽に使えますよ。

ビールグラスの選び方について、詳しくはこちら
どれ選ぶ?よりおいしく飲むための「ビールグラスの選び方」
【検証】クラフトビールに合うグラスって?「シュピゲラウ」のグラスエデュケーターに話を聞いてみた!

方法③おいしいビールの注ぎ方

よなよなエールを注いでいる様子

ビールをより美味しく楽しむには、ペアリングやグラスだけではありません! 実はビールの注ぎ方でも味わいが変わるのを知っていましたか?

ビールはグラスに注ぐことでその色や香りを存分に楽しめますが、注ぎ方によって味わいに変化をつけることもできるんです。シンプルなようで意外と奥が深い「ビールの注ぎ方」。

知っておくといつもの家飲みがもっと楽しく・おいしくなりますよ(もちろん、飲み会でも実践できます)。動画で30秒で解説していますので、是非試してみてくださいね。

注ぎ方について詳しくはこちら
ビールのおいしい注ぎ方|注ぎ方で味が変わる?飲み会や自宅で実践! | よなよなエール公式ウェブサイト「よなよなの里」
 

【まとめ】ビールの味はどのように決まる?

・ビール特有の味は、主に原材料のモルト、ホップ、水、酵母によってつくられる
・ビールのキレやコクは、「仕込み」「発酵」の過程により変わる
・苦味はホップのルプリンが由来
・酵母が炭酸ガスやアルコールを生み出す
・使用する酵母によってビールの味が変わる

ビールの味は、モルトやホップだけでなく酵母の影響も受けているとは……意外と奥深いですよね。きっと知れば知るほど、ビールが美味しく感じるはず!
今回は色々な飲み方や楽しみ方をご紹介しましたが、なによりご自分の好きなスタイルでビールを楽しむのが一番! もし機会があれば今回ご紹介した手法をお試しください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
それでは!

参考書籍(順不同)

藤原ヒロユキのBeer Hand Boook 』藤原ヒロユキ
藤原ヒロユキのイラストで巡る世界のビール博物館 』藤原ヒロユキ
ビールの科学 』渡淳二
ビール女子伝授!クラフトビールのためのペアリングレシピ 』監修ビール女子編集部

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