初心者でもわかる!ビールの種類(ビアスタイル)をビールメーカーが徹底解説
世界中で150種類以上あると言われているビール。
ビールの種類によって味わいの違いや、香り、色味は異なります。
しかし、日本で流通しているのはほぼ「ピルスナー」という1種類だけ。
他のビールはあまり知られていません。
そこで今回は、「よなよなエール」のメーカーの醸造責任者「もーりー」が「ビールの種類」について解説します。
解説する人:クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」 ビール醸造部門責任者
製造部門責任者・ブルワー(醸造士) 森田 正文(もーりー)
日本クラフトビール業界団体連絡協議会事務局長
国税庁ビール発泡酒醸造技術研修 講師(令和5年)
茨城大学大学院農学研究科で二条オオムギ(ビール麦)の研究で修士号取得。ヤッホーブルーイングで製造スタッフとして醸造業務、新製品開発、設備投資などを担当後、製造部門の責任者に就任。
世界最大のビール審査会ワールドビアカップ(WBC)やヨーロピアンビアスター(EBS)全国地ビール品質審査会など数々の審査会で審査員を務める。審査員歴は13年以上。
ビールとは?
そもそも「ビール」ってどのようなものなのでしょうか?
ここでは、ビールの定義からビールと発泡酒の違い、ビールとクラフトビールの違いについて紹介します。
ビールの歴史
一般的にビールは「麦芽(モルト)」「ホップ」「酵母」「水」を主な原材料としてつくられているものを指します。
実はビールの歴史は古く、紀元前3000年前からあったと言われています。
1516年のドイツで発令された「ビール純粋令」によると
「ビールは大麦、ホップ、水以外を使ってはならない」と定められていました。
現在ではこれに酵母を加え「どんな原材料を使い」「どんな組み合わせ」で「どのように醸造」するのかでビールの種類は分けられています。
もっと詳しく知りたい方はこちら👇
今こそ知りたい!ビールの起源と歴史の話
ビールと発泡酒の違い
ビールは「麦芽使用比率」と「副原料の内容と使用比率」によって「ビール」と「発泡酒」に分かれているんです。
麦芽使用比率が「50%以上」のものを「ビール」、麦芽使用比率が「50%未満」のものを「発泡酒」と表記する決まりが日本にはあります。
実はさらに、麦芽使用比率が50%以上であっても、副原料の使用比率が「5%未満」でないとビールと名乗ることができないというルールが。
私たちの製品「水曜日のネコ」は5%を超える量の副原料(コリアンダーシード・オレンジピール)を使用しているため、麦芽の使用比率は「ビール」と同量ながら、「発泡酒」に分類されています。
他にも副原料など様々なルールがあります!詳しく知りたい方はこちら👇
ビールと発泡酒の違いってなに?クラフトビールメーカーが解説します
酵母で変わるラガービールとエールビールの違い
ビールの種類のことを「ビアスタイル」といいます。ビールの基本的な原材料は「モルト(麦芽)」「ホップ」「水」「酵母」ですが、使う原材料や製造工程の違いによって様々な種類に分けられるんです。今日では、世界になんと150を超えるビアスタイルが!
実はこれは大まかにビールづくりで使用される酵母の違いで、「エールビール」と「ラガービール」の大きく2種類に分類されているんです。
ここでは、酵母で変わるビールの種類について解説します。
ビールづくりに使う酵母は大きく分けて2種類あります。1つがラガービールをつくる「ラガー酵母」。
もう1つがエールビールをつくる「エール酵母」。私たちヤッホーブルーイングの製品はすべてエールビールです。
2つの酵母のどちらかを使うかが、ビアスタイルのはじめの分かれ道となります。
酵母についてもっと知りたい方はこちら
ビールづくりでよく聞く「酵母」って何?
ラガービール
ラガービールとは、下面発酵で醸造されるビアスタイルの総称。
※下面発酵
酵母がタンクの底に沈み下面で層を作る性質のラガー酵母を使用。5℃前後の低温で発酵し、期間は主に6〜10日と長く、その後約1か月間ゆっくり熟成させます。
エールビール
エールビールとは、上面発酵で醸造されるビアスタイルの総称。フルーティで豊かな香りと味わいを楽しめます。
※上面発酵
酵母が麦汁の表面に浮き上がっていく性質のエール酵母を使用。15~20℃で発酵し、発酵期間は主に3〜6日と短く、その後の熟成期間は約2週間です。
エールビールについて詳しく知りたい方はこちら👇
エールビールとは?
野生酵母を使ったビール(ワイルドエール)
エールビールの中には、自然に生息する野生の酵母を使ったビールもあります。(ワイルドエール)
ワイルドエールは蓋のない冷却槽に煮沸後の麦汁を入れ、一晩放置し空中を浮遊する野生の酵母を自然に取り込んで発酵。
さらに木樽で長期間熟成させることによって、木樽に宿る酵母の働きも利用し、複雑な味わいになります。
ベルギーで作られるサワーエールの1種「ランビック」が野生の酵母を使ってつくるビールとして有名です。
ビールの種類(ビアスタイル)一覧表
最初に紹介するのはビールの種類を派生ごとに紹介した一覧表です。
ラガーとエールに分かれ、それぞれの派生によってビアスタイルが決まっていくのです。
基本的なビールの種類を知ろう!
最近はどのクラフトビールメーカーも独自のビアスタイルを出すようになったので、すべてのビアスタイルを追うのは難しいです。
しかし、まずは基本的なビールの種類を押さえておけばOK。好みのビアスタイルさえ分かれば、気分によってビールを選ぶことができるので、ビール選びが楽になります。
ラガービールで押さえておきたいビールの種類3選
ラガービールで押さえておきたいビールの種類(ビアスタイル)を3つご紹介。
ピルスナー
日本で流通しているビールのほとんどがこのピルスナーに分類されます。淡色でアルコール度数は低め、キレのある爽やかなのどごしと、ホップの苦味が特徴です。
【有名なピルスナーのビール】
ピルスナー・ウルケル
詳しくはこちら▼
ピルスナー(Pilsner)ってどんなビール?
ボック
ドイツの都市、アインベックを発祥とするアルコール度数が高いビール。濃厚なモルトの風味が感じられるため、苦味は隠れています。
【有名なボックのビール】
パウラーナー サルバトール
シュバルツ
出典:koestritzer
ドイツのバイエルン地方でつくられるラガーの黒ビール。シャープでクリアな味わい。モルト由来のコーヒーのような香ばしい香りが感じられ、苦みは少ないです。
【有名なシュバルツのビール】
ケストリッツァー シュヴァルツビア
エールビールで押さえておきたいビールの種類3選
エールビールで押さえておきたいビールの種類(ビアスタイル)を3つご紹介。
ペールエール
エールビールの代表格ともいえるビアスタイル。
ペールエールは大きく2つに分けられます。
・モルトのコクを感じられる、イギリス生まれの「イングリッシュ・ペールエール」
・ホップの香りがふんだんに感じられる、アメリカ生まれの「アメリカン・ペールエール」
【有名なエールビール】
・
よなよなエール
・シエラネバダペールエール
詳しくはこちら▼
ペールエール(PaleAle)ってどんなビール?
インディアペールエール(IPA/アイピーエー)
インディアペールエール(IPA/アイピーエー)は、ビールの原材料の一つである「ホップ」を大量に使用してつくられるビール。ホップの香りや苦味がかなり強く、アルコール度数も高いのが特徴。
有名なビール
・
インドの青鬼
詳しくはこちら▼
IPA(アイピーエー)ってどんなビール?
セゾン
ピーチ・グレープフルーツ・ライム・ホワイトペッパーを思わせる、フルーティとスパイシーが混然一体となった複雑な香りが特徴。世界中でいろいろな味わいのセゾンビールがつくられています。
有名なビール
・
僕ビール君ビール
・Saison Dupont
詳しくはこちら▼
セゾン(Saison)ってどんなビール?
他のビアスタイルも知りたい人はこちらの記事もどうぞ
クラフトビールの種類・一覧表!初心者におすすめな人気ビアスタイルを解説
【まとめ】クラフトビールの種類(ビアスタイル)
今回の記事をまとめると……
・クラフトビールの種類は世界中で150種類以上
・ビールの種類を知ると、自分の好みが分かってビールの選定が楽しくなる。また、ビール初心者の方にも、おすすめしやすくなる。
・ビールは原材料に使う酵母で種類が分かれる。「ラガー酵母を使ったラガービール」「エール酵母を使ったエールビール」「自然酵母を使ったランビック等」
・ラガービールはシャープな飲み口。
「ピルスナー」「ビック」「シュバルツ」などのビアスタイルが有名
・エールビールはフルーティーで豊かな香りと深い味わいが特徴。
「ペールエール」「IPA(インディア・ペールエール)」「セゾン」などのビアスタイルが有名。
ビールの種類を知ると、ビールの楽しみ方がぐっと広がります。まずは自分の好みのビアスタイルを見つけて、ブルワリーごとに飲み比べてみてくださいね。
ぜひ他の楽しみ方も知りたい方はこちらの記事からどうぞ。
クラフトビールの楽しみ方入門編 | ビールの色・味・飲み方などわかりやすく解説!
(おわり)