
新たな味覚に出会う旅…くつかけステイでクラフトビール×和食のペアリング【ペアリング研究会:第7回】

「ペアリングをもっと気軽に!」をモットーに、 「クラフトビールと合う○○」をおすすめしている「ペアリング研究会」。 今回は中軽井沢のお宿「くつかけステイ」にお邪魔して、クラフトビール×和食でペアリング研究してきました。和食は、クラフトビールに合う、のか……?
皆様こんばんは!
よなよな料理部・試食係のらうです。
思えばこれまで、たくさんのペアリング料理を紹介してきました。
G’sキッチンでは中華料理の「よだれ鶏」、英国発祥の「ビーフウェリントン」、アメリカンな「よなよなテリヤキバーガー」など……いろんな国の料理とクラフトビールのペアリングをお届けしてきましたね。なんだか感慨深いです。
↑ パクチーをたっぷり使った「よだれ鶏」。青鬼のおともに!
そのほかにも、郷土料理とのペアリングをためしてみたり、手軽に作れるおつまみをご紹介したり。
さまざまなペアリングを提案してきました(そして試食に試食を重ねてきました)が、……ここで私、振り返っている最中に「あること」に気付いてしまいました。
…………私たちは、「和食」を、あんまり紹介していないのでは?
そうなんです。認めたくなくともそうなんです。
みんな大好き「すき焼き」を洋風にアレンジした料理や、ゆずポン酢のクリーミーな泡で特徴付けた料理を提案したことはありましたが、「これは和食です!」と言い切ることのできる料理とは、あんまりペアリングしたことがありません。
そのぶん、福岡の郷土料理「鯖のじんだ煮」や缶つまさんの「ぶりあら炊き」がよなよなエールに合う!!と知ったときには、新発見に目からうろこがぽろぽろ落ちたものですが……。
↑ 福岡の郷土料理「鯖のじんだ煮」。一口食べて驚きました。合う。
私、どうやら「発祥国が同じものを合わせるとよい」というペアリング理論に、なんとなく引きずられすぎているようです。
エールビールは海外で生まれたお酒だから、やっぱり和食より、洋食のほうが合わせやすいんじゃない?と。和食には、やっぱり日本酒がいいんじゃない?と。
↑ そんなんじゃダメだ———―――――!
でも!
そんなことでは「よなよな料理部 試食係」の名がすたる……!!
やっぱりエールビールと和食とのペアリングを諦めるわけにはいきません。
「クラフトビールのペアリング文化を広めたい!」「新しいビール文化を日本に根付かせたい!」そんな熱い想いを持って活動しているのが「よなよな料理部」です。当の本人がその選択肢を狭めるなんて、言語道断なのです。
とはいえ、どうすれば「クラフトビール×和食」のペアリングを皆様に提案できるんだろう……?
さんざん頭を悩ませ続けて、行き着いた答え。
それが「和食のプロに教えてもらおう!!」というものでした。
古民家で和食を楽しめる「くつかけステイ」
今回お邪魔したのは、中軽井沢にあるお宿「くつかけステイ」。
2017年夏に古民家をリノベーションして生まれた、とっても居心地のいいお宿です。スタッフの皆さんもとっても気さく。一人で泊まれるドミトリーもあるので、個人的には一人旅するときに拠点にしたいお宿です。
そして!
くつかけステイでは「本格的な和食の奥深さを味わう」ことができるんです。
料理長の福本さんは、お若いながらも和食に精通している方。当時人気を博した「広尾 季楽」で調理主任を任されたのち、遊ヶ崎リゾートホテルグループの料理長を務め、その実力は2015年にミシュランにも掲載されたほど。幅広い調理技術と表現力の持ち主なのです。
↑ 脂がジュワッ・・・。こりゃたまらんですな。
新鮮な野菜・質の良いお肉は地のものを。魚介は三崎港・金沢の仲卸直送品を中心に厳選し、その季節ならではの素材の良さを伝えられるよう、手間ひまかけて丁寧に下ごしらえしているんだとか。
福本料理長がここまでこだわって作られている一品、おいしいに決まっていますよね!
ぜひ「クラフトビールと和食」のペアリングをご教授いただきたい!
かくかくしかじかお願いさせていただくと……。
今回、なんと「よなよなペアリングセット」を体験できることになりました!
この「よなよなペアリングセット」は、福本料理長が自ら考案してくださったもの。他国のエッセンスも取り入れながら、「クラフトビールと和食のペアリング」をご提案いただきました。
福本料理長が提案してくれた料理は、すべて「ペアリング三大要素」に沿っています。
Comparing(強調) :双方の良さを強める
Cutting(カット) :濃い要素をサッパリとさせる
Contrasting(対照的):対照的なものを合わせて新しい味覚の構築をする
このいずれかを意識しながら料理を作ると、まさに「ホームラン!!」なペアリングが完成するんです。
たとえば、Comparing(強調)の例としてよく挙げられるのは「苦味」×「辛味」。
IPA等の苦さ際立つビールに辛い料理を合わせると、それぞれの要素がより強く感じられるようになります。インドの青鬼に「よだれ鶏」を合わせるのは、この要素に則っているというわけです。
福本料理長からは、定番製品「よなよなエール」のほか、軽井沢限定で販売している「軽井沢高原ビール ワイルドフォレスト(以下、ワイルドフォレスト)」「軽井沢ビール クラフトザウルス ペールエール(以下、クラフトザウルス ペールエール)」「軽井沢ビール クラフトザウルス ブラックIPA(以下、クラフトザウルス ブラックIPA)」の4種に合うお料理を、それぞれご提案いただきました。
すべてがペアリング三大要素に沿って作られた和食たち。
一目見た瞬間からときめきが止まりません。えらいこっちゃ。
「クラフトビールと和食」は合うのか?という戸惑い、いよいよ解決していきましょう。ペアリング理論や料理長の解説もまじえながら、どこが合うのか、なぜ合うのか、も含めてお届けしますね。
ちなみに今回、私だけで伺うのは心細かったので(チキンなんです)、他のヤッホースタッフにもお声掛け。「あけぼのインペリアルレッド」の開発ブルワーちゃんりょ、法人受注の鬼・パクチー、インスタグラマーのむぎちゃんなど、個性的な面々が揃いました。
当日のようすを知りたい方はぜひこちらのツイートもご覧くださいね!
ワイルドフォレスト×「ずわい蟹とセロリの菜種和え」
一品目はワイルドフォレストに合う「ずわい蟹とセロリの菜種和え」。
とっても濃厚な味わいの丸ずわい蟹と、セロリ、グレープフルーツ、木の目のさわやかな酸味が心地いい一皿です。菜種油で和えているため、軽やかで淡い味わいながらも余韻がしっかり残る味わいに。
「ペアリング要素でいうところのComparing(強調)に沿っています」と仰る福本料理長。早速戴いてみると……。
↑ びっくりしすぎて思わず接写してしまった
…………合う……………………。
ワイルドフォレストは、さっぱりしていながらも花のような香りが奥に潜んでいるブロンドエール。何にでも合うといえば合うんですが、このビールの良さを引き出すにはどうすればいいんだろう?と、常々悩んでおりました。
でも、もはやこの料理が答え。
ワイルドフォレストの繊細なホップの香りが、セロリの香りによってブワッと引き出されて……とにかく余韻が素晴らしかったのです!やわらかな香りが重なり合って、まるで花畑のまんなかに放り出されたような感覚になりました。
ブルワーちゃんりょも「お料理を食べたあとに飲むと、ハーバルなホップ香が広がってく!」と驚いていました。セロリが合うのか、香りを繋ぎ合わせた菜種油のあんばいがちょうどいいのか……。さすがです、としか言いようがありませんでした。完敗。
クラフトザウルス ペールエール ×「帆立 白絹和え」
二皿目はクラフトザウルスペールエールに合う「帆立 白絹和え」。
表面を焼き付けてからオイル漬けにした帆立に、マスカルポーネチーズの和え衣をまとわせた一品。添えられたピンクペッパーとネギが、良いアクセントになっています。
こちらの一品は、ペアリング要素で言うところの「Contrasting(対照的)」をもとに構築したそう。
↑ ピンクペッパーは味も見た目も良きアクセント。
「ペールエールには肉が合う」という固定観念にまたもとらわれていた私、帆立の濃厚な旨味が合う!と聞いて、おそるおそる口にしましたが……たしかに合う…………。
帆立がややオイリーだからでしょうか。噛むたびにマスカルポーネの甘みと帆立の旨味がほどけ合っていくのですが、これがまた油によって繋ぎ合わされていて。クラフトザウルスペールエールを飲むと、ホップの柑橘香だけが残って、濃厚な味わいと溶け合わさってから、するりと抜けていきました。まさにプロの業。
同じ「ペールエール」であるよなよなエールとも食べ合わせてみましたが、どうにも甘味が残り、口の中がだらけてしまいました。ビアスタイルの大枠は一緒といえど、やはりビールによって「ホームラン」は違うのですね。勉強になります。
よなよなエール ×「蝦夷鮑の黄身焼き」
三皿目はよなよなエールに合う「蝦夷鮑の黄身焼き」。
こちらは、卵黄とバターで練った餡をかけて焼いた、濃厚でありながら素材の味を楽しめる一皿。蝦夷鮑と初夏の野菜がシンプルな黄身焼きになっています。付け合わせはミニトマトの梅煮とアイスプラント。
「これはCutting(カット)を意識しました。よなよなエールの個性的な余韻を、軽やかにするペアリングです」と言う福本料理長。黄身焼きを食べることさえもはじめての私、心躍ります。
↑ 野菜の色味もとってもきれい。そそられます。
わかってはいましたが、合いますね…………。
素朴な見た目とは裏腹に、黄身の甘味とバターが作り出した濃厚な味わい、そして鮑の風味がしっかりしていて。ゆっくり咀嚼し終えたあとによなよなエールを飲むと、それらの要素がさっぱり流され、かつ、よなよなエールが持つ独特の余韻も柔らかくまろやかになりました。
ほかのビールとも食べ合わせてみたところ、全員一致で「よなよなエール以外だと、料理かビールが負けてしまう」という意見に。よなよなエールのように、モルト感とボディがあり、適度な苦味があるものにぴったり合うお料理でした。
クラフトザウルスブラックIPA ×「信州牛ロースト」
最後の一品は、クラフトザウルスブラックIPAに合う「信州牛ロースト」。
「これは和食ではないのですが、ぜひ試してほしい!」とご提案いただきました。
信州牛のもも肉でも貴重な「しんたま」のローストビーフ。黒胡椒と香味野菜のソースがアクセントに、そしてハイビスカスの酢「カルカデ酢」がさまざまな味わいをひと繋ぎにしている一皿です。
こちらは「Comparing(強調)」に沿って構築されたんだそう。「ブラックIPAはロースト香と見た目に反するホップの爽やかさが特徴なので、肉の旨味や塩味を引き立たせ、さらに重厚な食べ応えになるかと思います」と微笑む福本さん。
ローストビーフだとブラックIPAに負けてしまうのでは? と首を傾げつつ、まずは提案通りの食べ合わせを試してみることに。
……口の中で、一体何が起こっているんだ…………???
↑ あまりのおいしさに錯乱しているようすが窺える取材メモ。
あまりにも驚いてしまった私、何度も「何が起こっているんだ??」と繰り返し口にしてしまいました。いや、本当に何が起こっているのかわからなくて……。
クラフトザウルスブラックIPAを飲んでから、マッシュポテトを包んだローストビーフを口に運ぶと、肉の圧倒的な旨味にぐわっと支配されてしまうのです。ブラックIPAのロースト香やホップ香もあいまって、まるで口内に革命が起きたかのように。
「お肉に脂が乗ってるから合うのかな?」「このカルガデ酢、ホップ香に合う!」とスタッフも大盛り上がりでした。プロは……本当にすごいのですね……。
今日の結論:「和食もクラフトビールに合う!」
↑ 酔ってブレブレになってしまった。
今回は、福本料理長に「和食×クラフトビール」のことを教えていただきました!
一概に「和食」と言っても、「ペアリング三大要素」のどれかに沿って構築すれば、クラフトビールにとっても合わせやすくなるんですね。また、「和」にとらわれることなく、自分流のアレンジを加えていくことも大事なのだと学びました。
いろんな引き出しを持ちながら、「食」にいつまでも貪欲に!
この心を忘れず、今後もよなよな料理部・試食係として、ビールに合うペアリングを探し続けようと思います。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
福本料理長考案の「ペアリング」あなたも体験してみませんか?
くつかけステイでは、現在「よなよなエール 大人の軽井沢ステイ」という宿泊プランを実施中!
今回ご紹介した福本料理長考案のお料理とクラフトビールのペアリングを夕食に楽しむことができる、とっても贅沢な宿泊プランとなっています。
昨年は「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」参加者のみがご予約できる宿泊プランでしたが、今年からはどなた様でもご予約いただけるようになりました。
今回私たちが得た気付きや発見、そして「和食×クラフトビール」の奥深さを、あなたも体験してみませんか?
プラン詳細は「よなよなエール大人の軽井沢ステイ」公式サイトをご確認ください。
(※プラン内容は予告なく変更になることがございます。予めご了承ください。)
おまけ
クラフトザウルスブラックIPAをバニラアイスにかけてみると、なんと「チョコミント」のような味わいに!!
チョコミント党のスタッフ(パクチー)にしっかり刺さっていました。曰く「アフォガード風の見た目と味わいのギャップがいい!」とのこと。
チョコミントが好きな方は、ぜひ試してみてくださいね。
ではまた。
(おわり)