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「生ビール」とは?瓶ビールや缶ビールとの違いは?ビールメーカーが解説

「生ビール」とは?瓶ビールや缶ビールとの違いは?ビールメーカーが解説

こんにちは! よなよなエールのメーカー・ヤッホーブルーイングの「豪ちゃん」です。

突然ですがみなさん、「生ビール」とは何か知っていますか?
今(えっ、あのお店で飲むビールのことでしょ?)と思った方もいるかもしれませんが、実はそうとは限らないんです!

今回は、意外と知られていない「生ビール」についてビールメーカーが解説します! これを知っていたら自慢できちゃうかも……!?

この記事を監修した人:ヤッホーブルーイングブルワー・加藤直

ヤッホーブルーイングのブルワー・加藤直(なおG)の画像

加藤 直(かとう なおし) ニックネーム:なおG
麦府中奉行(醸造所設備ユニット) ユニットディレクター
2014年新卒入社。社長アシスタント、醸造、充填などに従事後、2019年度に醸造部門のユニットディレクター就任、その後醸造所施設を管理する「麦府中奉行」ユニットディレクターに就任。
「よなよなエール」をはじめとするクラフトビールの醸造や新製品の研究・開発を担当。料理の趣味が高じて、ビールに合うペアリング料理のレシピ開発や料理教室講師なども行う。

「生ビール」とは?

ビールが2つのグラスに注がれている画像

結論、「生ビール」とは「熱処理をしていないビール全般」のことを指します。「お店でサーバーから注いだビール=生ビール」と思われがちですが、入れる容器が缶であれ瓶であれ、熱処理をしていないのであればすべて生ビール! といえます。
反対に熱処理をしているビールの場合は、サーバーから注いだとしても生ビールとは呼べないのです。ちなみに アサヒスーパードライキリン一番搾りサッポロ黒ラベルサントリープレミアムモルツ など日本で広く飲まれているビールは、そのほとんどが熱処理されていない生ビールです。
(熱処理については、 熱処理とは? の章で解説しますね!)

生ビールの見分け方

アサヒ生ビール、キリン一番搾り、サッポロ黒ラベル、サッポロエビスビール、アサヒスーパードライ生ジョッキ缶がテーブルの上に置かれている画像。<生>の表記には赤い線が引かれている。

生ビールの見分け方はいたってカンタン! 画像のように、缶のどこかに「生ビール」「生」などと表記されていることが多いです。このような表記を見たら「このビールは熱処理していないビールなんだな~」ということです。

生ビールの方が生ではない熱処理ビールよりおいしいの?

ビールが2つのグラスに注がれている画像

メーカーの視点からいえば「生ビールの方が熱処理ビールよりおいしいというわけではない」といえます。製造工程で熱処理をする/しないの違いがあるだけで、どちらもブルワーの技術や思いのこもったおいしいビールに違いはありません。
ちなみに生ビールはすっきりとした味わいになる傾向がありますが、熱処理をしたビールはコクや苦味の活きた味わいになる傾向があります。どちらにも魅力がありますね……!

4つのグラスに注がれたビールで乾杯している画像

それでもここまで「生ビール」という呼び方が広がっているのは、「生」という言葉の新鮮でおいしいイメージが浸透してきたからといえるでしょう。(実際、「生ビール」と聞くとなんだかおいしそうですよね!)

「熱処理」とは?

ヤッホーブルーイングの佐久醸造所の製造施設写真

「生ビールとは、熱処理をしていないもの」とお話ししました。しかし熱処理とはそもそもどんな作業なのか、何のために行うのか、よくわからないですよね。ここではビールの製造方法と熱処理を行う理由をまとめておさらいします!

ビールの製造方法

ビールの製造工程を図解した画像

【ビール製造の工程(※一部抜粋)】
①:ミリング(糖化をしやすくするため、麦芽を粉砕)
②:仕込み(麦芽からビールのもとになる麦汁をつくる)
③:発酵(麦汁に酵母を加え、アルコールと炭酸を生む)
④:貯酒(発酵後に熟成させ、味を仕上げる)
⑤:充填(缶や瓶など、容器に詰める)※充填の前にろ過・熱処理が行われます
※ビールのつくり方は こちらの記事 で解説しています。

大まかにいうとビールの製造工程はこの通り。【④:貯酒】で熟成させたビールを缶や瓶に詰める前にご注目! ここで熱処理をしなかったものが「生ビール」というわけですね。では一体、なぜ熱処理をするのでしょうか……?

熱処理を行う理由

ブルワーがグラスに注がれたビールを眺めている画像

熱処理を行う理由は大きく分けて2つ。

熱処理を行う理由①:酵母の活動を止めるため

1つは熱によって酵母の活動を止めることでビールの味や品質が変わるのを防ぐため。酵母が生きたまま缶や樽に詰めると、配送やお店に並んでいる間に温度が上がると中で活動を続けるので、常温で保管・流通したい場合は特に賞味期限を延ばしづらいなどの問題があります。

熱処理を行う理由②:微生物の繁殖や活動を止めるため

2つめは、ビールの製造過程で混入してしまった微生物の繁殖や活動を止めるため。こちらも充填前に活動を止めておかないと、飲むまでにビールの品質が変わってしまう可能性があるのです。

以前のビールは酵母や微生物の活動を抑えるために、熱処理をするかコストをかけて冷蔵で流通させるのが主流でした。しかし濾過技術の発展に伴い、1980年代には濾過だけで酵母や微生物を高いレベルで取り除けるように。そこから大手ビールメーカーを中心に、常温で流通できる生ビールが広がっていきました。

「生」じゃないビールもあるの?

ビールがグラスに注がれている画像

日本で広く飲まれているスーパードライや一番搾りなどのビールは、ほとんどが生ビール。ですが、あえて熱処理をしているビールもたくさんあるんです!

生ビールではないビールの例

たとえば1877年発売の、日本で最も歴史あるビール「 サッポロラガービール (通称・赤星)」や、昭和40年頃の味覚を再現した「 キリンクラシックラガー 」が熱処理をしているビールの例。どちらも居酒屋さんで置いているお店も見かけますし、根強い人気を誇っていますよね!

ヤッホーブルーイングの製品6種類がテーブルの上に置かれている画像

そして忘れてはいけない……!! 実は「よなよなエール」「インドの青鬼」など、私たちヤッホーブルーイングのビールも(一部を除いて)そのほとんどが熱処理をしているビールなんです! 

ヤッホーブルーイングが熱処理を行う理由

私たちヤッホーブルーイングが熱処理を行う理由は、大きくは「目指すエールビールの味わい」と「いつどこで飲んでも安全でおいしいビール」を実現するため。現代では濾過だけで常温流通できるビールがつくれるようになりました。しかし濾過を重ねすぎると、私たちが目指すエールビールの味わいは実現できません。

グラスに注がれたよなよなエールの画像

そのうえで、お客様に「いつどこで飲んでも安全でおいしいビール」を届けるため、常温でも流通できる品質を担保する必要もありました。
「目指すエールビールの味わい」、そして「いつどこで飲んでも安全でおいしいビール」、この2つを叶えるためにたどり着いたのが、ビールを熱処理することだったのです。

無濾過ビールってなに?

生ビールとは別に、「無濾過(むろか)ビール」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

無濾過ビール

無濾過ビールとは、文字通り「濾過をしていないビール」のこと。通常熟成を終えたビールは、酵母や不要な成分を取り除くために濾過します。ですが独特の味わいを実現するため、あえて濾過をしないで製造しているビールもたくさんあるのです。

左にプラカップに注がれたよなよなエール、右にプラカップに注がれたイベントなどで登場する無濾過ビールが並んでいる画像
左:よなよなエール/右:イベントなどで登場する無濾過ビール


無濾過ビールは濾過したビールにはないコクやフルーティな香りが楽しめ、濁っていることが多いです。独特の飲み口が楽しめるのも特徴。
ただ熱処理していない無濾過ビールの場合、充填後も酵母は働いてしまうので、発酵が進み味わいが変化してしまうことも。そのため、酵母の働きが止まるように冷蔵保存が徹底されていたり、賞味期限が短めに設定されていたりします。

【ポイント】無濾過ビールも熱処理をしていなければ「生ビール」、熱処理をしていれば「熱処理ビール」になります。

まとめ:生ビールは熱処理していないビールのこと!

ここまで読んでいただきありがとうございました! この記事の内容をまとめると……

①CMやお店でもよく見聞きする「生ビール」は、熱処理をしていないビールのこと。熱処理している場合、お店で飲めても、容器が何であっても生ビールとは呼べません。
以前は酵母や微生物の活動を抑えるために熱処理をするのが主流でしたが、現在は濾過の技術によって熱処理なしでもそれらを取り除けるようになりました。

生ビールの方が優れている、というわけではなく、単に製法の違いがあるだけ。現在でも理想の味わいや品質を保つためにあえて熱処理をしているビールもたくさんあります。

③ちなみに私たちヤッホーブルーイングのクラフトビールもほとんどを熱処理をしています。理想の味わいを実現しつつ、熱処理によって賞味期限を伸ばすことで、より多くのお客様においしいビールを届けたいと考えているからです。

この記事が、生ビールについての正しい認識が広まるきっかけになれば幸いです!

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