#本にあうビール 文喫編 ブックリスト
本とビールを愛する「文喫 六本木」のブックディレクター有地さんが選んだ本一覧です。
「よなよなエール」でじんわりいい具合の夜をはじめる夜野奈央さん、「インドの青鬼」で午前3時にディープインパクトする青山鬼平さん、昼間からチェアリングで「僕ビール君ビール」を飲む僕田君人さん。そんな架空の3人を想定して選書していただきました。一冊ごとにオススメコメントも。ほろ酔い読書の相棒探しの参考にどうぞ。
よなよなエールにあう本:夜野奈央さん
ラインズ
ティム・インゴルド 工藤晋 左右社
あてもなく散歩をしていると地図上で線を引いているみたいな気がする。ふらふらと一筆書きするその線の後先にのめり込んでみよう。
失われた夜の歴史
A.ロジャ-・イ-カ-チ 樋口幸子 片柳佐智子 合同出版
思い出してしまった。夜はこんなにも暗く、静かで、濃密で、恐ろしい。
曇天記
堀江敏幸 都市出版
曇り空の下、歩いていく。光に掻き消されるでもなく、闇に呑まれるでもなく、街の細部が目につくのだ。こんな天気の日には。
二匹目の金魚
panpanya 白泉社
遠くに見えた建物や、どこからか聴こえる音を追いかけていくうちに、知っている街の知らない場所に吸い寄せられていく。
ナイトフライト
伊波真人 地方・小出版流通センタ-
些細な日常のシーンがふと、天体に到達する。誰もが夜には宇宙にむき出しになっているのだ。
APARTMENT
宮岡蓮二 ワイズ出版
どこかで見た風景。知らない場所なのに懐かしい。懐かしいのに知らない。ただ羅列されたアパートの写真。記憶の隙間に入り込まれる。
白と黒の断想
滝口修造 幻戯書房
白黒の図像と小さな文章。連なっていくイメージは目覚めたすぐ後にだけ思い出せる夢に似ている。
占星学 新版
リズ・グリーン 岡本翔子 鏡リュウジ 青土社
自らの運命と天体を結びつけたのはなぜだろう?夜空を見上げるとその理由が少しずつわたしに浸透していく気がする。
無意味の祝祭
ミラン・クンデラ 西永良成 河出書房新社
人生は無意味だと口に出してみる夜。軽くなった?重くなった?時には、意地悪になったっていいのだ。
三十歳
インゲボルグ・バハマン 松永美穂 岩波書店
微細なこころの動きを追いかける。水面に石を投げてその波紋をじっと観察するように、自分と向き合う。
ほろよい読書のおすすめBGM
よなよなエールを愛飲する、夜野奈央さんのためのプレイリスト(Spotifyが開きます)
インドの青鬼にあう本:青山鬼平さん
迷宮
ヤン・ピ-パ- (佐藤恵子 加藤健司) 工作舎
迷い込んだまま永久に出てこない。迷宮はパラダイスだろうか。恐れと憧れがごちゃ混ぜになったまま強烈に魅了されていく。地獄に下りていくように。
快楽主義の哲学
澁澤龍彦 文藝春秋
快楽は発見だ。あなたの快楽はあなたが発見するしかない。遊びながら、本能のままに、深く掘り続けるのだ。
書物変身譚
今福竜太 新潮社
本が情報を運ぶのなら、人もまた本だと捉えられる。万物の中に潜む書物の姿とその変容に触れながら、あなた自身も変容していくはずだ。
見えない都市
イタロ・カルヴィ-ノ 米川良夫 河出書房新社
見知らぬ街の描写が頭の中に光景を描き出す。他者の語りによって生起する都市のイメージは幻想の彼方に振り切れてしまう。
インド神話入門
長谷川明 新潮社
極彩色の細密画を見つめていると、視覚がパキパキと音を立てるように冴えてくる。目から飛んで行ってしまおう。
古代の船と航海 新装版
ジャン・ル-ジェ 酒井伝六 法政大学出版局
海を越えるのは黄泉に下って帰還するようだ。恐れと期待を技術によって制御する。
変なお茶会
佐々木マキ 絵本館
世界中から寄り集う人々の、形態と色彩の氾濫。紅茶のように、少しずつ精神に作用する。
失われたいくつかの物の目録
ユーディット・シャランスキー 細井直子 河出書房新社
失われたものにも始まりがあり、終わってしまえばそれは、閉じた物語として認識される。始まりから終わりのプロセスの連続に身をゆだねていく。
チョンキンマンションのボスは知っている
小川さやか 春秋社
香港のタンザニア移民コミュニティに分け入っていく。人と人の間でやりとりされるものを追いかければ、複雑に絡み合った関係性の構造が見えてくる。
漁師はなぜ、海を向いて住むのか?
地井昭夫 重村力 幡谷純一 工作舎
漁村、海に向けて開けた家屋の群れが頭の中に浮かぶ。なにかへの畏怖を持ち続けるための様式。
ほろよい読書のおすすめBGM
インドの青鬼を愛飲する、 青山鬼平さんのためのプレイリスト (Spotifyが開きます)
僕ビール君ビールにあう本:僕田君人さん
集落が育てる設計図
藤井明 LIXIL出版
人が寄り集まって暮らす。自然発生的な集落の形が共通のパターンを見出す時、コミュニケーションの根幹に触れているのかも知れない。
未知との遭遇
佐々木敦 講談社
変わらない自分ではなく、多様な自分が重なり合った自分をベースにしたら、他者との関係はどう変わるだろう?
脱・筋トレ思考
平尾剛 八木書店
誰かとつながることは暗闇の中を手さぐりで歩くみたいだ。見えない暗がりに感覚の枝を伸ばしていく。
どもる体
伊藤亜紗 医学書院
あなたの体とあなたは重なり合っているけど同じものではないかもしれない。バグによって体が強烈に意識される時、あなたの体は誰のものだろうか?
共感のレッスン
植島啓司 伊藤俊治 集英社
心の動きと身体の動きをきっぱりと切り分けることはできない、というところからスタートしてみよう。
深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと
スズキナオ スタンドブックス
確かな情報よりも、誰かの立ち位置から見た情報が欲しい。角度のついた話が刺さるのだ。友達とおしゃべりするみたいに。
やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)
滝口悠生 NUMABOOKS
世界中から言葉を紡ぐ人が集まったらどうなるだろう?小さく積み重なっていく交流の中で、不定形に変化する。
日本世間噺大系
伊丹十三 新潮社
時には、世間噺をしよう。話半分で聴いていたのに、気づけばじゅるりと涎が出そうになるほど、惹きつけられている。
拡張現実的
川田十夢 講談社
物事の生起するモデルが何度も提示されている。短い話ほど構造が浮き彫りになるようだ。言葉による設計図。
ありがとうございます
内田裕也 幻冬舎
語るべきことが無いのではなく、語り口を持たないのだ。おしゃべりを始める前に、誰かの肉声に触れてみるといい。強烈な声に触れることで、自分の言葉が溢れてくることがある。
ほろよい読書のおすすめBGM
僕ビール君ビールを愛飲する、僕田君人さんのためのプレイリスト(Spotifyが開きます)