クラフトビール×メタル×麻婆豆腐! 偏愛店主に会えるお店、五反田「Brewpub Truth」
私たちとしては10年ぶりとなる、全国向けのレギュラー製品「裏通りのドンダバダ」。「自分の好きに夢中で生きる」をコンセプトに、クラフトビールの世界に魅せられた若手ブルワーが開発したクラフトビールです。
「自分の好きに夢中で生きる」。そんな言葉がぴったりな「クラフトビールに携わる人」を紹介する特集企画を3日連続で公開しています。
最終回は、東京・五反田のブルーパブ「Brewpub Truth」の店長、大塚恭一郎(おおつか・きょういちろう)さん。「メタルミュージックとクラフトビールのペアリング」に魅せられ、お店をオープンした大塚さんにお話を伺いました。
メタルに麻婆豆腐に、ピンクの店内! 偏愛が詰まった店「Brewpub Truth」
東京・五反田のブルーパブ「Brewpub Truth」。
ガラスの壁には、CRAFT BEER、MAPO TOFUの文字……そしてガラスの奥にうっすら見えるのは、ギター? ドアに貼ってある注意書きは……モヒカンだ!
ギター、ドラム、そしてロックバンドのステッカー!
ギターピックも売ってる!
「こんばんは~」
ピンクのライトに照らされて、メタルバンド・メタリカのスカル柄Tシャツで現れたこの方こそ、「Brewpub Truth」店長の大塚さん!
本家公認!? アメリカのメタルバンドが店名の由来
まりも:
メタリカのバンTお似合いです!
大塚さん:
ありがとうございます(笑)
まりも:
大塚さん、もはやお尋ねするまでもないですが、メタラーですよね?
お店のウェブサイトの「コンセプト」ページの説明欄に、「Beer」より先に「Metal」の表記があるのを見た時点で予想はしていたのですが、今お店に足を踏み入れた瞬間に確信しました(笑)
大塚さん:
お気づきですか(笑)。はい、メタルミュージックが大好きなんですよ!
まりも:
Brewpub Truthさんのことをおすすめしてくれた、よなよなの里のスタッフ「べーやん」から、「トイレがすごいよ」って聞いたんですが……
うわー! なにこれ! トイレのドアを開けるとアンプから音が鳴る!
大塚さん:
そうそう、余っているギターをリユースして、手作りしてみました。アナログな仕組みなんですけどね!
まりも:
店内にも楽器がたくさん置いてありますよね。これはディスプレイ用ですか?
大塚さん:
いえ、酔っぱらって気分が良くなったお客さんに自由に弾いていただくために置いています(笑)。お子さんが遊んでいかれることもあるんですよ! 多少楽器ができる人が来たら、「知ってる曲やろう!」みたいな感じでセッションすることもあります。
ちょうど昨日も、仙台の「穀町ビール」の今野さんと、酔っぱらって「Deep Purple(※)」の「Smoke on the Water」を演奏しました。
※Deep Purple:イングランド出身のハードロックバンド
まりも:
最高ですね……! 私も激しめの洋楽が好きで、少しだけドラム歴もあるんです。まさにこんなお店があったらいいなってずっと思っていました。演奏しない側も、生ライブを見ているような気分で楽しめますよね。
大塚さん:
おっ、まりもさん、激しめの音楽好きですか。「Brutal Truth」ってバンドご存じですか?
まりも:
知らないです……!
大塚さん:
Brutal Truthって、アメリカのグラインドコアバンド(※)なんですよ。実は、そのバンド名にインスパイアされてこのお店の名前を決めたんです。
※グラインドコア:ハードコア・パンクとヘヴィメタルが融合してエクストリームな方向に発展した、過激な音楽性が特長の音楽ジャンル
まりも:
ブルータル・トゥルース……ブルーパブ・トゥルース……たしかにそっくりですね!
大塚さん:
起業前、Brutal Truthに「こんな店やりたいんだけどいいかな」というメールを送ってみたんです。そしたら、バンドのドラマー本人から「どうぞどうぞ」という感じで返事が来て!
まりも:
すごい! 本家公認じゃないですか!?
ところで、大塚さんはいつからそんなに音楽がお好きなんですか?
大塚さん:
中学生ぐらいからですかね。MTV(※)を見てたら、マドンナやマイケルにまぎれて、ボン・ジョヴィとかヴァン・ヘイレンのようなハードロックが流れていて。ひずんだギターの音が琴線に触れたというか……あっ、気持ちいい、みたいな。それから、下北沢とか渋谷の中古CDショップに通って、宝探し感覚でたくさんCDを買って。気づいたらハードロックやメタルに行きついていましたね。
※MTV:24時間音楽を専門に放送するアメリカのケーブル・テレビのチャンネル
まりも:
今はストリーミングで「おすすめ音楽」が自動で表示されるのでラクですが、昔のほうが「宝探し」的な楽しさがありましたよね。今だったら、最初から興味がなければなかなかメタルには行きつかないかも。
メタルとビールに魅せられて、20年働いた広告業界を飛び出し起業。
まりも:
大塚さんの音楽ツウっぷりはよくわかりました。
でも、なぜクラフトビール? お店をオープンするなら、レコードレコードショップとか、楽器屋さんとか、色々ありそうですが。
大塚さん:
お店を開くなら絶対にブルーパブでした!
そう思った原体験があって……2000年代の前半ぐらいのときに、僕と同じくメタル好きの同僚が、メタルがかかっている横浜のビアバー「THRASH ZONE(スラッシュ ゾーン)」に連れて行ってくれたんです。 そこは、3杯飲んだら酩酊して帰れなくなるぐらい、濃いビールばかり提供しているお店なんですよ(笑)。いい感じに酔っぱらった体に響くメタルミュージックが最高に気持ち良くて。
僕の中で、もともと大好きだった「クラフトビール」と「メタル」がミートしたのがその瞬間でした。「メタルにもビールにも酔える……! この環境、なんて楽しいんだ! いつかやりたい!」と思ったんです。
まりも:
メタル×ビールのペアリングにビビッときたんですね!
クラフトビールはいつからお好きだったんですか?
大塚さん:
社会人になってから偶然飲んだ、ヒューガルデン(※)がきっかけです。海外のビール面白いじゃんと思って、ヒューガルデンが飲めるビアバブを探し始めて。その時に出会ったバーの店長とシェフに色々と教えてもらって、クラフトビールにハマりましたね。ハマりすぎて、週5日通ってました(笑)
※ヒューガルデン:正式名称は「ヒューガルデンホワイト」。ベルギーのヒューガルデン村を発祥とする世界的なホワイトビール。
まりも:
週5ですか!
大塚さん:
当時は、クラフトビールそのものというよりも、そこにいくと落ち着く、という感じで居着いてました。飲みながら誰かと話すという空間が好きだったんでしょうね。今もそうですが。
まりも:
2019年にこのお店をオープンされるまでは、何をされていたんですか?
大塚さん:
新卒からずっと広告系の仕事に携わってきました。何度か転職もしましたが、20年くらい広告畑にいましたね。外資系の会社だったので、一時期シンガポールに住んでいたこともありました。
まりも:
音楽でもビールでもなく、広告ですか! しかも20年も。
大塚さん:
長いこと働いていましたが、ずっと、ピラミッド型の組織が嫌で(笑)。偉くなりたいというわけでもなかったし、“できるやつ”があがっていって、“できないやつ”が淘汰されていくようなシステムになじめないなと思って。あるとき、「サラリーマン辞めよう」と。
まりも:
それだけ長い間働いていていきなり退職&起業となると、ご家族に反対されたりしませんでしたか?
大塚さん:
カミさんはビール好きでもないし、ポジティブな印象は持っていなかったと思います。だから、パワーポイントで「起業するメリット」を伝える説得資料を作ったんですよ!
まりも:
お酒を飲まない奥様へのプレゼンは難関な気がしますが、無事成功したんですね。さすが元広告マン!
大塚さん:
「コミュニティへの貢献」とか、「家族への奉仕」とか、「痩せる」とか、あることないこと並べて説得しました(笑)。今は応援してくれているので、よかったです。
つくりたいのは、「げっぷにホップが香る」IPA!
まりも:
「ブルーパブ」という店名ですが、まだビールはつくられていませんよね。
大塚さん:
本当はビールをつくりたいんですが、オープンしてからコロナがまん延してしまい、なかなか着手できていないんです。
まりも:
この状況が落ち着いたら、どんなビールをつくりたいですか?
大塚さん:
やはりIPAですね。「Stone IPA(※)」みたいなウエストコーストIPAが大好きで。汚い話ですが、StoneとかアメリカのIPAを飲んだ後にげっぷをすると、あの味がするじゃないですか(笑)。僕も、ああいうIPAつくりたいなって。
※Stone IPA:「マーケットの好みに追従せず自分の飲みたいビールを醸造する」という姿勢を貫くアメリカのブルワリー「Stone Brewing」のIPA。
まりも:
すごくよく伝わりました(笑)。たしかに、お店の樽のラインナップもIPAが多いですね。
大塚さん:
今はコロナで少し減らしていますが、通常は常時9タップで、IPAが多いです。メインはアメリカで、ヨーロッパや国産も1~2タップぐらい。
五反田はビアパブが多いので、他店とかぶらないよう、なるべく変なものを置こうとしてますね。
来週は、東京・文京区にある「カンパイ!ブルーイング」のオーナーの荒井さんが麻婆豆腐つくりに来てくれるっていうんで、それにあわせて今空いている8番にビールをつなぐ予定です。
Brewpub Truthを起点に、コミュニティをつくれたら。
まりも:
先ほど、大塚さんがお店を開くきっかけになったきっかけは「メタル×ビールの相性が抜群だったから」とおっしゃっていましたよね。
最後に、大塚さんが思う「メタル×ビールのおすすめペアリング」を教えてください!
大塚さん:
メタルとクラフトビールって大枠で合うと思うので、自由に楽しんでいただきたいですね!
一時期、クラフトビールを飲みながら想起する音楽をFacebookに投稿していたことがあって。その延長で、 例えば「BGMでメタリカをかけながら、メタリカにあうビールとしてStone IPAを提供する」みたいなことができたら面白いな~とは思いつつ……それって僕の押しつけみたいになっちゃうから(笑)
まりも:
そのアイデア、個人的にはとっても惹かれます!
大塚さんは、ビールも音楽も偏愛っぷりがすごいですが、どれも初心者レベルな人でも来店してOKですか?
大塚さん:
もちろんですよ! ウェルカムです!
クラフトビールに慣れ親しんでいない方にも気軽に来てもらえるような企画ができないかな……と思って、五反田の近隣の店舗でスタンプラリーを始めたんです。「THE GRAFTON」や、「DevilCraft五反田」など、クラフトビールの飲めるお店5店舗をまわってスタンプを集めていただいた方に、このTシャツをプレゼントしています。
まりも:
かっこいい! お店のテーマカラー、ピンクですね!
大塚さん:
千葉の市川にあるおしゃれな自転車屋さんとコラボしたTシャツなんですよ。
まりも:
先ほどからお話を聞いていて思いましたが、大塚さんってお友達が多いですよね。
大塚さん:
何度も転職したり、ビアパブをまわったりしていたから、出会う人が多かったのかもしれません。お店には僕の友達もたくさん来てくれるので、友達同士を繋げる、みたいなことも好きなんですよ。
まりも:
先ほども、奥様への起業プレゼンのお話のなかで「コミュニティへの貢献」というメリットを挙げていらっしゃいました。
大塚さん:
クラフトビールや、この場所を通したコミュニティづくりができたらと思っています。今はまだクラフトビール文脈でのコミュニティですが、いずれはもっとぎゅっとした、五反田界隈でコミュニティづくりをできたらいいなと。僕、自宅もこの辺りですし、昔から五反田が好きなんですよね。
まりも:
このお店に来たら知り合いが増えるかもしれないってことですね!
「自分好みの味」を突き詰めた、オンリーワンの麻婆豆腐
まりも:
そういえば、よなよなスタッフ「べーやん」から、大塚さんは麻婆豆腐の偏愛っぷりもすごいと聞きました。大塚さんの麻婆豆腐はどんな味わいなんですか?
大塚さん:
僕が好きなのは、オーソドックスな唐辛子の辛さ。山椒とか、そういう香辛料を入れれば今どきのビリビリ系の辛味になりますが、舌が痺れてビールの味がしなくなっちゃうので、「辛味」にはこだわっていますね。街の中華屋さんでいう「大辛」レベル、四川料理屋さんの「普通辛」ぐらいって感じです。
……はい、できました、どうぞ!
まりも:
うわ、おいしいーーー! しっかり辛い! ひき肉がゴロゴロしていて食べ応え抜群ですね。ご飯付きで600円ってリーズナブルすぎる!
大塚さん:
麻婆豆腐も、クラフトビール並みにバリエーションのある料理だと思うんですよ。辛くて食えねえ!、みたいな味もあれば、片栗粉でとろっとしていて甘いものとか。奥が深くて面白いですね。
まりも:
麻婆豆腐、絶妙にどこでも食べたことのない味で、このお店ならではですね。
いつかこのお店でつくられるビールも、きっと大塚さんにしか出せない味なんだろうなって、今から楽しみです。
店舗情報
Brewpub Truth
東京都品川区西五反田7-19-4 エクレール五反田103号室
WEB :
http://brewpubtruth.com/
Instagram :
https://www.instagram.com/brewpubtruth/
Facebook :
https://www.facebook.com/Brewpub-Truth-not-brewed-yet-407260130014539/