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担当ブルワーが語る! 醸造系クラフトドリンク「正気のサタン」味わいの全て。

担当ブルワーが語る! 醸造系クラフトドリンク「正気のサタン」味わいの全て。

ヤッホーブルーイング初の低アルコールカテゴリーの製品が発売されました!

その名も「正気のサタン」。アルコール度数0.7%の「醸造系クラフトドリンク」です。
 
クラフトビールと同じ製法でつくったのに、アルコール度数は0.7%。実はアルコール度数1%未満の飲料は「ビール」ではないんです。なので、「醸造系クラフトドリンク」と名付けました。
 
「低アルでおいしいの?」そう思う方もいるかもしれません。
 
そんな方に、お伝えしたい! 「正気のサタン」は、世界五大ビール品評会の一つである「インターナショナル・ビアカップ2021」で金賞を受賞! さらに金賞受賞の銘柄の中からまったく新しい取り組みをしている部門「アザースペシャリティカテゴリー」ではチャンピオンを獲得! 味はお墨付きなのです!
 
この「醸造系クラフトドリンク」をつくったのは、7人の開発メンバー。そのなかから、ブルワー(ビール醸造士)の「なおG」と「またきち」に、「正気じゃない」レシピ開発ストーリーを聞きました。聞き手はビール好きライターの金山靖さんです。

ヤッホーブルーイングのブルワー・又吉(またきち)と加藤(なおG)
またきち:写真左。普段はビールの品質を管理する部署で働く。家ではバーベキューが好きな3児のパパ。
なおG:写真右。普段は醸造設備全般を管轄する部署で働く。家では手の込んだ料理を作るのが得意な1児のパパ。

僕たちがつくりたいものはノンアル・低アルのIPA。

ヤッホーブルーイングの低アルコールドリンク「正気のサタン」
(撮影:田邊剛)

――ヤッホーが低アルをつくるって、すごく意外に思います。

なおG そうですよね。開発メンバーの1人「モーリー(*)」は、「ノンアルコールビールは自分たちを否定するものだからつくらない」ってずっと言ってましたから(笑)

またきち 僕たちはお酒をつくるビール屋なのに、アルコールの含まれないものをつくってどうする!それよりもおいしいビールをつくるのが、僕たちのやるべきことじゃないの?と思っていたそうです。
(*)……ヤッホーブルーイングのベテランブルワー。

なおG でも、クラフトビールの本場・アメリカでノンアル専門の醸造所ができて、ノンアル・低アルが盛り上がってきているというのは知っていたので、僕らもビールという概念をもうちょっと広げてみようっていう話をしたんです。

そこで、まずは飲んでみようと、海外のいろいろなノンアル・低アルを取り寄せたら「これはおいしい!」というものがあって。それがデンマークのビールメーカーが作っているHazy IPAの0.3%のノンアル(*)でした。2人とも、こういう方向性ならアリだよねと意見が一致したんです。そこで、ノンアル・低アルでおいしいクラフトビールみたいなものをつくってみようかと話が進み、いくつか試し始めたのが開発のきっかけです。
 (*)……国にもよりますが、海外では0.5~1%未満は基本的にノンアルと定義されています。

クラフトビールのテイスティングの様子
テイスティングの時の様子

――そのころ、またきちさんはどうしてたんですか?

またきち まだヤッホーに入社してないですね(笑)

なおG そうそう(笑)。最初は僕とモーリーが、興味本位で海外のノンアルを取り寄せたり製法を調べたりしてたんですが、そうするうちに、ノンアル・低アルの開発を本格的にやろう! ということになって。でも、僕らは他の仕事もあって、ちょっと手が回らなくなったんですよね。それで、誰かノンアル専属の担当いないかなって思っていたら、ちょうどまたきちが入社してきたので、これ幸いと、お願いねってぶん投げたんです(笑)

――えっ 入社してすぐ!?

またきち はい(笑)。前職はビールと無関係な仕事だったので、まだビールづくりを勉強しながら現場にいる感じでした。だから、それを聞いたときはマジか!?って思いました(笑)

ヤッホーブルーイングのブルワー・またきち(又吉)
ブルワー(醸造士)・またきち(撮影:田邊剛)

――自由すぎる人事も気になりますが、やっぱり気になるのは味です。今回は、どんな味にしようっていうイメージはあったんですか?

なおG みんなで話していくうちに、IPAをつくりたいよねって、自然と目線が合っていました。今のノンアル市場では王道じゃないけど、僕たちがつくりたいものはIPAだよねって。

またきち 突拍子のないものをつくる気は、あまりなかったですね。ホップのアロマが心地よいものがいいよね、じゃあやっぱりIPAだよね、という感じで話していた気がします。

なおG つくっていくうちに、力を入れなきゃいけないのはホップだけじゃないぞと気づいて青ざめるんですけどね(笑)

膨大なトライアンドエラーから黄金比を見つけ出しました。

ビール醸造設備のコントロールパネル
醸造設備のコントロールパネル。タンクの中のビールの状態を遠隔で確認できる(撮影:田邊剛)

なおG 最初は、試験醸造をとにかくたくさんやったんですよ。今までの製品開発の中で一番多いんじゃないかな。ノンアル・低アルに関するいろいろな情報を集めて、良さそうだと思うものを1個1個試していったんです。試してみて変な味になったら、その方法はやめて次を試して。とにかくトライアンドエラーで、考えられる可能性は全部洗い出していきました。

またきち 通常のビール醸造の業務もやらないといけないので、隙間時間に開発をやっていたんです。なので結構ドタバタでした。

なおG できるだろうと思ってぶん投げたんですが、実際、またきちが推進役として、コツコツとトライアンドエラーをやってくれたから、いい組み合わせが選べたなと思います。本当、またきちは入社して、すぐ忙しかったよね。

またきち でも、そのときは楽しかったですよ。やることがたくさんあるのがうれしいというか。今もう一度やりたいかっていうと、アレですけど(笑)

――いい組み合わせが選べたということは、気に入った味が見つかったということですよね。その瞬間って覚えてます?

なおG 覚えてます。いくつかつくったサンプルに、ホップなどの原材料を足してみて、良い配合を探ろうみたいな日だったんですよ。いろいろ試していたら、「これ良くない?」っていう味が急に出てきたんです。急いで開発メンバーを集めて飲んでもらったら、みんな「いいじゃん!」「これだ!」となりました。

――感動の瞬間じゃないですか! 膨大なトライアンドエラーが報われて、またきちさんも嬉しかったですよね?

またきち 実は僕、その場にいなかったんです(笑)その日の会を主催したのは僕だったんですけど、用事があってちょっとだけ中座していて。戻ってきたら、みんなが拍手で出迎えてくれたので「あれ?」って(笑)

――みんな待ってくれなかったんですね(笑)

なおG その日もトライアンドエラーのつもりでしたから。まさかあのタイミングで完成するとは思ってなくて。

――でも、みんなに拍手で出迎えられてよかったですね。その味ができたとき、なおGさんはどう思いました?

なおG 誰が飲んでもおいしいと思うIPAができたぞっていう気持ちでしたね。今回の開発は「低アルだけどおいしいものをつくろう」ではなくて、「アルコールのない製法でおいしいIPAをつくる」というチャレンジでした。だからあの日「これはIPAだ。アルコールの量に関わらず、この味わいの製品が売ってたら買うよね」、 みたいな話をしたのは覚えてます。
 
――その味を具体的に教えてください!

なおG 柑橘類やトロピカルフルーツを思わせるようなホップの香りと、苦味がしっかりとあって、ボディも軽すぎず、飲みごたえがしっかりあります。最後すっきりとしたキレがあって、一口また一口と杯が進むような味わいに仕上がりました。

――聞いているだけだと普通のビールに思えますが、低アルなんですよね。通常のビールと原材料が違うんですか?

なおG 原材料は一緒ですね。「正気のサタン」だけに使っているものはないです。違うのは原材料の配合ですね。オーツ麦と小麦の比率や麦芽の量などが普通のビールとは全然違います。

ビールづくりに使われるモルトやホップ・オーツ麦などの原材料
「正気のサタン」の原材料。通常のビールをつくる際のものと同じで、違うのは配合の仕方だけ。(撮影:田邊剛)

――オーツ麦と小麦、麦芽についてもう少し詳しく教えていただけますか?

なおG 「正気のサタン」で味の決め手になっているのが麦芽の量です。具体的な量は言えないんですが、麦芽ってアルコールの素になるんですよ。量が多いとアルコールも多くなるんですけど、今回は低アルだから……、そういうことです(笑)

――麦芽が少ないと、味が薄くなったりしませんか?

またきち そうですね。そのためにオーツ麦と小麦を使って、ボディの強さを出したんです。そうすることで水っぽさや、味の薄さを感じることなく、おいしく飲んでいただけるんですよ。

――開発当初「ホップが心地よく香るものにしよう」って話していたからには、ホップもこだわってるんですよね?

またきち 香りだけでなく、ボディを強くするためにも、ホップにはかなりこだわりました。今回は何種類ものホップを使っていますし、ホップを入れるタイミングも通常のビールと違います。

なおG 使う量もかなり多いですよ。「インドの青鬼」の2倍使っています。複数のホップを使っているのでバランスなどもいろいろ試して調整していきました。最後はパッションフルーツのような柑橘系の香りがさわやかでいいねとなったんです。

またきち ホップを入れすぎると苦くなりやすいんですけど、すっきりとした後味にしたかったので、強すぎないさわやかな苦味になるように、いろいろ工夫しました。一応ヤッホーにも企業秘密があるので、詳しく言えなくてすいません(笑)

――まとめると、パッションフルーツのような柑橘系の香りがあって、飲むと、麦の風味がしっかり味わえて飲みごたえがあり、苦味がさわやかで、すっきりとした後味になる。これが「正気のサタン」の味ってことですね!

なおG そこは実際に飲んで確かめてほしいですね。

「正気のサタン」の仕込み中にホップを投下する様子
「正気のサタン」の味わいをつくるため、大量のホップを投入する様子

――そういえば、「正気のサタン」はクラフトビールと同じ製法でつくっているんですよね。話を聞いていると、素材も使う量も入れるタイミングも特殊に感じます。本当に「よなよなエール」などと同じ製法なんですか?

なおG 大きく言うと同じなんですが、細かいところは全然違います。例えば、ステーキを焼くときは肉と塩コショウで味付けしますよね。でも、肉の部位、塩の量、コショウを入れるタイミング、焼き方が全部違うという感じです。

またきち 全部違うといっても、ビールのつくり方から外れることはしていないんですよ。自然にに発酵させているし、脱アル(ビールからアルコールを除去する工程)をしている訳でもない。だから、「よなよなエール」といったクラフトビールの製法の延長線上にあるというのが正確かな。

なおG ただ、「正気のサタン」のつくり方で普通のビールをつくったら、確実においしくないビールが出来上がります。

――じゃあ「正気のサタン」は、これまでのクラフトビールでは非常識なつくり方をしてるってことですか? どうやってそこにたどりついたんですか?

なおG 最初のトライアンドエラーをするときに、ビールづくりのセオリーをもう一回見直しました。その上で、セオリーの逆をいくみたいなことをやりましたね。例えば普通のクラフトビールのセオリーならここでアルコールができるけど、そこで逆のことをしたらアルコールができないんじゃないか、とか。

またきち それで考えられることを全部やっていったら、黄金比を見つけたみたいな感じです。

――なるほど~。それにしても、聞けば聞くほど、黄金比が見つかった瞬間にまたきちさんもいてほしかったです!(笑)

ポテチでもOK!  いろいろなペアリングが楽しめる!

ヤッホーブルーイングのブルワー・なおG(加藤)
ブルワー(醸造士)・なおG

――ヤッホーのクラフトビールは食事と一緒に楽しめるのも良いところのひとつですよね。お二人は、「正気のサタン」をどんな料理と味わってもらいたいですか? 

なおG みんなで話していたのはピザですね。個人的には、比較的さっぱりめ、軽めな感じの料理がより合うと思います。チーズやシーフードのピザが相性いいんじゃないかな。

またきち セビーチェが合うと思いますけど、肩ひじ張らずに気軽に飲んでほしいと思っているので、ポテチでもいいと思います。

なおG 気合を入れてつくった料理より、おつまみやお惣菜みたいな感じがいいかもしれません。ハンバーガーにも合うと思いますし、青空の下でハンバーガーと「正気のサタン」を合わせたら気持ちいいでしょうね。

――たしかに! ハンバーガーと「正気のサタン」って合いそうです!

またきち 料理をつくりながら飲むのも全然ありだと思います。これって低アルの醍醐味のひとつですよね。

なおG すっきりしたIPAと考えると、重たい料理でも、流しこんで口をすっきりさせるような感じで飲めると思います。なんだかこれ、どんな料理にも合うみたいになっちゃいましたね(笑)

正気のサタンと、それにあう食事がある食卓
「よなよなの里」では、料理家の今井真実さんに教えてもらった 「正気のサタン」にあうレシピ も掲載中です。

新しいライフスタイルにハマる、新しいリラックス体験として広まってほしい

ヤッホーブルーイングのブルワー・またきちとなおG

――会社として今までにないチャレンジだった「正気のサタン」ですが、今後どうなっていってほしいですか?

なおG いっぱい売れてほしい……、それは置いといて(笑)、低アルってビールの代替品っていうイメージが強いですけど、「正気のサタン」は酔わないけれど心地よくなるための選択肢として、手にとってもらえるようになったらうれしいです。

またきち 家飲みをするとき、今までは飲めないからお茶やジュースで乾杯していた人も、お酒を飲む人と同じ気分で楽しめるようなパッケージになっているので、飲めない人たちでもお酒の場がもっと楽しくなるものとして、選んでもらえたらと思います。

――お酒が強くない人にとって、おいしい低アルはありがたいですよね。

なおG お酒好きの人でも、例えば仕事帰りのコンビニとかで、今日は5%のビールにしようか、7%のビールにしようかと考えるとき、0.7%の「正気のサタン」も選択肢に入れてもらって、ビールのひとつとして楽しんでもらえたらうれしいですね。

またきち アルコールって楽しくなるけど、飲むと眠くなったりパフォーマンスが落ちたりするときがありますよね。でも、「正気のサタン」は、そういうネガティブなところが出づらくて、安心して飲めるものだと思います。特に今は、子育て世代とか共働き家庭とか、飲みたいけれど飲めない忙しい毎日を送ってる人が多いです。そういった新しいライフスタイルにハマる新しいリラックス体験として広まってほしいですね。

終わりに

「正気のサタン」はヤッホーが初めてつくった低アル。開発メンバーは前例がないなか、正気じゃない情熱でこのレシピをつくりあげました。しかし、情熱を注いだのは味だけじゃありません。コンセプト、ネーミング、デザイン、売り方などを担当したチームもすごいんです!

特設サイトでは、完成に至るまでの軌跡を24955文字にわたる超ロングインタビューで公開しています! こちらもぜひ合わせてご覧ください。

「正気のサタン」特設サイトはこちら

執筆:金山靖
写真:田邊剛
編集:Rhino inc.