焚き火の達人に聞いた、焚き火(とクラフトビール)を楽しむための7つのコツ
(この記事は2019年2月に取材・公開した記事を、2023年5月に再編集したものです)
こんばんは、よなよなエールのメーカー・ヤッホーブルーイングのいっくんです。
「屋外でクラフトビールを楽しむ趣味人を増やす」を目的に活動(連載)している、「よなよなアウトドア部」。第二回目である今回のテーマは「焚き火」です。
「焚き火ってなんだか大変そう……」という初心者の方はもちろん、「焚き火を眺めながらだったらいつまででも飲めるぞ」という焚き火好きの方にも楽しんでいただけるように、意外と知らない焚火の楽しみ方やテクニックを、その道の達人から聞いてきました! ぜひ最後までご覧くださいませ。
話を聞いた人:寒川一さん
アウトドアライフアドバイザー。三浦半島を拠点に「焚火カフェ」やバックカントリーツアー、防災キャンプなどを通じてアウトドアの魅力を広めている。 UPI OUTDOOR PRODUCTS のアドバイザーとしても活動。
スウェーデンのアウトドアカルチャーに詳しく、フェールラーベンやレンメルコーヒーのアドバイザーも務める。著書に 『アウトドアテクニック図鑑 』(池田書店) や 『焚き火の作法』(学研プラス) がある。アウトドア歴40年、年間百数十回の焚火を行う焚火のプロフェッショナル。
※気さくな方で、よなよなエールを飲みながら焚き火のイロハを教えていただきました。
焚き火に必要な道具を揃えよう!
いっくん:
今日は焚き火の楽しみ方について教えてください!
早速ですが、焚き火に必要な道具ってどんなものがありますか?
寒川さん:
そうですね、やっぱりまず必要になるのは焚火台。次にマッチなどの火種と、焚き付け(最初に火をつける小枝や小さい薪など)、そして薪です。
ワンポイントメモ……『焚火台』
薪を上に乗せて燃やすための台、それが「焚火台」です。地面の上に薪を組んでその場で火を起こすのを「直火」と言ったりしますが、基本的に直火での焚火は多くのキャンプ場で禁止されています(地面が熱されることで地表の植物や微生物にダメージを与える他、燃え残った炭は自然分解されないためにその場に残り続けてしまうから)。
そのため、地面から一定の距離をとって火をおこせる「焚火台」が、焚火を楽しむ際には必須の道具なのです!
いっくんはユニフレーム社の焚き火台
「ファイアグリル」
を愛用中です。
いっくん:
初心者の方でも扱いやすい焚火台というと、どんなのがいいのでしょうか?
寒川さん:
そうですね、最近は様々なタイプの焚火台がありますが…燃やしやすい、火のコントロールがしやすいという観点で言えば、
スノーピークの焚火台
や、
モノラルのワイヤフレーム
などが良いでしょうね。焚火台以外は比較的手に入りやすいものばかりなので、焚火台が手元にあればすぐにでも焚火を始められますよ。
今回使うのはこちらの焚き火台。「砂浜専用の設計なんです」と寒川さん。
寒川さんの焚火道具たち。どれも一朝一夕では出せない「味」が出ていますね。イイ……
焚火のコツ①まずは「焚火台」を手に入れよう。
火をおこすその前に。
焚火をするなら「風」を読め!
寒川さん:
火をつける前に……焚火をするときにはまず風の方向を読むことが大切なんです。炎や煙がどっちの方向に流れていくかは、どの位置から火をつけるか、どこにチェアやテーブルを置くかということにも影響します。
いっくん:
確かに! めっちゃ煙くてつらかったキャンプがありました…
寒川さん:
キャンプでは焚火を中心にレイアウトをすることが多いので、風向きを観察・予測して焚き火位置を決めるのが大事なんです。
焚火のコツ②焚火台を置くときは、風の方向を気にしながら!
火をおこすまでの準備:バトニング
今回使う薪。形の整ったものはわずかで、あとは現地調達した流木がメイン。薪は現地で手に入れられるものを使うというのが寒川さん流。
寒川さん:
それでは早速、焚火を始めましょう!最初に「バトニング」をやってみましょうか。
いっくん:
バトニング?
寒川さん:
いきなりサイズの大きい薪に火をつけようとしても火が付かないので、そういった薪は細くカットする必要があるんです。その際に木などを使ってナイフや斧の背を叩く行為のことを「バトニング」といいます。簡単だし、面白いですよ!
寒川さん:
最初は薪の上の割りたい場所にナイフの根元を当てて……
寒川さん:
こんな風に、バトンでナイフの先の部分を叩いて割っていきます。一気にガン!と行かずに、コン、コンと少しずつ刃を入れていきましょう。こうして細かくなった薪が、焚き付けになります。
バトニングをして細く割った薪(左)と、割る前の薪(右)。細くすることで火が付きやすくなる。
寒川さん:
焚き付けには燃えやすい針葉樹の薪を使った方が良いですね。針葉樹は密度が低いので、よく火が付きます。逆に広葉樹の薪は密度が高いので炎がある程度大きくなってきてから投下するのが良いですね。
※慣れていないうちは、ナイフが滑って大腿にあたると危険なので、体の外側に薪を持ってきてからバトニングを行うのがおすすめです。
寒川さん:
初心者の方だと、大きい薪にいきなり火をつけようとしたりしてしまうんですが、そうするとなかなか火はつきません。着火前のこういう作業がその後に効いてきます。
焚火のコツ③大きい薪にいきなり火をつけようとしない!焚き付けになる薪を作ろう。
火をおこすまでの準備:フェザースティック作り
寒川さん:
それでは次に、バトニングして細かくなった薪の表面の皮を削って「フェザースティック」というものを作っていきます。
いっくん:
なんだかファンシーな名前ですね。
寒川さん:
見た目が鳥の羽(フェザー)のようにフワフワしているので、そういう名前なんですよ。刃が薄く当たるようにして、薪の表面を削っていきます。
寒川さん:
こう、シュッシュッとテンポよく、削った皮を落とさないように……
寒川さん:
これくらいまで削ったら頃合いですかね。
いっくん:
おおー、凄い!!! あっという間だ!
寒川さん:
こうするとより燃えやすくなるんです。それにこうやって無心で木を削っていく時間ってなんだかすごく贅沢な感じがして。とっても好きなんです。
いっくん:
この後に焚き火を見ながら飲むビールのことを考えると、こういう準備の時間も楽しめそうですよね……僕もチャレンジしてみます!
いっくん:
うわー全然できない!そんなに長く削れないし、ポロポロ落ちちゃう……
寒川さん:
「フェザースティック作り」単体で講座が開かれるようなモノですからね。初めての方だとなかなか難しいかな……でも、やっていくうちにどんどんできるようになりますよ!
寒川さんのフェザースティック。美しい……
焚火のコツ④フェザースティック作りは、焚火までの時間が楽しくなる大人のアクティビティ!チャレンジしてみるのがおススメ。
火をおこすまでの準備:火種の準備~点火!
寒川さん:
それじゃあいよいよ火種の準備をしましょう。
いっくん:
僕は普段着火剤などに頼っているので、今回はそれに頼らず火を熾してみたいです!
寒川さん:
お、良いですね。今日は自然のモノだけ持ってきましたよ。
今回使う火種。左からシラカバの樹皮・スギの葉・松ぼっくり。
寒川さん:
松ぼっくりは本当に優秀な着火剤です。道で見かけたらいつも拾ってストックしてますね。スギの葉っぱもよく火種に使います。シラカバの樹皮はなかなか手に入らないかもしれませんが、油分を多く含んでいるのでよく燃えるんですよ。
いっくん:
ゴールデンカムイの世界観……! 火は何で付けますか?
寒川さん:
マッチやチャッカマンでも良いんですが、味気ないので今回はメタルマッチを使って火をつけてみましょう!
ワンポイントメモ……『メタルマッチ』
簡単にまとめると、アウトドアで使用できる火打ち石。濡れていても使える。外で火をおこすときの強い味方。男のロマン溢れるギア(いっくん感覚値)。
寒川さん:
こんな感じで、メタルマッチの根本にナイフ※の背を付けて……
シュッ!
寒川さん:
ナイフの背を使ってメタルマッチを削りだすイメージで、シュッと下ろすと火花が散ります。この火花を、うまく火種に乗せられると点火しますよ。
※…どのナイフでも着火できるわけではないのでお気を付けください。撮影時には
「MORAKNIV ELDRIS (S) / モーラナイフ エルドリス (S)」
を使用しています。
いっくん:
これ(メタルマッチ)で火をつけると、よりアウトドア感が増して気分が盛り上がりますね……!
焚火のコツ⑤メタルマッチの火付けは盛り上がること間違いなし!是非チャレンジを!
炎を育てよう
火が付いたら、その勢いを落とさないように炎を育てていきます。
先ほどバトニングして細かくした薪を、手早く炎の上にくべていきます。
あんまり乗せすぎると空気の通る道がなくなってしまうので、適度に隙間を作るのがおすすめとのこと。
火がある程度安定してきたところで、寒川さんが新しい道具を取り出しました。
そう! 火吹き棒です!!
ワンポイントメモ…『火吹き棒』
火の付き始めに空気を送ることで、燃焼を促進するアイテム。団扇などと違って灰が舞い上がりづらい、火から離れた場所で火をコントロールできるため暑くない……など焚火をする時にかなり役立つ。男のロマン溢れるギア(いっくん感覚値)その2。
寒川さん:
こんな感じで、火元の中心に空気を送り込んで、炎を育てていきましょう。いっくん、やってみてください。
いっくん:
はい! フウーーーーー(息を送る) スウーーーーーー(息を吸う)
ウオェッ!!!
空気を送り込むはずが、誤ってガッツリ吸い込んでしまいメチャクチャにむせました。皆さんもお気を付けください。
火の中心へ空気を送りこんでいくと、「ゴォー、ゴォー」と音を立てながら火が元気になっていきます。今まで火吹き棒を使ったことがなかったのですが、実際に体験するとその効果に驚きました!
寒川さん:
ある程度火が大きくなったらOKです! 後は様子を見ながら調整していきましょう。
一旦石を降ろし、焚火台の周りに太目の薪を置いていきます。こうすることで薪の湿気が飛んで、燃えやすくなるそう。
数分後……
かなーり大きく育ちました! いい感じだー!
焚火の時って何着たらいいの?
火の動向を見守りつつ、寒川さんに気になっていたことを聞いてみました。
いっくん:
寒川さん、焚火の時ってどんな服装をしているのが良いんでしょう?飛び火で服に穴が開いたり、煙臭くなったり……とお悩みの人も多いのかなと思いまして。
寒川さん:
そうですね、まずはやっぱりコットン製のウェアが良いと思いますよ。化繊のものと比べて燃えにくいですし。逆にボア素材のものやダウンジャケットなんかは、着ない方がいいのかなと。
いっくん:
コットン素材の服か……なるほどです!洗濯も出来るし、良いですね。
寒川さん:
はい。あと自分や、自分の周りの人は「焚火の時に着る服」を決めちゃってますね。
いっくん:
ほー!
寒川さん:
ある程度決めておいた方がもし何かあっても「これ焚火用だからな~」と、良い意味で割り切れますし(笑)便利なんです。
焚火のコツ⑥「焚火用の服」を決めておくとトラブルが減る!
ちなみにこの日私は思いっきりダウンジャケット(火の粉で穴が開きやすい)を着ていたので、
「焚火ポンチョ」というアイテムを貸してもらいました。火の粉による衣服の穴あきや、煙のにおいもある程度ガードしてくれる優れもの。こういうのが1枚あっても良いですね。
クラフトビールを飲みながら、焚火を囲もう
と、いうわけで火を無事におこすことが出来ました!
これからは焚火を囲みながら、寒川さんに色々なお話を伺っていこうと思います。
でも、その前に…
乾杯!
いっくん:
今日はありがとうございました! 参考になるお話をたくさん伺えて……次回のキャンプが楽しみです!
寒川さん:
いえいえ、こちらこそありがとうございます。お話も出来たし「よなよなエール」もいただけて……(笑)元々は家族が好きでよく飲んでいて、それで自分も飲むようになったビールなんです。
なんというか、ゴクゴクという味わい方じゃなくて、一口一口をしっかり味わえる楽しみ方ができるのが気に入ってます。
いっくん:
確かに、時間をかけて飲みたいビールですよね。そういうところが、じっくり火と向き合いながら時間を過ごす焚火と相性が良さそうだな……と思って、今回は「よなよなエール」をお持ちしたんです。
寒川さん:
そうですね。いつもは自宅で飲んでましたが、こういうシーンで飲むのも良いなあ。
お話しながら、適度に火の管理もします。トライポッド(焚火調理の時などに使用する、アウトドア用の三脚)も設置し、そこにやかんを吊ってお湯を沸かしつつ…
専用の容器にリンゴを入れて火にくべます。焼きリンゴを作るのです!
焚き火ビール・最高のおとも、焼きリンゴ
いっくん:
「一般的なビールよりもコクがあったり、フルーティーな香りがあるのが特徴の「よなよなエール」に合わせて、焚き火で何か一品を……」という無理なお願いに応えていただき、ありがとうございます!
寒川さん:
いえいえ、焼きリンゴはよくつくるメニューの一つなので全然です。それに、よなよなエールとの相性も良いだろうなあって前から思っていたんですよ。
焼き上がり
いっくん:
うわあ……! めちゃくちゃおいしそうです。リンゴだけじゃなくて何か入ってるんですね?
寒川さん:
リンゴの芯を抜いて、そこにラムレーズンとシナモンスティックを入れて焼いてるんです。これがおいしいんですよ。
早速いただきます!
いっくん:
確かに……! リンゴの甘みがよなよなエールのコクとピッタリですし、レーズンとシナモンの香りがよなよなエールの香りを引き立ててくれている……! これ、最高のペアリングですね。
寒川さん:
ありがとうございます(笑) 焚き火のそばに置いておけば保温もできますし、ちびちび飲みながら食べるのもおすすめなんですよ。
いっくん:
よなよなエールって飲み頃温度が「ちょっとぬるめの13℃」なので、ちびちび飲むのにちょうどいいんです。焚き火を見ながらゆっくり飲むだけでも最高なのに、こういうおつまみがあるともう至福ですね。今度キャンプ行くときに絶対真似します!
寒川さん:
飲み頃温度の話は知らなかったな……! 今度僕もゆっくり飲んでみます。よなよなエール。
いっくん:
今日はありがとうございましたー!
焚き火のコツ⑦ちびちび飲んでつまめるお酒と料理があると、焚き火はもっと楽しい。
焚き火とクラフトビール、これぞ最強コンビ
焚き火とビールを飲みながらおしゃべりをする。それだけで、めちゃくちゃ贅沢な時間を過ごせるなあ……と改めて感じた取材でした。焚き火もビールも、人と人の和を醸すコミュニケーションツールのよう。きっと昔から人はこうやって火を囲みながら飲んでたのでしょうね。
そしてもう一つ実感したのは、焚き火と「クラフトビール」の相性の良さです。一般的なビールに比べると「よなよなエール」などのクラフトビールは「ぬるくなってもおいしく楽しめる」ものが多いので、火を囲んで喋りながらちびちび飲むのにぴったりなのです。今度焚き火をするときにはぜひ、クラフトビールと一緒に楽しんでみてくださいね。
それでは最後に、焚き火の達人・寒川さんに教えていただいた「焚き火のコツ」をまとめてご紹介します。
焚き火のコツ①まずは「焚火台」を手に入れよう。
焚き火のコツ②焚火台を置くときは、風の方向を気にしながら!
焚き火のコツ③大きい薪にいきなり火をつけようとしない!焚き付けになる薪を作ろう。
焚き火のコツ④フェザースティック作りは、焚火までの時間が楽しくなる大人のアクティビティ!チャレンジしてみるのがおススメ。
焚き火のコツ⑤メタルマッチの火付けは盛り上がること間違いなし。是非チャレンジを!
焚き火のコツ⑥「焚火用の服」を決めておくとトラブルが減る!
焚き火のコツ⑦ちびちび飲んでつまめるお酒と料理があると、焚き火はもっと楽しい。
最近は市街地などでも焚き火を楽しむことができる施設があるようなので、まだ焚き火をしたことがない……という方は、ぜひこの機会にチャレンジしてみてくださいね。バリバリ焚き火・キャンプをやっているよ、という方には、きっといつかどこかのキャンプ場でお会いすると思います。その時はぜひ、乾杯させてください。
よなよなアウトドア部、第2回はこれにて終了です。次回もお楽しみに!
(おわり)