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5年間絶えず育て続けている「自家製酵母」でつくるパンはうま味全開だった!【軽井沢の「一歩ベーカリー」のパン職人に取材】

5年間絶えず育て続けている「自家製酵母」でつくるパンはうま味全開だった!【軽井沢の「一歩ベーカリー」のパン職人に取材】

こんばんは、よなよなスタッフのおっくーです。

10月は「おいしいものは、だいたい菌でできている。」をテーマに、菌を使った食べ物にスポットを当てて記事を出してきました。

「納豆菌」や「麹菌」など、おいしい食べ物を作る菌はたくさんありますが、私たちビールメーカーにとって一番身近な菌は「酵母」です。酵母は、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する、「アルコール発酵」をおこなう微生物。実は、植物や野菜、果物の表面、空気中など、自然界のあらゆるところに生息しているんです。

ところで、酵母を使った食品ときいてすぐに思い浮かぶ代表格は……「パン」ではないでしょうか?とくに最近は、「自家製酵母パン」なるものを目にする機会が増えました。

「ん?自家製酵母?それっていわゆる『酵母』と何が違うんだろう…?」
「自家製酵母をパンに使ったパンの方がおいしいのかな……?」

今回はそんな疑問を解消すべく、軽井沢にある自家製酵母をつかったパン屋「一歩ベーカリー」のパン職人・小山粒一さんに、天然酵母についてお話を伺いました。

一歩ベーカリー
軽井沢追分宿に佇む国内の安心・安全の素材と自家製酵母を使用したベーカリー。自家栽培のライ麦を使用した「ライ麦100%パン」や「ライ麦カンパーニュ」など、ドイツ系のパンに定評あり。造形美術家のオーナー・青野さんが自ら手掛けた、こだわりのインテリアに囲まれた店内でランチを楽しむこともできる。

※今回のインタビューは長野県小諸市にある、一歩ベーカリーさんの工房で実施しました。

「自家製酵母」と「イースト」。ちがいは?

おっくー:
小山さん、こんにちは。一歩さんのパンは、素材の味をダイレクトに感じられて、体にいいもの食べてるなーという気持ちになるんですよね。あとなんといっても、口いっぱいに広がるうま味・うま味・うま味……! あれはやみつきになっちゃいます。

小山さん:
ありがとうございます。素材本来のうま味を引き出せるように、不要なものを入れず、無添加にこだわっているんです。パン作りに必要な基本の材料のみを使用しています。「粉」「水」「塩」、そして「自家製酵母」。

一歩ベーカリー・パン職人:小山粒一さん。ギターの講師だったが、パン好きが高じて、8年前から一歩ベーカリーで働きはじめる。現在一歩ベーカリーで販売されているすべてのパンの製造を担当するパン職人。好きなパンは「ライ麦カンパーニュ」と「全粒粉バゲット」​​​​。

おっくー:
でた、「自家製酵母」! 私ずっと気になっているんです。スーパーなどで売っているパン作り用の「イースト(酵母)」と、自家製酵母ってどちらも同じ「酵母」ですよね?なにか違いがあるんですか?

小山さん:
良い質問ですね。パン作りに使う酵母って、もともとは自然界に存在する天然の酵母菌なんですよ。酵母菌は人工では作れませんから。「イースト」という名前で販売されているものは、天然の酵母の中からパン作りに適した強い発酵力を持つ酵母のみを集めて人工的に純粋培養されたものなんです。

おっくー:
パン作りに特化した選ばれしエリート酵母がイースト……。

小山さん:
一方で、私達が「自家製酵母」と呼んでいるものは、フルーツや穀物などに自然に付着している酵母を水につけておこし、増殖させた培養液のことを指します。ちなみこの培養液には、乳酸菌や酢酸菌など、酵母以外の菌も共生していて、これら有用菌のおかげでイーストだけでは出せない複雑な味わいがつくれるんですよ。

おっくー:
うーむ、なるほど。小山さん、ぶっちゃけ、どっちを使った方がおいしいパンができるんですか?

小山さん:
どっちのほうが良いという訳ではなく、それぞれに良さがあるんですよ。イーストは発酵力が強く安定しているので、短時間で同じ品質のパンをつくることができるんです。一方、自家製酵母は、発酵力も弱く不安定なため、パン作りにとても時間がかかります。でもゆっくり熟成することで、うまみ成分が増え、奥深い味わいが生まれるのです。

まるでぬか床!5年間絶えず育て続けている自家製酵母

おっくー:
先ほど、自家製酵母はフルーツや穀物などの素材を水に漬けて培養したものだとおっしゃっていましたが、一歩さんではどういう素材で培養しているんですか?

小山さん:
うちは、レーズンや玄米、ライ麦から酵母をおこしています。ちなみに培養液をそのまま使うのではなくて、培養液に小麦粉や水、塩を混ぜた「元種(モトダネ)」を作り、それを生地にまぜてパンを作っています。見た目は、ちょっとゆるめの粘土を想像してもらえればいいかもしれませんね。

おっくー:
なんでわざわざ元種を作るんですか? ストレートに培養液を使った方が簡単そうだと思ったんですが……。

小山さん:
培養液だけでもパン作りはできるんですが、元種を作った方が、酵母を安定的に増やせるんです。こうしてできた元種の発酵力を維持するために、定期的に粉・水・塩を足す作業のことを「種つぎ」と呼びます。粉は、いわば酵母のエサだと思っていただければ分かりやすいかと。種つぎを繰り返すことで、種をずっと使い続けることができるんです。ぬか床のようなイメージですかね。

一歩ベーカリーさんの自家製天然酵母。写真左が種つぎした酵母、右は新しく起こした酵母。

おっくー:
一歩さんの酵母は何年くらい種つぎをしているんですか?

小山さん:
今使っている酵母は4~5年くらいになるのかなぁ。

おっくー:
5年も!?すごい……!

小山さん:
今使っている酵母はあるときから元気になって、とても状態が良いんですよね。言葉にはうまくできないんですけど、感覚的によくなってきたなーって。

おっくー:
長年酵母に向き合ってきた小山さんだからこそ、酵母の変化を見抜くことができるんでしょうね。でも、この種つぎという作業、常に酵母の状態を維持しないといけないんですよね?大変なことが多そう……。

小山さん:
大変なことが多すぎて忘れるようにしています(笑)

おっくー:
Oh……(笑)

小山さん:
と、いうのは冗談で(笑)。酵母の状態を維持するのは大変ですが、私にとっては「ペットを飼う」のと同じような感覚なんです。一番気を付けていることは、ルーティンを守ること。酵母がすくすく育つように、365日いつでも同じ環境を保ってあげるのが大事なんです。例えば、発酵温度に変化がないか、種つぎの頻度は適正か、さらには冷蔵庫の中の保管位置が変わっていないかということまで。チェックしてあげないといけないポイントは、本当に沢山あるんですよ。

おっくー:
酵母は生き物ですもんね。小山さんがきっちり育てるからこそ、おいしいパン作りに欠かせない酵母ができあがるんですね!

「ライ麦100%パン」は、職人と酵母の共同作業のたまもの

おっくー:
小山さんが試行錯誤しながら焼いた自家製酵母パンは、どれも奥深い味わいを楽しめます。一歩さんのパンってとてもバラエティ豊かですよね。以前店舗を訪ねた際、常時20~30種類くらいのパンがあると伺いました。職人さんは何名くらいいらっしゃるんですか?

小山さん:
ああ、基本的には僕一人でつくっていますよ!

おっくー:
酵母の管理だけでも大変そうなのに、あの量をおひとりで!?

小山さん:
材料の仕入れや酵母の管理などの準備をはじめ、パン作りやその梱包に至るまで全ての工程をやっています。夜明けとともに作業を開始していますね。

おっくー:
なるほど……。それだけの作業をほぼおひとりでこなすとなるとかなりハードなのでは。とくに小山さんが作るときに大変だと感じるパンはありますか?

小山さん:
うーーーん、どれも大変なのですが……。強いて言えば、「ライ麦パン」ですかね。

おっくー:
ライ麦パンといったら、お店の看板商品ですね。

ライ麦100%パン。しっとりとしていて、独特の酸味を楽しめます。おっくーはそのおいしさに思わず声が出ました。

小山さん:
ライ麦パンは、型に入れて低温で蒸し焼きにしてつくっています。その工程自体は比較的簡単なのですが、準備にすごく時間がかかるんですね。うちは、食感が楽しめるように、自家栽培してるライ麦のタネを生地にも使用しています。そのタネをパン作りに使えるようにするまでがとにかく大変でして。収穫から始まり、タネ取りや異物除去の作業を経て、その後洗浄して、茹でて……。この細かい作業に時間がかかるんです。

おっくー:
へー!自家栽培のライ麦ですか!

小山さん:
そうそう。この工房のすぐ横で育てていますよ。また、実際にパンをつくる時には、焼いたパンを砕いてパン粉にしたものをライ麦粉に混ぜて味わいに深みを出す工夫もしていて、その分手間もかかっていますね。

工房「ジオ・パラダイス」のすぐ隣にライ麦畑が!

おっくー:
なるほど。あの素朴で力強い味わいのライ麦パンは一歩ベーカリーさんのこだわりが詰まっているんですね。

小山さん:
ライ麦パンって独特の酸味が特徴的なんですよね。ただ、日本人は酸味のあるいパンに馴染みがない方が多いので、微妙な味わいの調整が難しかったりもしますね。

おっくー:
たしかに……!一歩ベーカリーさんのライ麦パンはやさしい酸味で、日常的にライ麦パンを食べる習慣がない私にとっても食べやすいです。でもなんで酸味がでるんですか?

小山さん:
これも自家製酵母の影響ですね。ライ麦パンはライ麦粉から酵母を起こし、元種をつくります。その過程で、ライ麦に付着した乳酸菌や酢酸菌などが酸味のもととなる有機酸(乳酸・酢酸など)をつくりだしているんです。

おっくー:
へー!ライ麦パンで酸味を感じられるのは、酵母以外の菌が共生している自家製酵母でパンを作っているからなんですね。初めて知りました。今回は色々と興味深い話をありがとうございました。

おわりに

ちゃんと愛情込めて育てることで、すくすく育ち、おいしいパンを作ってくれる酵母。今回の取材を通して、改めて尊い生き物だなと感じました。これからパンを食べたり、ビールを飲むときに、ちょっとだけ酵母のことを思い出して心の中で感謝したいな~。最後に、おまけとして一歩さんベーカリーさん直伝!パンとビールにあうディップソースレシピや、ビール×パンのペアリングや、をご紹介しています。よかったら試してみてくださいね。

一歩ベーカリー直伝!ライ麦100%パンを最高に楽しむためのディップソースレシピをご紹介

今回、記事の中でご紹介した「ライ麦100%パン」。そのまま食べてももちろんおいしいのですが、オリジナルのディップソースをのせることで、よなよなエールと相性抜群になるんです。ここでは、一歩ベーカリーさん直伝!おすすめの2種類のディップソースのレシピをご紹介します。

甘みのあるネギペースト

【材料】
・ネギの白い部分:1本
・お好みの食用油:50g
・塩:小さじ2

【作り方】
①3〜4cmにカットしたネギをトースターで約10〜15分、少し焼き色がつく程度まで加熱。(油を少量ひいたフライパンでも可)
②①と食用油、塩をミキサーにいれ、ペースト状にしたら完成!
※こせばなめらかになりますが、ネギの繊維が残っている状態も食感が楽しめ美味しく食べられます。

シンプルなバジルソースレシピ

【材料】
・バジル:20g
・お好みの食用油:12g
・塩:少々

【作り方】
①バジル、油、塩をボウル等の容器に入れ、ハンドブレンダーかミキサーでペースト状にしたら完成!
※お好みで、レモンやすだちなど柑橘類の果汁や、くるみやアーモンド、松の実などのナッツ類を入れて楽しむのもオススメです。

「一歩ベーカリーのパン」×「よなよなの里のビール」ペアリングをご紹介

どちらの原料にも、「酵母」と「麦」が使用されていることから、意外にもビールとパンは相性抜群なのです。今回は、お休みの日のランチタイムにおすすめな、一歩ベーカリーのパンとよなよなの里のビールのペアリングをご紹介!ここで登場するパンは、一歩ベーカリー公式オンラインショップでお買い求めいただけます。気になるものがあればぜひお試しください!

①あんぱん×インドの青鬼

五穀のたっぷり入った甘めの生地と甘さ控えめの粒あんが特徴的な「あんぱん」。このパンに合わせたいのは、「インドの青鬼」です。あんぱんを一口頬張って、ビールを流し込むと、パンのやさしい甘味としっかりとしたコク、そしてビールの苦味のバランスがとれ、味わいに一体感が生まれます。ちょっと不思議なペアリングをぜひご賞味あれ。

②ライススコーン×東京ブラック

ライ麦粉をつかった「ライスコーン」にあわせたいのは、「東京ブラック」。スコーンの香ばしさに東京ブラックのモルト由来のコクが調和して、奥深い味わいを楽しむことができます。自信を持っておすすめするこちらの組み合わせ。大人のおやつタイムにぴったりですよ。

店舗情報

長野県北佐久郡軽井沢町大字追分578
営業時間:10:00〜17:00頃
定休日:水曜日・木曜日
(定休日前の火曜日はお食事のご予約がある場合のみの営業となります)
TEL / FAX:0267-41-6511

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「一歩ベーカリー」公式Instagramは こちら

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