
アロママシマシのビールに欠かせない「ドライホップ」とは?ブルワーが解説!

みなさんこんばんは、がみたです。 好きな実験器具はエッペンドルフチューブ! ゆるーく醸造所の日常をお届けする「醸造所日誌」。 今回は、発酵中のビールにホップを投入する「ドライホップ」の様子をお届けします!
ドライホップって何?

発酵中のビールにホップを添加し、香りづけをする手法を「ドライホップ」と言います。
ビールをつくるときは通常、麦汁を煮沸するタイミングでホップを投入しますが、ホップに熱を加えると苦味成分が抽出されると同時に、香り成分は飛んでしまいます。
発酵中のタンク(約20℃)に直接投入するため、ホップに熱が加えられない「ドライホップ」は、ホップの“香り”だけを強くビールにつけたい場合、非常に効果的なのです。

右側のホップは収穫後、乾燥させてからペレット状に固めた「ペレットホップ」です。
「ペレットホップ」はコンパクトで輸送や保管がしやすく長期保存にも向いているため、現在のビールづくりの主流となっている加工方法です。
ヤッホーブルーイングのドライホップでも、この「ペレットホップ」を主に使用しています。
出撃!ホップキャノン!

ビールにホップを投入する方法は醸造所によってさまざまです。
小さなタンクの場合はタンクの蓋を開けて直接ビールにホップを投下したり、2次発酵に入る際にタンクを変える場合は先に移送先のタンクにホップを投入しておき、そこにビールを移送することで混ぜ合わせたり・・・。
ヤッホーブルーイングのコニカルタンクでは、1次発酵から2次発酵までを1つのタンクでおこなっており、2次発酵に移行する際にはビールに炭酸を溶け込ませるための圧力がかけられます。
圧力のかかったタンクの蓋を開けようとすると、その圧力により中に入っているビールがすべて外に噴出されてしまうため(危ない!)、ビールが入っているタンクの蓋を開けることはご法度。

そこで登場するのが、この「ホップキャノン」です!
タンクの蓋を開けることなく安全にホップを添加できる、日本にたった1台の特別な装置。
まるで潜水艦みたいですよね。メカメカしい!
どうやって使うの?

ホップキャノンの仕組みは、上の図のとおりです。
あらかじめホップを入れたホップキャノンの中に圧力を利用してビールを引き込み、ホップとビールをかき混ぜてから、もとのタンクに戻します。
圧力をかけて一気にタンクへ送る様子が、まさに「キャノン砲」!ですね。

1回に10kgずつホップを投入するので、ヤッホーブルーイング史上最多のドライホップ量を誇る「僕ビール、君ビール。満天クライマー」では、この工程を20回以上も繰り返すことになります。

あのときは大変だった・・・。(遠い目)
3つのバルブをそれぞれ適切なタイミングで、すばやく操作しないとビールとホップがうまく混ざらず、ホップが必要以上にドロドロになって配管内に詰まってしまうことも。
そうなると一度すべて解体して、殺菌工程からやり直しです。

ビール職人、誰もが一度は通る道・・・。(遠い目ふたたび)
大量のドライホップを難なくこなすには熟練された技術が必要で、体得すると「キャナー(キャノン+er)」の称号が与えられたりします(笑)
僕はまだまだなのでたくさん練習しないと!!!

ヤッホーブルーイングでは、特にホップの香りを強調したいビールをつくるとき、このドライホップという手法をよく用いています。
配管を組んで、殺菌して、大量のホップを運んで、詰まらせないようドキドキしながらビールに添加して・・・・・
ドライホップしないビールと比べると手間はかかりますが、ヤッホーブルーイングの「ホッピー」なビールたちは、ドライホップなしには存在しないのです。

今日も美味しいビールのために頑張ります!!!
【ドライホップを用いた主なビール】
・よなよなエール
・インドの青鬼
・僕ビール、君ビール。シリーズ
・軽井沢ビール クラフトザウルス シリーズ
さいごに

今回はコニカル室からお送りしました。
これからもゆるーく醸造所の日常をお届けしていきます。
醸造所のことで気になることがありましたら、ぜひリクエストをお送りくださいね!
ではまた次回!がみたでした。