黒ビールはなぜ黒い?ビールメーカーが語る「黒ビールの秘密」
あなたにとっての「黒ビール」って、どんなビールですか?
「見た目が真っ黒」で、普通のビールに比べると「香ばしく」て、やっぱり「苦い」……そんなビールを思い浮かべる方が、多いのではないでしょうか。
じゃあ、どうして黒ビールって黒いんでしょう?
なぜ、コーヒーのような香りがするんでしょう??
この記事では、長野県のクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」スタッフが、黒ビールの秘密をご紹介します。これであなたも「黒ビール」に詳しくなれること間違いナシ!
黒ビールって何?
「黒ビール」は、濃色の麦芽(モルト)を原料の一部に用いた、色の濃いビールの総称です。
発酵方法の違い、大麦・小麦の違い、一般的なビールの分類法である 「ビアスタイル(=ビールの種類)」 は関係ありません。色が黒っぽいビールは、おしなべて「黒ビール」と呼ばれている、ということですね。
日本国内においては、ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則で「濃色の麦芽を原料の一部に用いた色の濃いビールでなければ、黒ビール又はブラックビールと表示してはならない」と定義されています。
黒ビールはどうして黒いの?
では、どうして黒ビールは黒いんでしょうか。
その答えを握っているのは「原材料」です。
ビールの主な原材料は「麦芽・ホップ・水・酵母」の4つ。どれかひとつでも欠けるとビールは完成しませんが、黒ビールが黒いのは、使用している「麦芽(モルト)」が黒いからです。
麦芽は、大麦を発芽させてから乾かした後、さらに80℃程度の熱風を送り込んで焙燥(ばいそう)したものです。このときの温度や焙燥時間によって、麦芽は大きく2種類に分けられます。
ひとつめが、低温(80℃)で時間をかけながらじっくりと焙燥してつくる「ベースモルト」。その名の通りビールの基本となる麦芽で、アルコールの素になります。
ふたつめは、高温(100℃~)で焙燥してつくる「スペシャルモルト」。ビールの色合いを変化させたり、ビールにコクや甘味・フレーバーをつけてくれます。
見てください、この色。さっき見た麦芽の色と、全然違うでしょう?
黒ビールが黒いのは、スペシャルモルトの中でもしっかりと焦げるまで焙煎した「チョコレートモルト」や「ブラックモルト」と呼ばれる麦芽を使っているからなんです。
とは言っても、黒ビールは焦げた麦芽だけを使っているわけではありません。上述した通り、ビールの基本となる麦芽は「ベースモルト」。通常、ビールに使う麦芽の80~90%はベースモルトで占められています。黒ビールも例外ではありません。
たくさん使うと渋味が出やすくなってしまうこともあり、焦げた麦芽は全体の数%~10%程度だけ入れているパターンがほとんどです。むしろ、焦げた麦芽は、ほんのすこし入れるだけでもしっかりとビールに色を付けてくれるんですよ。不思議ですよね。
黒ビールにはどんな種類があるの?
日本では、色が黒っぽいビールはおしなべて「黒ビール」と呼ばれています。
でも実際には製法も違えば原材料も味わいも違うので、黒ビールは大きく4つの「ビアスタイル(ビールの種類)」に分類できるんです。 (ビアスタイルについてはこちらの記事で詳しく解説しています!)
ビアスタイル | 発祥国 | 発酵方法 |
ポーター | イギリス | 上面発酵(エールビール) |
スタウト | アイルランド | 上面発酵(エールビール) |
シュバルツ | ドイツ | 下面発酵(ラガービール) |
デュンケル | ドイツ | スタイルにより異なる |
ポーター(Porter)
ポーターは、1722年に英国ロンドンで生まれたと言われています。
売れ残ってしまった古いブラウンエールを新しいビールと混ぜてつくった「スリースレッド」という安いビールが庶民の間で人気となりました。これがポーターの起源になったと言われています。
その「スリースレッド」を運んでくる人がポーター(荷運び人)だったからとか、ポーターたちの1日の仕事終わりの一杯として支持されていたからとか……ポーターと言う名前の由来は諸説あります。
スタウト(Stout)
ポーターがロンドンで大人気になっていた19世紀、周辺のブルワリーはこぞってポーターをつくりました。しかし、水質など様々な要因から、製品化にはなかなかこぎつけません。
そんな中、アイルランドのギネス社がポーターを研究して製品化したのが「スタウト・ポーター」です。「強い」という意味の「スタウト」を冠したポーターはアルコール度数が高く、ローストバーレイ(高温で焙燥した大麦)を多く使用しているため、麦の焦げた風味がより強いのが特徴です。「スタウト・ポーター」はアイルランドのみならず、ポーターの本場ロンドンでも人気になり、逆輸入されるほどでした。
そんなギネス社の伝統のスタウトを「エクストラ・スタウト」で感じてみてください。
その黒い色からは想像できないほどの後味のスッキリさとシャープな苦味を感じることができるでしょう。ポーターと比較すると、甘味が少ないため、2杯、3杯と飲んでも飲み疲れません。
シュバルツ(Schwarz)
シュバルツは、ドイツ語で「黒」をあらわす名前の通り、ドイツのバイエルン地方発祥のビアスタイル。ドイツの詩人・ゲーテも愛したと言われています。
下面発酵酵母によって発酵されているため、ポーターやスタウトに比べると、比較的スッキリとした味わいです。麦芽のロースト感やほのかな甘味と、シャープでクリアな味わいを同時に楽しめるビアスタイルです。
デュンケル(Dunkel)
デュンケルは、ドイツの南部地方発祥のビアスタイル。ほかの3つのスタイルに比べると、黒というよりは焦げ茶色のほうが近い色味をしているので、「ダークビール」と呼ばれることもあります。
デュンケルは大きく2種類に分類され、ミュンヘンで造られる伝統的なラガービール「ミュンヒナーデュンケル」と、小麦を主原料にしたエールビール「デュンケルヴァイツェン」があります。
黒ビールに、あう!おつまみレシピ
黒ビールのなかでも特に「ポーター」にぴったりなおつまみを、数点ご紹介します!
厚切りビーフウェリントン
「ポーター」のボディ感には牛肉が相性ばっちり!
なんとこの「厚切りビーフウェリントン」、ローストビーフと生ハムをパイ生地で包んで焼き上げるという、夢のような一品なんです。
コーヒーを隠し味で加えることで、ビールの香ばしさとの相乗効果をさらに生み出すことができますよ。
(東京ブラックは2023年3月の生産分をもって終売いたします。)
レアチーズ セミフレッド風
なんと!ポーターには、甘いスイーツもぴったり合うんです。
クリーミーなスイーツは、ポーターの焦げ感をまろやかにしてくれて、ビールの甘みを強調させてくれるため相性ばっちり。
また、ブルーベリーなど色の濃い果実はポリフェノールが多く、渋味を含んだ濃い味わいなので、濃色のビールと合わせやすいんですよ。
(東京ブラックは2023年3月の生産分をもって終売いたします。)
黒ビールの違いを知って、ビールライフをもっと楽しく!
意外と奥深い、黒ビールの世界。お楽しみいただけたでしょうか?
黒ビールは、知れば知るほどおもしろいビールたちなんです。気になったビアスタイルがあったら、ぜひ飲み比べてみてくださいね。
(おわり)