ビールとパンの酵母は「同じ苗字の職業違い」!?ビール酵母でピザを作ってみた
「ビール酵母とパン酵母(イースト)は、同じ苗字の職業違い、って感じかな。」
「どうしてビール酵母でピザを作ろうなんて考えたんですか?」と尋ねた私に、品質管理チームの「るんるん」はそう答えてくれました。
こんにちは。よなよな編集部の「まりも」です。
よなよなの里のビールすべての品質管理を担当している「改方(あらためがた)」というチームの4名(るんるん、ちゃんりょ、てっかまき、まれみん)が「ビール酵母でピザを作ろうとしている」という情報を聞きつけ、佐久醸造所へ行ってきました。
ピザは普通、パン酵母(イースト)で作るものですが、ビール酵母でもピザは出来上がるのでしょうか!?
今回は、ビール……ではなくピザができるまでの過程を、インタビュー形式でお届けします!
そもそも、ビール酵母でピザって作れるの?~経緯と原理~
まりも:そもそも、なぜビール酵母でピザをつくることになったのですか?
ちゃんりょ:昨年末、るんるんとふたりで「パン作り」にハマっていて。私は、パン酵母そのものを手作りするところから始めていました。
でも、パン酵母って温度や外部環境に対してすごくデリケートなので、自宅で作っていたら5日目で失敗してしまったんですけどね……!
そんなことを繰り返しているうち、「じゃあ、ビール酵母でピザを作ってみようよ!」という話になったんです。
パンと違ってピザの方が発酵時間が長いので、会社で作るのにちょうどいい(作って寝かせて翌日出勤すれば発酵完了)ということで。
まりも:なるほど~。でも、ピザって、パンを作る時用のイーストじゃないと発酵しないのでは?ビール酵母でもうまくいくんですか?
ちゃんりょ:実は、ビール酵母(※以下酵母①②)とパン酵母って同じ「サッカロマイセス・セレビシエ」なんですよ!
一同:(そうそう!と盛り上がる)
まりも:「サッカロマイセス・セレビシエ」???(噛み噛み)
るんるん・てっかまき:酵母にも色々あるんだけど、実はビール酵母とパン酵母は同じ「サッカロマイセス属 セレビシエ種」の「株違い」。
しかも、ラガーよりもエールの酵母のほうが似ているから、私たちが普段使っているエールビールの酵母は特にパン酵母とそっくりなんです。
酵母界で両者がどのくらいそっくりかというと……「サッカロマイセス・セレビシエ」は人間でいうと「ホモサピエンス」的なイメージ。
だから、同じ人間、同じアジア人、同じ日本人で、「鈴木さん」というところまで同じ。鈴木さんの職業違い、という感じですね。
まりも:へぇ~!すごくしっくりきます!そんなに近い存在なんですね!
4種類の酵母でピザ作り~レシピと作り方~
ちゃんりょ:今日は4種類の酵母を用意したので、それぞれ発酵や味に違いが出るか見てみたいと思っています。
【4種類の酵母】
酵母①.「アメリカンエールイースト」(リキッド)/写真下段左
よなよなエール、インドの青鬼、東京ブラックなど、よなよなの里の多くのビールに使用している酵母
酵母②.「ベルジャンアードネス」(リキッド)/写真下段右
僕ビール君ビールに使用している酵母
酵母③.「WILDBREW PHILLY SOUR」(ドライ)/写真左
研究開発用に購入した、サワーエールなどをつくるときに適した乳酸を生成する酵母
酵母④.「SafBrew LA-01」(ドライ)/写真右
研究開発用に購入した酵母
※先にご紹介した「サッカロマイセス・セレビシエ」は、酵母①と②のみで、酵母③と④は違う種類の酵母となります
【作り方】
工程1. 水(58ml)→イースト(リキッドは3g、ドライは1.5g)→小麦粉(100g)→食塩(2.5g)の順で混ぜる
ちゃんりょ:酵母を塩分濃度の高い水の中に入れると、急に浸透圧の高い環境下におかれることになるので、いきなり過酷な環境にさらされて、酵母がかわいそうな気がする…ということでこの順番で混ぜています。
まりも:「酵母がかわいそう」って、製造部門ならではの感覚(!?)ですね……
(ちなみに、一度食塩に触れたスプーンを次の生地の酵母に使う際は、これまたかわいそうということで、4名全員スプーンをきちんとアルコール消毒していました。)
工程2. ボウルの生地をスプーンでこねる
工程3. 平らな場所に移し、手で10分~15分こねる
まりも:みなさん結構力強いこね方ですね。大変そう……
ちゃんりょ:まぜて10分ぐらいこねるだけなので意外と簡単ですよ!あとは一晩おいて焼くだけなので!
はい、ということで、もうできちゃいました!
お疲れさまでした~!
Before(こねる前)
After(こねた後)
発酵を見越して、ふんわりと大きめにラップをかけます。
酵母による発酵や味の違いはいかに?
さて、一晩発酵させた生地を、翌朝チェックしてみることに。
まりも:おお!発酵してる!
るんるん:「ベルジャンアードネス」と「SafBrew LA-01」はパンパンに膨らんでいますが、そのほかの2つは意外と膨らんでいないですね。
まれみん:膨らみもですが、色が変わったのが驚きです!「ベルジャンアードネス」がちょっとピンクっぽくなっているんですよ!
いよいよピザの「焼き」に入ります。
生地を伸ばして、焼いて……
一同:はい、完成です!
まりも:おおお~!!!ピザですね!!!
4種類それぞれ、焼く前の見た目の違いはありましたが、味の違いはいかに?
まりも:味、どうですか?
一同:……味の違い、ほとんどない。(笑)
まりも:確かに、具が乗ってしまうと、その具の味になってしまいそうです。(笑)
まれみん:味の違いはわかりませんでしたが、膨らみ方や生地の色が酵母によって差が出たのは面白かったです!
てっかまき:市販品と大差ない出来なのは驚き!しっかりピザの味がする!改めて、酵母ってすごいな~と思いました。
以上、今回の「醸造所日誌」は、「ビール」ではなく「ビール酵母でピザ作り」の様子をお届けしました!
ご自宅でピザを作りたい時、パン酵母が無ければビール酵母で代用できちゃうということがわかりましたね。
……って、ビール酵母を家に常備している方のほうが少ないか……。