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「山の上ニューイ」、業界初の挑戦【ブルワー×国産ホップ農家対談】

「山の上ニューイ」、業界初の挑戦【ブルワー×国産ホップ農家対談】

2021年12月9日(木)に長野県・山梨県のセブン-イレブン667店で先行発売する、長野山梨エリア限定の新製品「山の上ニューイ」。長野県発祥のホップ「信州早生(しんしゅうわせ)」と山梨県発祥のホップ「かいこがね」を使用し、流通缶ビールでは日本で初めてエッセンシャルホッピング(水蒸気蒸留)製法を用いた、今までにない製品です。
※店舗数は2021年11月末現在。一部店舗では取り扱いのない場合がございます
※「流通缶ビール史上初」は自社調べ

今回は、このビールをつくった醸造士「ピーピー」と、国産ホップのつくり手「北杜ホップス」の小林さんに、山の上ニューイのこだわりや国産ホップに込めた熱い想いを語ってもらいました。
※取材は新型コロナウイルス感染症対策に配慮したうえで2021年10月に行い、一部会話が発生しない撮影の際のみに限りマスクを外しています。

醸造士「ピーピー」

醸造士ピーピー

入社6年目のブルワー(醸造士)。お酒が好きすぎて、生まれ育った高知県から佐久醸造所のある長野県に移住。醸造経験を積み、今回、入社以来初めてイチからビールづくりに携わった。

国産ホップのつくり手「北杜ホップス」小林さんご一家

北杜ホップスの小林さんご一家

八ヶ岳南麓の山梨県北杜市で、国産ホップをはじめ約20種類のホップを栽培しているホップ農家。国内でも数少ないホップ農家となった現在、ホップ栽培の継承と発展に務めている。詳しくは こちら から。

長野・山梨発祥の品種を中心に選び抜いた6種類のホップ

小林さんご一家とピーピー

ピーピー:
小林さん、本日はご家族で佐久醸造所に来てくれたんですね!

小林さん: 
はい、私が代表ですが、父と母と一緒にホップをつくっています。

ピーピー:
このたびは国産ホップ(信州早生・かいこがね)を提供していただきありがとうございました。

小林さん(父): 
お声がけに驚きました。全国展開しているビールメーカーさんは大量生産するために輸入のホップをつかっているはず……と思っていたので、私たちのような国内の農家にオファーが来るわけないと思いましたよ(笑) 

ピーピー:
実は、私たちにとっても流通缶での国産ホップの使用は初めてだったんです!

小林さん: 
そうでしたか! 今回はどういった経緯でうちに?

国産ホップ(信州早生・かいこがね)

ピーピー:
甲信エリア(長野・山梨)限定の新製品をつくる事が決まってから、「甲信モダナイズ」というコンセプトを決めまして。

小林さん:
 「甲信モダナイズ」?

ピーピー:
「もともと甲信地域に独自にあった自然やカルチャーに、現代的なセンスを加えて新しく表現する」という考え方を意味します。昔から守り育てられてきた長野・山梨発祥のホップを取り入れながら、今まで私たちがやったことのない製法で新しいビールをつくれないか……そんな想いで、長野の信州早生・山梨のかいこがねを育てている北杜ホップスさんにお声がけしたんです。

小林さん:
 「甲信モダナイズ」、素敵なコンセプトです。
今回計6種類のホップを使用されているということですが、提供した2種類以外のホップはどうやって選んだのですか?

ピーピー:
信州早生・かいこがねの特長である上品で爽やかなホップ香を最大限引き立てるため、ホップの組み合わせの実験を何度も行って決めました。ジューシー・トロピカルなホップでは邪魔をしてしまうので、ドイツ産のノーブルホップや、アメリカンノーブルホップと呼ばれるちょっと特殊で面白いホップを選んでいます。6種のホップは5回に分けて投入しているんですよ。

山の上ニューイ仕込みの様子

小林さん:
私たちのホップをメインにレシピを考えてくれて嬉しいです。
どんな味わいになっていますか? 

ピーピー:
信州早生・かいこがねの良さを活かして、レモングラスを思わせるハーバルな香りを軸に、森林を歩いているようなウッド香・白胡椒のような穏やかなスパイス香も感じられる、上品で爽やかなアロマフレーバーに仕上げました。二杯三杯と飲みたくなるようなドリンカブルな味わいになっています!

業界初!エッセンシャルホッピングにトライした理由

山の上ニューイエッセンシャルホッピングの様子

小林さん:
今日見学したエッセンシャルホッピング(水蒸気蒸留)は、日本の流通缶ビール史上初の試みと伺いました。今回なぜこの製法にしたのですか?

ピーピー:
一番の理由は、良質なホップアロマを抽出したかったからです。

エッセンシャルホッピング(水蒸気蒸留)製法

ホップに水蒸気を送り込んで蒸留することで良質なホップアロマを抽出する製法のこと。
※こちらの工程説明は生ホップを使用していますが、山の上ニューイではペレットホップを使用しています

ホップバッグにホップを入れている様子
メッシュバッグにホップを入れ……

ホップバッグを鍋に入れている様子
ホップを入れたメッシュバッグをすっぽり鍋に入れて……

鍋に蓋をし、水ためてお湯沸かす様子
水を溜めて、鍋に蓋をします。

水蒸気を冷やして「ホップアロマ芳香水」を抽出する様子
加熱することで、水蒸気とともにアロマ成分が気化されます。

「ホップアロマ芳香水」を抽出する様子

アロマ成分が気化された水蒸気を冷却し、「ホップアロマ芳香水」という液体を抽出します。


 

ホップアロマ芳香水は、「ドライホップ」という工程(発酵中のビールにホップを添加する工程)でビールに添加して攪拌し、その後貯酒して熟成します。

※「ドライホップ」について詳しくは こちらの記事 でご紹介しています

ホップバッグを小林さんご一家にお見せする様子

ピーピー:
今回は、生ホップを乾燥させてペレット加工したものをエッセンシャルホッピングしました。

小林さん:
生ホップのままだと、野草のような強烈な植物臭がしますからね。乾燥ホップだと穏やかな香りで少し物足りない。ペレットでつくるのが一番香りが強く出やすいのでエッセンシャルホッピングに向いていますが、固まっているので抽出効率が悪く手間暇がかかったのではないでしょうか。

ピーピー:
初めての試みで時間がかかりましたが、ビールのロスが減らせるという大きな利点があり、エッセンシャルホッピングに挑戦しました!
通常のドライホップでは固形のホップを使用するため、最終的にホップを除去する際にビールのロスが出てしまいます。それに対して、エッセンシャルホッピング製法で抽出したホップアロマ芳香水はそのままビールに添加でき、ホップ除去の必要がなくビールのロスがありません。
今回は貴重な国産ホップを提供してもらったので、ホップを最大限活用したかったんです。

小林さん(父):
収穫したホップの量に対して抽出されるホップアロマ芳香水の量が少なく驚きましたが、通常のドライホッピングに比べればロスの少ない製法なんですね。

山梨発祥「かいこがね」がつないだ縁

山の上ニューイ

ピーピー:
国産ホップは調達がなかなか大変で……小林さんにホップを提供してもらえてとてもありがたかったです。

小林さん(父):
今回は発売時期が決まっていて、提供量も多かったので、お渡しできるまでずっと気が気じゃなかったです(笑)。ホップって病気が出たりすると一日で畑がダメになることもあるんですよ。昨今気候変動が多いので不安もありましたが、無事に収穫出来てよかったです!

北杜ホップス農場の様子

ピーピー:
国産ホップは輸入ホップに比べて流通量が少ないですよね。需要は増えている気がしますが?

小林さん:
そうですね、需要は増えています。ビールはもちろんですが、パン原料や調味料、香料につかっていただくことも多くなってきました。

ピーピー:
ほしいというお声が増えていても、つくる量を増やすのは難しいのでしょうか。

小林さん:
ホップ栽培が盛んなドイツなどの国はほとんど機械作業で効率よく栽培できていますが、日本は機械化されておらず手作業が多いので、生産効率があまりよくないんです。
それから、そもそも契約農家ばかりということもあって。予め必要な分だけを栽培するため、今回のようなお声がけに対応できない場合も多いんですよね。私たちもご要望にお応えしきれていないので、今後は農地を拡大していきたいと考えています。

北杜ホップスさん

ピーピー:
なるほど! 改めて、大切につかわせていただかなくては……と思いました。
ところで、小林さんご一家はいつごろから山梨県でホップを栽培されているのですか?

小林さん(父):
8年ほど前です。私がサラリーマンを定年して山梨に移住してきてからですね。

ピーピー:
代々ホップ農家さんだと思っていたので、意外です!

小林さん(母):
私は定年退職したらのんびりしようとしていたので、ホップをつくりたいと聞いた時は「ホップって何?」という感じでしたよ(笑)

小林さんご一家

小林さん:
実は、かいこがねに出会ったのがきっかけで、私たちはホップ栽培をはじめたんです。

ピーピー:
というと……!?

小林さん:
父は山梨に移住して何か育ててみたいと思っていたようで。僕は農学部出身なこともあり、父と一緒に農業をやるのもいいなと思うようになったんです。そう思っていた時、山梨県発祥で国産ホップとしても第一号の「かいこがね」に出会いました。当時県内で栽培していたのはひとりで、その方は「売り先が無いので品種を残すためだけに栽培して燃やす」ということを十数年続けていたそうなんですよ。

ピーピー:
あああ! もったいない……。

小林さん:
出会った時、かいこがねからオレンジのようないい香りがして。「ああ、引き継いで育てたい」と思って、父とトライしてみたんです。
当時は他に国産ホップをつくっている非契約農家さんがあまりなかったので、様々な品種をつくれないかとお声がけをいただいて、ご要望にお応えして育ててきた結果、今の私たちがあります。

ピーピー:
それでは、かいこがねは小林さんにとっても思い入れの強いホップですね。

小林さんのお母様

小林さん(母):
はい、可愛い娘を嫁に出すような気持ちですね(笑)

小林さん:
それから……かいこがねは幼若時は黄色い植物体で、見た目も美しいんですよ。夏は、農地に光が当たると黄色いオブジェが並んでいるようで……それを見るためにやっているところもありますね。

北杜ホップスさんのかいこがね
北杜ホップスさんのかいこがね

ピーピー:
なんて羨ましい職場……!
かいこがねがきっかけで国産ホップづくりをはじめた小林さん。その小林さんのつくったかいこがねが、山の上ニューイの味をつくっている。かいこがねが縁を繋いでくれたような気がして、感慨深いです。

「ホップといえば甲信」になれば。国産ホップのこれから

北杜ホップスさんとブルワーのピーピー

ピーピー:
先ほど「農地を拡大したい」というお話もありましたが、小林さんの今後の夢はありますか?

小林さん(父):
まずは、国産ホップをきちんと残していくこと。現在国産ホップ業界の最前線で活躍されているのは、80~90歳の先輩方です。今はいいですが、今後は私たちが残していかないといけません。

北杜ホップスさん小林さんのお父様

小林さん:
それから、ほしい時にほしい分だけホップを買える体制を整えていきたいですね。今、一般の方々にホップをご提供しているのは私たち含めおそらく3社ほどしかありません。使いやすい量・お求めやすい価格で提供していくことができれば、国産ホップが世の中にもっと広がって、新しくはじめたいという若手の農家さんも増えていくと思うんです。そうやって、ホップが甲信地域を代表する作物のブランドになっていけば嬉しいです。

ピーピー:
「ホップといえば甲信!」、そして「ホップといえば日本!」になれば素敵ですよね。

小林さん:
ドイツやアメリカでは、毎年3~4種の新種のホップができています。日本も取り組んではいますが、ここ十数年でできた新しい品種はわずかです。私たちも創業時から取り組んではいますが、今後はよりいっそう国産の新種開発に力を入れていきたいと思います。

ピーピー:
それは、ブルワーとしてもぜひお願いしたいです! 山の上ニューイに新しい国産ホップを入れられたら……夢が広がります!
最後に、山の上ニューイを飲んでくださる方にコメントをお願いします。

北杜ホップスの小林さん

小林さん: 
楽しく飲んでほしいですよね、やっぱり。それが一番です。山の上ニューイは、ホップも水も甲信の地元のもの。地元でつくられたビールを飲むことで、まわりまわって自分の価値観に戻ってくるんじゃないかと思っていて。ビールはコミュニケーションツールでもあるので、飲みながら地元の知り合い同士で談笑してほしいですね。

ブルワーのピーピー

ピーピー:
国産ホップの上品で爽やかなアロマフレーバーをトップから感じられるドリンカブルなビールを目指して、ホップ品種の組み合わせにこだわり、新製法にも挑戦しました。試行錯誤を重ねてやっとの思いで誕生した、血と汗と涙の結晶です! 今は、わが子を送り出すような気持ちですね(笑)。
日常生活にするりと溶け込む身近な存在のビールとして、楽しく、美味しく飲んでいただけることが何より嬉しいです。山の上ニューイはまだまだ進化し続けます!

この日初めてできた山の上ニューイ
この日できた山の上ニューイ。

「山の上ニューイ」製品情報

山の上ニューイ

「山の上ニューイ」は、レモングラスなどのハーブや、おだやかな森林を思わせる爽やかな香りが特長。食前~食中に飲みたいドリンカブルな味わいのビールです。

 原材料    :大麦麦芽・小麦麦芽・ホップ 
 内容量    :350ml
 ビアスタイル :甲信ノーブルホップエール(Ko-Shin Noble Hop Ale)
 アルコール分 :4.5%
 希望小売価格 :293.70円(消費税込み)           
 ブランドサイト: https://yohobrewing.com/newee/

そのほかの山の上ニューイのこだわりや、「甲信モダナイズ」について詳しくはこちら
「山の上ニューイ」ができるまで|長野・山梨を新しく表現する「甲信モダナイズ」とは?

この記事に出てくる商品
山の上ニューイ
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