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本能的に「まずい」はずのビールになぜハマる? 味覚のプロに聞く、ビールがおいしくなるメカニズム

本能的に「まずい」はずのビールになぜハマる? 味覚のプロに聞く、ビールがおいしくなるメカニズム

みなさん、一番はじめにビールを口にしたときの記憶を呼び覚ましてみてください。
あの瞬間、ビールを「おいしい」と感じましたか?

 

こんばんは、よなよなスタッフの「まりも」です。

私は初めてビールを飲んだ時、「苦っ!!! お父さん、なんでこんなまずいもの毎日飲んでるの?」と思った記憶があります。そんな私が今では、ビール会社のスタッフに(笑)。……あれ、そういえば、いつからビールがおいしく感じるようになったんだろう?

実は、はじめてのビールをまずいと感じるのは、人間みんな共通なのだそう。まずいビールが、なぜおいしく感じるようになっていくのか? そのヒミツに迫るべく、科学的な見地から人の味覚を研究する味覚のスペシャリスト・菅慎太郎さんにお話を伺いました。

話を聞いた人:菅 慎太郎さん

人の味覚を研究する「味覚コンサルタント」の菅 慎太郎(かん・しんたろう)さん

菅 慎太郎(かん・しんたろう):科学的な見地から人の味覚を研究する「味覚コンサルタント」。焼酎利酒師の資格を持ち、お酒と食べ物のマリアージュを探求しながら、味を起点とした商品開発や食育活動に携わる。
味覚のスペシャリストとしてメディアの出演も多く、日本テレビ『ぐるナイ』の特番「芸能人料理対決」で審査員をつとめたり、日本テレビ『月曜から夜更かし』では「神の舌を持つ男」と評されたことも!

思い出がビールをおいしくする

よなよなビアワークスのクラフトビールと料理

まりも:
菅さん、先ほど「はじめてのビールがまずいと感じるのは、人間みんな共通」とおっしゃっていましたが、どういうことですか!?

菅さん:
まりもさん、はじめてビールを飲んだ時、どう感じましたか?

まりも:
とにかく苦かった記憶があります。

菅さん:
そうそう。ビールは、五味(甘味・塩味・旨味・酸味・苦味)のなかで最も「苦味」が際立っている飲み物です。苦味というのは、毒物の象徴。つまり、人間が本能的に「避ける」ようにインプットされているものなんです。

味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん・しんたろう)さんとよなよなエール

まりも:
なるほど! では、本能的に避ける味わいを、どうして好きになっていくんですか?

菅さん:
苦味は、後から学習する味です。苦い薬でも、飲んでから体がすっきりしている、といった実感があれば積極的に服用するようになりますよね。コーヒーも苦いですが、リフレッシュや気分転換に効くので、また飲みたくなる。好意的な経験の積み重ねにより、「食べられる」そして「おいしい」と脳が認識していくようになります。

まりも:
ではビールの場合の「好意的な経験」は……酔っぱらって気分が良くなることでしょうか?

菅さん:
アルコールが緊張を緩和しリラックス状態にしてくれるので、また飲みたくなるということもありますね。

ですが、それだけではなく「ビールを味わっているときの環境」も重要な要素です。飲み会の場って、楽しいですよね。例えば、気心の知れた友達と楽しくビールを飲んだ思い出があると、だんだんと「ビールっておいしいんだな」と脳が認識してくれるようになるんです。

まりも:
思い出がビールをおいしく感じさせてくれているってことですか? 人間の脳ってすごい!

香りが記憶を呼び起こす

菅さん:
ビールをおいしく飲むためには好意的な記憶を積むことが重要ですが、その過去の記憶の引き出しにとても有効なのが、「香り」です。

まりも:
香り、ですか?

菅さん:
人間には「安全確認機能」が備わっています。例えばこの空間が突然真っ暗になってしまったら、何が起こっているのか確かめようとして周囲の臭いを嗅ぐはずです。そして、その香りが安全かどうか判断するために、人間は無意識に「この香りって何だっけ」と過去の記憶を思い起こすんです。

味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん・しんたろう)さんとグラスに入ったクラフトビール

まりも:
過去の記憶を思い起こす。

菅さん:
例えば腐敗臭がしたら、それを食べないようにしますよね。それは、香りを嗅ぐことで、「腐ったものを食べてお腹を壊した」という過去の記憶を思い起こしているからです。

逆に言うと、その香りに関連した記憶が良いものであれば、その時に経験した五感まで引き出してくれて、食べる前に期待値を上げてくれる効果もあるんです。

まりも:
そういえばつい先日たこ焼き屋さんに行ったとき、ふと「昔行ったお祭りの思い出」が脳裏に浮かんだんです。なんだかワクワクして、家で食べるたこ焼きよりおいしい気がしました。今思えばたぶん、熱せられた厚い鉄板と油の匂いがお祭りに並ぶ屋台の匂いと似ていたので、楽しかった過去のお祭りの記憶を引き出してくれたんですね。

昭和の若者より、現代の若者の方がきっとビールはおいしく感じやすい

味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん・しんたろう)さん

菅さん:
最初は苦いと感じていたビールも、好意的な経験を積むうちに、どんどんおいしく感じるようになっていきます。その時に嗅いでいたビールの香りや、ビールを飲んでいたその空間の香りも一緒に記憶に残るので、次にその香りを嗅ぐと、「ビール飲みたい! 飲み会いきたい!」と期待感が醸成されて、ビールを飲む時間がもっと楽しくなるんですね。

まりも:
逆に、ビールにまつわる記憶が悪いものであれば、ビールはおいしくなくなってしまうということですか?

菅さん:
そうです。例えば、昭和の時代には「強制参加で上司に説教される飲み会」なんてざらにありました(笑)。そういうネガティブな記憶と結びついていると、次にビールの香りを嗅いだ時にその時の記憶まで呼び覚ましてしまって、まずくなってしまう。

でも最近はそんな流れも無くなってきて、純粋に気が合う人との飲み会が増えましたよね。今の若い人こそ、ビールのおいしさに気づきやすいと思います。

味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん・しんたろう)さん

まりも:
私は「説教される飲み会」には参加したことがありませんが、学生時代の悪い記憶を今でも引きずっている気がします。

大学の頃に焼酎を飲んで潰れた記憶があるせいか、あれ以来、試そうとしてもどうしても飲めないんです。それは、あの香りを嗅ぐだけで無意識のうちに避けてしまっているってことですよね……。

菅さん:
お酒の場合、もし酩酊して嘔吐してしまえば、脳に強い嫌悪感がインプットされてしまいますからね。嘔吐は、人間が本能的に危険だと感じる行為なので。

まりも:
一度嫌いになったら、もう好きにはなれないのでしょうか?

菅さん:
いえ! 脳が優秀なのは、上書きが可能なところです。もし負の記憶があっても、後から好意的な記憶を足していけば、いい記憶として思い返すことができるんですよ。

五感全てに一番集中できる場所は、お店。

まりも:
記憶は上書きできるんですね! 次はいい環境で焼酎にトライしてみようと思います。……といいつつ、実践するとなると、どうしたらよいのでしょう?

菅さん:
好意的な経験を積むためには、「飲み方・飲む人・飲む場所」がとても重要なんですよ。

味覚コンサルタントの菅 慎太郎(かん・しんたろう)さん、ビアワークスにて

まりも:
飲む場所もですか?

菅さん:
例えば家だと、いつも嗅いでいる香りがするので、日常生活の延長線になってしまう。リラックスしきれないんですよね。家飲みは気兼ねなくラクにできますが、よりおいしさを追求するのであればお店が一番です。五感全てに集中できる場所ですからね。

まりも:
コロナ禍でここ数年外飲みから遠ざかりがちでしたが、思い返すとそんな気がします。オンライン飲み会よりも外飲みの方が、おいしかったものとか、楽しかった記憶を覚えている気が……

菅さん:
それから、「飲み方」については、ちょっとしたコツがあります。今から、そのコツを伝授しますよ!

まりも:
コツ! どんなものですか?

菅さん:ビールにあう料理の選び方「ペアリング」と、食べる順番です。これを知っていれば、確実にQOL(Quality of life=クオリティ オブ ライフ)があがります!

まりも:
神の舌に近づけるわけですね。これはたのしみ! よろしくお願いします!


▼つづきはこちら▼

クラフトビールが格段においしくなる「飲み方のコツ」って? 味覚のプロが解説します(後編)
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