【#本にあうビール】かもめブックス・柳下恭平さんの場合

【#本にあうビール】かもめブックス・柳下恭平さんの場合

ぎん

こんばんは、ぎんです。秋と言ったらやっぱり読書。 「クラフトビールと本」のペアリングを探る旅【#本にあうビール】第1回です~!

ビールと本のペアリングを探る

ヤッホーブルーイング随一のインドア派「ぎん」の勢いだけで始まった企画、クラフトビールと本のペアリングを探る旅【#本にあうビール】。記念すべき、第1回目です!

※【#本にあうビール】ってなに? という方はこちらから。

今回、ビールにあう本を紹介してくれる方は……

「……お~~~~~~~~~い」

…ん? なんだか呼ばれているような…

「おお~~~~~~い! こっちだよ~~~~!!」

…はっ!!! あなたは!

「お~~~~い! ぼくが本を選んであげよう!」

かもめブックスの柳下さん

ということで、
今回クラフトビールにあう本を選んでくださるのは、柳下恭平さんです。

柳下恭平さんってこんな人

柳下 恭平(やなした きょうへい)

株式会社鴎来堂(おうらいどう)、かもめブックス代表。さまざまな職種を経て、出版社で働く。編集者から校閲者に転身後、校正・校閲を専門とする会社、鴎来堂を立ち上げる。2014年末には、神楽坂に書店「かもめブックス」を開店。本に出会える本屋として多くのファンに支持されている。

柳下さんが代表をつとめる書店「かもめブックス」。
この書店に多くのファンがいる理由、それは「出会える本棚」。

かもめブックスの本棚は、ジャンルや作者順で並んでいないのが特徴なんです。
ちなみに、この日の本棚にはこんなタイトルがついていました。

「趣味×趣味トリップ」「レイニー・メトロノーム・ブックス」「動物って最高だ」「ウキウキ時代ウォッチング」・・・

そのときの気持ちで、まるで雑誌の特集をひらくみたいに、今まで自分が選ばなかったような本たちに出会うことができちゃいます。この「選書」をしているのが柳下さん。そう、まさに選書のプロなのです!

「選書」と「タグづけ」 鬼平犯科帳はビジネス書?

ぎん:
こんにちは、クラフトビールに合う本を選んでもらいたくて来ました。

柳下さん:
こんにちは。ぴったりな本を選んじゃいましょう。

ぎん:
よろしくおねがいします!

柳下さん:
う~~~ん。でも選びきれないな……。エトガル・ケレットさんの「突然ノックの音が」か……いや、待てよ……水村美苗さんの「日本語が滅びるとき」もいいな……深澤直人さんの「デザインの輪郭」もいいし、寄藤文平さんの「デザインの仕事」も捨てがたいな……。若林恵さんの「さよなら未来」も……。ロラン・バルトさんの「明るい部屋」も素晴らしいし……。ちょっとこの一番最初の書き出しの一文、読んでみてください。すごくいいんですよ。

ぎん:
…………

いきなりの情報量のすさまじさに茫然とするわたしと、饒舌な柳下さん。

柳下さん:
いや~、ほんと素晴らしい本だなぁ……。

ぎん:
……柳下さんって、一体どれくらいの本を読まれているんですか?

柳下さん:
本当は一日中読んでいたいんですが、そういうわけにもいかないので、一日2時間くらいを読書にあてています。ノルマは一日1冊にしていますが、正直読み切れないときもありますけどね。

ぎん:
そんな膨大な読書データの中から選書って大変じゃないんですか?

柳下さん:
読書って「タグづけ」なんです。一冊の本の中に含まれている要素に、ひとつずつタグをつけていくんです。
例えば、池波正太郎さんの大人気時代小説「鬼平犯科帳」。どの本屋さんに行っても絶対「時代小説」の棚にありますよね。でもぼくは鬼平犯科帳に「ビジネス書」というタグをつけているんです。

ぎん:
ビジネス書?????

柳下さん:
簡単にいうと、江戸時代のお役人が悪人を捕まえるというお話なんですが、悪人の目を欺くために、悪人がくる蕎麦屋の人と裏で調整したりしてるんです。悪人を捕まえるというミッションに向かって、いろんなところで「スモール人事マネジメント」をしているんですよね。まさに、総チームビルディングが描かれているわけなんです。

ぎん:
なるほど……! 現代の組織づくりに通じるメッセージが隠されているんですね。しらなかった……。

柳下さん:
さらに、「東京」「銀座」の土地のタグ。あと意外と「銀座のグルメ」「蕎麦」なんてタグもつけられますね。

ぎん:
鬼平犯科帳の印象が、すごく多角的になりました。

柳下さん:
やっぱり本っていいですよね~。しかも安いしね~。素晴らしい娯楽ですよ。

友人が勧めてくれた「水曜日のネコ」

ぎん:
今日は「よなよなエール」と「水曜日のネコ」にぴったりな本を選んでもらいたいな~と思っているんです。このビールには、どんなタグがつくんでしょうか。

柳下さん:
ぼく「よなよなエール」も好きなんですけど、「水曜日のネコ」よく飲んでるんですよ。

ぎん:
うれしい!ありがとうございます!

柳下さん:
もともとは、ぼくの友人である版元の営業の「ずんさん」が勧めてくれたのがきっかけなんです。ずんさんは、とにかく悪いヤツで(笑)。「三宿最後のBボーイ」なんて呼ばれるくらい。休日は首から耳からつけられるもの全部つけて、超いかつい。そんな彼が、あるとき水曜日のネコを「これうまいんだよね~」って勧めてくれたんです。

ぎん:
ビジュアルインパクトとのギャップがすごい。

じっと見てくる「水曜日のネコ」の図

柳下さん:
そのとき飲んだ「水曜日のネコ」が妙にうまくて。その想い出もあって、つい選んじゃう。今日は家でビール飲みたいな、ってときに選んで帰ります。なんとなく、お店の棚に並ぶネコのパッケージと、目が合うときがあるんですよね。

ぎん:
水曜日のネコのパッケージのネコって、目が合うと離してくれないんですよね……。わたしも家に連れて帰っちゃいます。

ゆるっと「水曜日のネコ」にあわせたい一冊

柳下さん:
ぼくの水曜日のネコのイメージは、「リラックス」「日常の中の小さな非日常」ですかね……。いっぱい合わせたい本はあるんですけど、高野文子さんの「るきさん」を合わせたいです。30年くらい前に連載されていたのですが、今でも人気のある素敵な本です。

水曜日のネコにあわせたい 高野文子さん「るきさん」

柳下さん:
主人公の「るきさん」が、とにかくゆるっとしてるんです。お友達のエッちゃんは、いつも少しピリピリしてるのですが、マイペースなるきさんを見て「まぁいっか」ってなるシーンの連続なんですね。このるきさんが水曜日のネコみたいだなぁって。

ぎん:
いいですね~。わたしも小さなことでイライラしちゃうので、心の広いマイペースな人って憧れます。

柳下さん:
「るきさん」の中でも特に合わせたいシーンが、これです。

柳下さん:
るきさんが、急に海外の海が見える街に行っちゃうんですよ。でも、変わらずお米を炊いて、おさかなを焼いて。日本にいたときと、全く同じ生活をしているんです。

平日っていうリアリティの中に、必ずファンタジーってあるんですよね。

ぼくたち、その気になれば、どこにだって行けちゃうんです。たとえば、仕事おわりに台湾にだって行けちゃう。普段忙しくしていると、そのことを忘れてしまうんですけど。
忘れがちな日常のファンタジーを思い出させてくれる存在、ということで、ぴったりじゃないかな。

ぎん:
日常と非日常をつないでくれる存在……!なんかかっこいい……!

よなよなエール」が飲めるオトナだからこそ、読んでほしい一冊

ぎん:
よなよなエールはいかがでしょうか。

柳下さん:
よなよなエールは「王道の味わい」「帰ってきたくなる存在」というイメージなので……

柳下さん:
いろいろ悩みましたが、やっぱりこれかな。サン・テグジュペリさんの「星の王子さま」。読んだことありますか?

ぎん:
あります。だけど、たぶん小学生以来読んでないです。

柳下さん:
そうなんですよね。とても有名な作品ですが、大人になってから読み返したことがある人って少ないんですよ。でも「星の王子さま」は大人になってからこそ、読んでほしい本なんです。

ぎん:
なぜ、あえて大人に読んでほしい本なんですか?

柳下さん:
この本、すべてが書かれているんですよね。大人になって読み返すと「えっ!これ全部書いてあるじゃん!」って思うはずです。
大人になってくると、自分の成功体験を軸に話をしてしまいがちじゃないですか。でも、この本は、とにかく既存の先入観をけずりとってくれるんです。小さな王子さまが「なんで? なんで?」って聞いてくるから「あれ? 自分はなんでこう思ってるんだろう?」って原点回帰できるんですよね。

ぎん:
凝り固まった先入観をとっぱらってくれるんですね。

柳下さん:
ぼく、たまに「ここに星の王子さまがいたらどうだろう?」って考えるんです。「まぁまぁめんどくさいな」って思ったら、たぶん面白くない自分になっちゃってるんですよね。それで、今の自分ちょっと間違ってるかもな、と素直になれたり。

ぎん:
うう…… わたし、今読んだら心に突き刺さりそう……

柳下さん:
ちなみに、よなよなエールに特に合わせたいのが、仲良くなった「キツネ」と王子さまがお別れするシーンです。王子さまと出会ったキツネが、それまでなんとも思っていなかった麦畑を見て、王子さまを思い出すよ、と言うんですよね。

王子さまの髪の色と麦畑の色を重ね合わせて。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないんだよと。いいシーンですね。ビールだから麦畑もぴったりですし!

柳下さん:
あと、どこから読んでもいい本という意味でもオススメしたいですね。酔っ払って読むと気持ちいい本です。

ぎん:
酔っ払って読むと気持ちいい本っていいですね。難しすぎると眠くなっちゃいそうなので、ちょっと心配していたんです。

柳下さん:
個人的に、酔っ払って読むときは、翻訳された文章が合うなと思っているんです。星の王子さまはパブリックドメインになっているので、いろんな訳バージョンが出版されています。ぼくのオススメは、岩波書店が出しているオリジナル版ですが、お気に入りの訳を探し出すのも楽しいかもしれません。

ぎん:
翻訳文学の訳ちがいで楽しむ! なんて上級者な楽しみかたなんだ……!

ビールが刻む大人の読書タイム

ぎん:
ビールにあう本ってたくさんあるんですね……さっそく今晩楽しんでみます。

柳下さん:
ちょっとほろ酔いでする読書、とっても気持ちいいですよ。本と一対一で集中するんじゃなくて、そばにビールがあるっていうのがいいんです。自分の外にひとつリズムが生まれるので。

ぎん:
リズムですか。

柳下さん:
ひとつのことに集中しようと思っても、できないときもありますよね。そんなときに、そばで何かにリズムを刻んでもらうんですよ。ビールだったら、口に運ぶことでリズムが生まれますよね。一本をグラスに入れて、飲みきるまで本を読む、とか。

ぎん:
なるほど。時間に区切りをつくることで集中するんですね。

柳下さん:
音楽をかけるのもいいかもしれない。スマホに入ってる1,000曲を流し続けるんじゃなくて、レコードやアルバムで聞いたらおわりがあるじゃないですか。それでリズムに気付くんです。

柳下さん:
リズムが刻まれている間は、オフラインでいられるというのもいいですね。スマホも切って、ゆっくり自分だけの時間を過ごす。その時間にビールと本があるっていいですよね。

ぎん:
それは贅沢だなぁ。もっとおいしくビールが飲めそうです。今日は本当にありがとうございました!

柳下さん:
ほろ酔い読書、ぜひやってみてください!

「#本にあうビール」であなたの一冊教えてね

あなたのオススメの「 クラフトビールにあう一冊」を教えてください。

#本にあうビール

のハッシュタグをつけてSNSで発信してくれたら、よなよな文化部がくまなくチェックします。実際にペアリングしてみたら最高だったので、みなさんの感想も聞いてみたいです。
「こんな人にも選書してほしい!」 のリクエストもお待ちしております。
「ビール好きだし選書できるよ!」という方も募集中。取材に行きます(笑)

編集後記

私の好みと勢いだけではじまった「#本にあうビール」。第1回、いかがでしたか?
この企画の取材を通して、本の良さを改めて感じました。ほろ酔い読書なんて!大人の楽しみですね。
とっても楽しかった選書タイム。記事中には紹介しきれないほど、たくさんの本の名前があがったんです。もったいないので、おすそ分けです。

・エトガル・ケレット著 突然ノックの音が
・水村美苗著 日本語が滅びるとき
・深澤直人著 デザインの輪郭
・寄藤文平著 デザインの仕事
・若林恵著 さよなら未来
・ロラン・バルト著 明るい部屋
・長谷清純著 不夜城 
・夏目漱石著 吾輩は猫である
・クロード・レヴィ=ストロース著 野生の思考
・中沢新一著 カイエ・ソバージュ
・メイ・サートン著 ミセス・スティーヴンズは人魚の歌を聞く
・松田行正著 デザインってなんだろ?

ちなみに、私は全て買いました(笑) 良書ばかり。
では、よい夜を!

取材協力:かもめブックス

かもめブックス

住所:東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1階
Tel :03-5228-5490
営業時間:月曜日~日曜日 11:00 ~ 21:00
定休日:水曜日(祝日の場合は営業)
アクセス:地下鉄東西線「神楽坂駅」矢来口より徒歩0.5分

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この記事を書いた人
ぎん

「よなよな文化部」部長、兼、会報誌「月刊月の生活」編集長。 実は理系出身。iPS細胞研究者の端くれだったという噂だが、気付けばヤッホーブルーイングに。

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