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御代田に醸造所(ブルワリー)ができるまで

御代田に醸造所(ブルワリー)ができるまで

ヤッホーブルーイングは、2020年9月に御代田醸造所を設立しました!

研究開発拠点として、小規模醸造に適するように設計した今回の御代田醸造所。一口に「ブルワリー設立」といっても、その実、なにをしているかをご存知の方はそういないのではないしょうか?

というわけで今回は御代田醸造所ができるまでの様子をお届けします!

実際にブルワリーを立ち上げる際は、こういう順序で行っているんですよ。
ぜひ参考にしてみてくださいね。

まずは土地と建物を決めるところから

一番の肝!まずは「醸造設備を建てる場所」を決めました。
私たちが特に気にしたポイントは3つです。

①税務署に近い

今後、ブルワリー設立までにはたくさんの書類を提出しますので、所轄の税務署が近くにあるととても運用しやすくなります。保健所や、消防署などの位置関係もチェックしました!

②駅に近い

醸造所と併設のパブ開設を検討している場合は、お客様の交通の便を調べることも重要ですね!ビールはアルコールですから、来訪されるお客様が公共交通機関を不便なく使える、というのはとても大きなメリットです。私たちもいずれはブルーパブを併設できればと考えているので、御代田駅まで徒歩5分の場所を選びました。

③水質

大変細かいですが、お水は重要です。ヤッホーブルーイングは市水で仕込んでいますが、近くに火山がある土地柄のため、市水中に含まれるミネラルに偏りがあります。ミネラルは、酵母の生育や、香味にも影響しますので、ビールのほとんどを占めるお水のことは土地を決める前に調査してもいいかもしれません。

建物は新しく建ててもいいのですが、醸造設備にもたくさんお金がかかります。居抜き・内部を改装できるものを探すと、初期コストが抑えられるので、私たちは「食堂」だった建物を改装することにしました。

食堂だった建物を大改装

まずは全部剥がします

改装にはかなり力を入れました。見違えるほどきれいになりました!
まずは元あったものをすべて捨てて、クリーニングしてもらいました。壁も全部取りました(耐震性などは確認済です)。

その後、水やタンクの洗浄薬液がかかってもいいように、壁にステンレスの板を取り付けました。
ステンレスはちょっとお高いですが、安心感が素晴らしい!

原材料や樽の搬入出がしやすいように、壁を切り抜いてシャッターも付けましたよ。

床は基礎から全部補修した上、耐熱・耐アルカリ塗装をしてもらいました!

写真だと伝わりづらいですが、水がすぐきれるように傾斜も付けました。
傾斜がないとタンク下に水が残って汚れの原因になってしまうので、地味に大切なのです。

また、排水溝もすべてステンレス。
普通の塗装だと経年劣化で塗装が剥げ、錆びて劣化してしまうんです……。

無いとビールが造れない!とても重要、醸造設備

御代田醸造所誕生と私たちが描く未来

ここまで内装が終わったあと、醸造設備を運び入れました!

我々は佐久醸造所にあった【Premier stainless systems(通称:PREMIER)】という醸造設備をそのまま持ってきました。PREMIERは、マッシュロイターとケトルワールプールのコンビユニットのため、2つの窯で仕込工程が完結する装置です。

また、発酵・貯酒兼用のタンクは6基用意しました。
発酵タンクが不足していたので、追加で2基購入することに。いつもお世話になっているHOPのサプライヤーさんが海外ブルワリーの設備事情にも詳しく、その方にSpecific Mechanical Systems社のイイタンクを用意してもらいました。ピカピカのタンクがきてとても嬉しかったです。笑

佐久醸造所からクレーンで設備を出し、トラックに載せ、運び入れました。

※私たちは基本的に佐久醸造所にあった設備を持ってきましたが、設備が足りない場合は、内装工事と並行して設備購入の手配もお忘れなく。海外から設備を輸入すると、納入まで数ヶ月かかりますので、計画的に手配しましょう。

実際に仕込む人の立場で「配置」を検討

設備が揃った後は、「どこにケトルを置いて、どこにタンクを置いて、動線はこうで、ビールラインはこう…」とプロジェクトメンバーでずっと議論。ひたすら議論。長年の経験から導き出される最適解(そして自分の好み)について、おそらく1ヶ月くらい話し合いました。最終的にみんな納得の配置にできて満足です!

設備の配置図ができたら、蒸気・水・ガス類・排水が通るラインを考えました。ビールの醸造には、炭酸ガス・蒸気などをたくさん使用します。使い方を誤ると危険なので、作業者が安全に作業できる視点も大切にしましょう。例えば、ビールを仕込んだあとにモルト粕を出す工程がありますが、ここがいかに楽になるかどうかが、将来の腰に響くんですよ……!

地味ですが、長く続けていくためには小さなことも重要です。

ちなみに、一番上の階に仕込タンク、その下の階に発酵タンクを置く構造にすると、位置エネルギーで液体の移送を補助できるため、ポンプの台数や圧力をかけるための炭酸ガスなどが少なくて済むという利点がありますよ。敷地面積が狭くても!ビールはつくれる!

後編は「免許取得方法」をご紹介します

配置図通りに設備が入った状態がこちら!
ここまでくればもうほぼブルワリーの形になってますね!

形が整ったら、実際に製造するための免許取得に動き出しましょう。これは後編で詳しく解説しますので、次回更新をお楽しみに。それではまた!

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