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【バレルフカミダス】『インペリアルスタウト』前編:ブルワーのこだわり

【バレルフカミダス】『インペリアルスタウト』前編:ブルワーのこだわり

毎年、濃いビールが飲みたくなる「秋冬」限定で販売している「バレルフカミダス」。
ウイスキーの香りがたっぷり染み込んだバレル(木樽)にビールを詰め、数ヶ月~1年以上じっくり熟成させたのち、バランスを見極めながらブレンドすることで完成する製品です。

今年はそんな「バレルフカミダス」に新製品が登場!
その名も「バレルフカミダス インペリアルスタウト」。どっしり濃厚な味わいから「スタウトの王様」とも呼ばれているビールを、バレルに詰めて熟成させた製品です。

今回は「バレルフカミダス インペリアルスタウト」の開発を担当したブルワー「がみた」が、このビールに詰め込んだ「こだわり」や「開発秘話」をお届けします!

可能性の塊・バレルエイジドビール

こんばんは、がみたです。
「バレルフカミダス インペリアルスタウト」、ついに皆さんに飲んでいただけるんですね……!2年間の苦労が実を結ぶのかと思うと、なんだか感慨深いです。

「バレルフカミダス」は、ビールをバレル(木樽)で熟成させる「バレルエイジ」という手法で造るビール。海外ではメジャーなスタイルですが、国内ではまだまだ認知度が低く、醸造しているブルワリーもとっても限られています。

でも、このバレルエイジってすごく面白いんですよ!バーボン樽、シェリー樽、ワイン樽……原酒と熟成期間が同じだったとしても、詰めるバレルによって、まったく違う味わいが生まれるんです。さらに、完成したビールのブレンド具合によっても、香味が大きく変わってきます。

僕たちは、バレルエイジドビールはたくさんの可能性を秘めているビアスタイルだと思っています。だから、バーレイワインだけじゃなくて、もっといろんな原酒で「バレルフカミダス」を造ってみたかったんですよね。

新たなる挑戦を求めて

バレルフカミダスのバレルは、現在はすべて富士御殿場蒸溜所さんにお譲りいただいているジャパニーズウイスキーバレル。元をたどればバーボンバレルなので、バニラやチョコレートのような甘くて香ばしいアロマが強いんです。だから、バーレイワインだけじゃなくて、インペリアルスタウトを詰めて熟成させてみても面白いんじゃないかな、と思っていて。

インペリアルスタウトは、きわめて濃厚なボディと高いアルコール度数が特徴の黒ビールです。バニラ香との相性がとても良く、さらに「スタウトの王様」と呼ばれるぐらいに個性が強いので、バレルの強い香りとも共存できるんじゃないかな、と考えていたんですよね。

で、ブルワーの「もーりー」に相談したら、「いいんじゃない?」ってすんなりGOサインを出してくれて(笑)。じゃあ造ってみようかと。昔もーりーが書いたインペリアルスタウトのレシピを基に、なおGと僕とでレシピを改良して、仕込み始めたのがだいたい2年前ぐらいの話です。

そう、原酒のインペリアルスタウトを造ること自体、そのときが初めてだったんですよ!今思えばすごく実験的というか、僕たちの遊びごころを詰め込んだビールですよね。僕ももーりーもなおGも、みんなワクワクしてました。

まずは大事な「バレル選び」から

「バレルフカミダス インペリアルスタウト」を造るにあたって、僕がずっとイメージしていたのは「洋酒をたっぷり使った、カカオ純度の高いチョコレートケーキ」。バレル由来のウッディな香りや、バニラ香、香ばしいチョコレートを思わせるアロマが複雑に絡み合っているような……そんなビールを造りたかったんです。

理想のビールを造るために、バレル選びにもこだわりました。富士御殿場蒸溜所さんに譲ってもらったバレルの栓を開けて、ウイスキーの残り香をひとつひとつ慎重に嗅いでいって、インペリアルスタウトとの相性が良さそうなバレルを選んだんです。……すごく地道な作業なんですけどね、これも楽しかったんですよ!(笑)

そのときは、インペリアルスタウトの特徴を引き出してくれそうな「バニラ香」「チョコレート香」が強く残っているバレルを2つ選びました。

9種類の麦が支える「深み」

原酒(インペリアルスタウト)のイメージは、バレルエイジ後の「洋酒をたっぷり使った、カカオ純度の高いチョコレートケーキ」からどんどん落とし込んでいきました。

より一層複雑な味わいを生み出したかったので、今回は7種類のモルト、オーツ麦、ローストバーレイを使用しています。ヤッホーブルーイングでは一番多く麦類を使ったビールなんじゃないかな?さまざまな麦のキャラクターを集めることで、インペリアルスタウト自体の深みも支えたかったんです。

深いチョコレート香を出すために「Chocolate malt」を、しっかりとしたボディにするために「Munich」「Cara Munich」を多く入れました。とろっとした飲み口は「オーツ麦」によるものですね。やわらかな口当たりにしたかったので、たっぷり入れています。

モルトのキャラクターが強いので、ホップの主張は抑えめにしました。トラディショナルな「Gracier」「Tettnanger」などの品種を使用し、綺麗で上品、穏やかな香りが出るように心がけています。

初めての挑戦、だからこその苦難。

インペリアルスタウトが完成したら、後はバレルに詰めて、バレルのキャラクターがビールに馴染むのをじっくり待つだけ。ねらっていた味の原酒が出来たので、「きっとおいしいビールができる!」とワクワクしながら見守っていたんですが……。

3ヶ月経っても、バレルの香りが全然ビールに馴染まない!

バーレイワインが原酒のときは、大体3ヶ月あればいい具合にフレーバーが融合してくれるもの。でもインペリアルスタウトだと、ビール自体のキャラクターが濃くて強いためか、バレルの香りやキャラクターがまったく馴染まなかったんです。

僕たちにとって、今回の「バレルエイジドインペリアルスタウト」は何もかもが初の試み。どのくらいの期間でいいタイミングが来るのか、どういうスピードで熟成していくものなのか、ちっとも予想できなくて……。バレルがビールと馴染むまで、バレルのコンディションを気にしながら、そして何度も何度もテイスティングを重ねながら、ただひたすらに、おいしいビールができるのを待ちました。



撮影協力:丸山珈琲 ハルニレテラス店